弦楽雑誌 “The Strad” のウェブサイトが、200万円台のヴァイオリンの購入術に関する記事を掲載したことがある。
3つの著名なオークションハウス(Ingles & Hayday, J&A Beare, Brompton’s )のディレクターが、音楽院で学ぶ学生の質問に答えたもので、1万2千ポンド(170万円)~1万5千ポンド(210万円)の価格帯の楽器をオークションハウスで購入する際の注意点や心構えが示されている。
中にはヴァイオリン購入の初心者には実践に移すことが難しいアドバイスも含まれているが、この価格帯で購入できるメーカーの具体名も挙げられており、一般のショップで楽器を探す場合にも参考にすることができそうだ。
記事の中で気になった Tips を以下にまとめた。
販売員ではなく専門家の意見を聞く
この価格帯のヴァイオリンは製作者・場所・年代が明確でない場合がしばしばである。誰が購入したのか等の来歴も含めて、専門家の意見を聞くべきだ。
コンディションについてセカンドオピニオンを求める
コンディションはメリットになることがある。なぜなら3万ポンドの価値のあるイタリア製の上質な楽器が、何らかの問題があってその半分の値段で購入できる場合があるからだ。その場合でも、修理が容易で上手くなされていれば、購入には何の問題もない。
だから、著名な工房に持ち込み、楽器のコンディションを尋ねてみたい。古くなればなるほど、楽器は何らかのダメージを負っているものだ。ダメージが楽器の価値にどのような影響を与え、値付けにおいて考慮されているのかどうかについて話を聞くべきだ。(但し、セカンドオピニオンを聞く目的で楽器を貸すことをオークションハウスが快く思わない点は留意しておきたい)
試し弾きは複数の場所で行う
この価格帯のヴァイオリンをオークションハウスの試奏室で簡単に試し弾きする程度で選んではいけない。できれば数日間借りて、自宅やホールで試奏すべきだ。(但し、オークションハウスは他の客からの引合いもあるので、長くは貸してくれない)
楽器の質とコンディションを見るために以下のポイントをチェックする
- ネック(湾曲と長さ。新たなネックを付けているとそれは価格に反映する)
- クラック(割れ)と修理痕(外側のクラックだけでなく、内部の修理パッチの状態。修理がうまくなされているかどうか)
- サイズ(異常に長くあるいは短くないか。ハイポジションが取り辛くないか)
- ストップの長さ(ネックに接した胴体上部から駒の中心までの距離)は正常値か
- ペグ(調節は容易か)
- ニス(ニスの質。修理で磨かれた後の重ね塗りの状況とケア)
- セットアップ(駒の傾き。指板の溝の状態と長さ)
- 費用(良好な形に楽器をするための)
この価格帯で購入できるメーカーの例
- フランス製: Pierre Hel, Jacques-Pierre Thibout, Paul Bailly, 等
- イギリス製: Bernhard Simon Fendt, Richard Tobin, W.E. Hill, 等
他に、20世紀半ばのイタリア製があるが、数はずっと少なくなる。
(※注)上記はあくまでもイギリス国内のオークションハウスで購入可能なメーカーの例。
ヴァイオリン購入のための参考書籍
銘柄や鑑定書の知識、価格の決まり方、相場なども、具体的かつ詳細に記した、ヴァイオリン選びのバイブルとも言える名著。
神田侑晃著『ヴァイオリンの見方・選び方 基礎編・応用編』
改訂 ヴァイオリンの見方・選び方 基礎編 -間違った買い方をしないために-
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