テンポの崩れを表現のためのルバートと思い込んでいないか
入試まで2ヶ月を切りました。
この時期にチェックすべきことの第一は、正確なテンポで弾けているかどうかです。エチュードでは言わずもがな、ロマン派のコンチェルトであっても同様です。
細かな音型が弾けないからテンポが落ちる、あるいはロングトーンを正確に弾く技術がないから4分音符が付点8分音符になってしまっているケースが多いのですが、これがいつの間にか本人の頭の中では「表現のためのテンポ・ルバート」にすりかわっていることが多々あります。
本人も保護者もそれが音楽的だと固く信じていても、延々自分勝手なルバートのオンパレードを聞かされる試験官からすれば、「数も数えられないのか」としか思えません。
自分の中にメトロノームを持っていれば回避できることなのですから、普段いかに勝手気ままな練習をしてきたかが想像出来ようというものです。
メトロノームを使ってチェック
これを防ぐには、まずメトロノームの音を出して練習する、次にメトロノームの音を消して弾いてみる、それから自分の中のテンポにあわせて弾いてみる、また可能なら4分音符は8分音符、8分音符は16分音符、16分音符は32分音符に分割して数えてみる等、厳しくチェックしてみることです。
メトロノームをかけていても果たして自分の演奏がはまっているかいないか、それすらも分からないでいるケースもありますから注意が必要です。傍らからあれこれ言われるのを嫌がるようなら、録音して自身で聴いてみるようにさせると良いでしょう。
曲の仕上げにかかると、一旦作り上げたものを壊すのが嫌さに、テンポチェックをしないまま全曲通して弾いてしまうことが多いのですが、これではフレーズ毎の繋がりが弛緩してしまい、確固たる構成を持たない軟体動物のようなぐずぐずの演奏になってしまいます。
あちこち歌い上げても入試では無駄
「上手い」と思わせる演奏は、「あっという間に終わってしまう」演奏です。
この緊迫感を生み出すためには、例えば4・4・8小節間をインテンポで弾く、テンポを落とした分は固まりの中で埋め合わせる引き算の感覚が必須となります。
正しいテンポでの地道な練習なくして、「聴かせよう」とばかりにやたらにあちこち歌い上げてみても無駄なことです。これを教授陣は「風呂場の一人カラオケ」と呼んでいます。知らぬは本人ばかりなり、です。
これは入試ばかりではなく、専門家が審査員となるコンクールに臨む場合も同様と言えるでしょう。
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