「習い始めて2年経ちますが、ヴィブラートがうまくかかりません。何かコツのようなものはあるのでしょうか?」
との質問に答えて。
「こんな感じでかける」ではうまく行かない
実際に本人を見た上でのことではありませんので、あくまでも一般論としてお読みください。
ヴィブラートは大雑把に言って、「腕でかける」「手首でかける」「指でかける」の3つのタイプがあります。ご子息の先生がどのヴィブラートを指導されているかによって、練習の方法は違ってきます。
ひと頃は「手首でかける」指導が主流でしたが、現在は「指」を主体とする方向に変わっています。これは上昇・下降をはじめとする音楽の局面によって、ヴィブラートの使い分けが容易であることや、正しい方法で指の関節を鍛えておけば、後々故障が少ないからです。
ただ、これも生徒の状態によりますので一概には言えないかもしれません。
実際にヴィブラートをかけてみる前に、何週間か、中指を軸にしてゆっくり前後に動かす運動をさせます。メトロノームに合わせて、最初はゆっくり、1拍にひとつ、慣れてきたら1拍に2つ入れる、4つ入れるというように運動の回数を増やしていきます。
この前段階を経ずに、いきなり「こんな感じ」でかけさせようと思っても、指先と手首に余計な力が入ってしまい、うまく行きません。
また肝心なことは、傍についている大人が焦らないことで、「誰でも始めはかからなかった」と思って丁度良いのです。
5歳から始めて、ようやくヴィブラートがかかるようになったのが小学校2年生の頃という子でも、「全日本学生音楽コンクール」の小学校の部で本選に進出したこともあります。
小学校中学年までは、そうでなくても個体差が大きい時期です。音大志望なら、まずはセブシック・シュラディックなどで指を鍛えながら、「時が解決する」のを待つ構えでいるのが良いでしょう。
【参考書籍】『ヴィブラート教本:ヴァイオリンのための』
ヴァイオリン学習者がとりくむべき最大の課題のひとつにフォーカスした、従来ありそうでなかった画期的な技術書。
ひじ・手首・指先のヴィブラートの基本動作とコツ、それを習得するためのエクササイズ。「広い・狭い」「速い・遅い」ヴィブラートを有機的に組み合わせる方法、さらにはレガートでヴィブラートを止めないための練習法等、学習者がよく突き当たる課題への解決策も示されている。
第1章から通して取り組む他にも、学習者それぞれのレベルや課題に応じて適切なエクササイズを選び、毎日の練習メニューに組み入れていく方法も有効だろう。