まず1時間ヴァイオリンを構えて立っていられるようにする
5、6歳の子供がひとつのことに集中できる時間は10分から長くて20分ですが、レッスン時間は1時間という場合もあります。
時間中はともかく立っていなければレッスンになりません。45分間、1時間、ヴァイオリンを構えて立っていられること、これがまず第一の目標となります。
レッスンは親に対する指導と心得る
次に、学習項目を少しずつ増やながら、気分を切り替えつつ、レッスンを時間一杯までつないでいくことになりますが、この年代の子供はヴァイオリンを構えて立っているだけでも精一杯ですから、レッスン中の先生の話など殆ど右から左と言っていいでしょう。
ですから未就学児に対するレッスンというのは、「家でこのように練習させてください」という保護者に対しての指導だと理解された方がいいでしょう。
忘れても忘れても礼儀作法のように毎日やらせる
レッスンで先生から何度も同じことを注意されると、まるで親自身が叱られているかのような気分になり、帰ってから子供を厳しく叱る方もいらっしゃるようです.
子供は気分がよければ練習なしでも先生の前で上手く弾けることもある一方で、家では出来ていても先生の前ではあがってしまって上手く弾けないということもあります。この年代はちょっとしたことで調子が狂うものです。
「何回言ってもすぐ忘れる」と保護者の方はよく言われますが、不自然な姿勢で立って弾く楽器、しかも普段全く必要の無い動きを要求されるわけですから、忘れて当然と言えるでしょう。
それを礼儀作法を身に付けさせるように毎日毎日やらせることで、段々と左手の形が出来、弓が動くようになっていきます。
千回も同じことを言われ続ければ、そのうちに身体も育ち、やがて動きの回路が出来てくる。そう信じて粘り強く練習に付き合っていく必要があります。
長時間弾かせない、課題は絞る
スケール、エチュード、曲ともに、疲れて集中力を失っているのに、無理に長時間弾かせるのは禁物です。
また、スケールなりエチュードなりに与えられた課題を曲に持ち越さないようにすることに留意する必要があります。
左手の指の向きなどを曲を弾く時に注意し始めると、子供は何も弾けなくなってしまいます。曲にはスケールやエチュードとは別の学習課題が与えられているのですから、曲を弾くときはまずフレーズならフレーズを第一にさらうことを目標にしましょう。
練習の順番を変えてみる
スケール→エチュード→曲といつも同じ順番で練習させるのではなく、曲から始めて上手くいかない部分を取り出してスケールの練習させたり、曲の部分練習をエチュードと比較しながらやってみたりと、練習の順番を入れ替えるだけでも子供は目先が変わって緊張し、集中します。
先生が適切な教材の選び方をしていれば必ず曲とエチュードには関連性があります。部分練習で曲とエチュードを往復すれば、エチュードも真剣にやり、曲も上手くなり、効率的となるでしょう。
時々はほめてあげる
子供が楽しいのは制約なく遊んでいるとき、食事のときなど、ごく素朴な欲求が満たされたときです。勉強やヴァイオリンはこれとは違って、「ものになるまで」長期間の訓練、地道な努力が要求されます。
それでも、ヴァイオリンを弾いていて、親が喜んでくれるかどうかは子供にとって重要なこととです。子供は親が嬉しければ嬉しいのです。
練習は厳しいけれど、親が傍についていて時々ほめてくれると、子供にとっての喜びとなります。
鈴木メソッドの普及に伴いヴァイオリン学習者の裾野も広がりました。桐朋学園の「音教」の子供でも幼稚園から小野アンナ、セブシック2冊、「新しいヴァイオリン教本」(俗称白表紙)で積み上げていく先生もいれば、そこまでは、とやさしい先生もいて千差万別の世の中になりました。
親が追い込まれてしまい苦しくなって継続が難しくなった場合は、一歩引いて柔軟に対応したほうがかえって続くこともあります。