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コンクール予選の客席で-課題曲は「露出」 24のカプリース

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演奏・拍手

「音程が・・・」

「やっぱり出ちゃうわね。すべてがさらけ出される。」

演奏・拍手

「出だしからはまっていないと。途中修正は難しい。」

「無伴奏曲は演奏者の実力を包み隠さず露出する。まさに露出(ローデ)ね。」

演奏・拍手

「うちの子は出場しなくて正解だったわ。予選通過なんて絶対無理。」

「課題曲の手強さに凹んだ人、多かったはず。だから参加者数低迷なのかしら。」

「親子で出たいと懇願しても、断固阻止する先生が多かったとか。」

演奏・拍手

「しかし無伴奏曲を弾くって、なんかこう、一糸まとわぬ姿で綱渡りさせられているかのような感じね。」

「すごい比喩。でも、わかる。」

演奏・拍手

「音程は良い。一応、表情つけて弾いている。」

「音色は良くない。難所の発音がぼやけている。」

演奏・拍手

「音程はあまり良くない。少しミスがあった。」

「大きい音がしっかり出てる。ヴィブラートが上手い。」

演奏・拍手

「ノーミス。きちんと弾いた。強弱も緩急もつけている。」

「音量と元気がない。響きがやや荒い。」

「ところで今弾いた3人のうち誰が予選通過すると思う?」

「うーん。」

演奏中

かくっ。(下を向く音)

ぐっ。(目を閉じる音)

拍手

-休憩-

「G高の1次課題の定番だからね。難しいわ。」

「小学生にどこまで求めているのやら」

「それでも難なく弾いて、確実に本選進出ラインと思われる子が数人」

「あと◯が10人、△が20人くらいかな。」

「とすると、その何とか弾けてるグループで、残り予選通過枠約10人分を倍率3倍で競うわけね。」

「半分くらいには絞れそうだけど、3人に1人となるとね・・・」

「難しいなあ。どっちに転ぶかわからない。」

「まさにそう。ボーダーラインのところって、鉛筆倒して決めたほうが正しい結果が得られるかもしれないくらい微妙よね。」

-休憩終わり-

演奏・拍手

「うまい。大人の音。」

「細部で音程の問題あるけど、それは気にならない。発音が隅々までクリアー。“自分の手の中に入ってます”感が出た、安定した演奏。」

演奏・拍手

「これもいい。」

「いいのはどこかで見たことある人が多いかな。」

演奏・拍手

「これはどうかな。△かな。」

「私は◯よ。」

演奏・拍手

「◯ね。」

「どうかしら。上手く “見えた” のは確かだけど。」

「このあたりの順番になると、前半部の演奏水準の記憶が薄れてくる。」

「審査員だって人間だからね。「前半は甘かったかもしれないなあ」なんてことはあるでしょう。」

演奏中

「ん?」

「止まった・・・」

拍手

「うまいのになあ。惜しいなあ。」

「どう評価されるか。」

「ある著名ヴァイオリニストの例。パガニーニ国際の2次予選でイザイの無伴奏で一瞬止まっちゃったらしい。観客席からはため息。ご本人も完全に諦めていたら、何と・・・。」

「諦めずに弾き切ることよね。後悔はその一箇所のみに留める。たとえ駄目でも得るものがきっとあるはず。」


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