またもやメンコン1楽章
10月2日、令和3(2021)年度の東京藝術大学(以下、藝大)音楽学部 入学者選抜試験の試験内容及び課題曲が発表された。(声楽科は9月4日に発表済み)
発表によれば、器楽科ヴァイオリン専攻の実技課題曲は、第1回(1次)がカール・フレッシュ:スケール・システム ホ短調とパガニーニ:24のカプリース 第18番、第2回(2次)はバッハ:無伴奏ソナタ 第1番 第3楽章(シチリアーノ)とメンデルスゾーン:協奏曲 ホ短調 第1楽章。
第1回は、2015〜2020年度に続き、音階+パガニーニの組み合わせ。2014年度に音階+イザイ:無伴奏ソナタという “サプライズ”があったが、それ以降は完全に藝大の定番路線へと回帰した。
また第2回も、メンデルスゾーン:協奏曲 ホ短調 第1楽章と、藝大の選考ポリシーをストレートに反映する形となった。
メンコンは2018年・19年と連続で出題されるなど、過去13年間で6度も課題曲に選ばれている。
(※)2008年・2009年・2013年・2015年・2018年・2019年
器楽科 弦楽器 ヴァイオリン専攻
【第1回】
(A)音階
カール・フレッシュ:スケール・システム (Carl Flesch:Scale System) より ホ短調( e-moll)で、次のイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘの各種を下記を参照し、譜例の通り演奏すること。
(イ)音階,分散和音,分散 3 度,半音階
(ロ)3 度の重音
(ハ)6 度の重音
(ニ)8 度の重音
(ホ)フィンガード・オクターヴ
(ヘ)10 度の重音
※すべてレガートとし、スラーは譜例に従うこと。 フィンガリングは自由とする。
(B) Paganini:24 Caprices Op.1 より
第18番 ハ長調
※繰り返しはなし。、Da Capo はあり。
(注)演奏は(A)(B)の順とする。
すべて暗譜とし、使用する楽譜の版は特に指定しない。
時間の都合により一部を省略させることがある。
【第2回】
(A)J. S. Bach:無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番 ト短調 BWV1001 より 第3楽章 Siciliano
(B)F.Mendelssohn :ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64より
第1楽章 Allegro molto appasionato
(注) 演奏は(A)(B)の順とする。
すべて暗譜とし、使用する楽譜の版は特に指定しない。
(B)は伴奏付きで演奏する。
(伴奏者は本学で用意する。伴奏者の同伴は認めない。伴奏合わせは試験直前に行う)
時間の都合で一部省略させることがある。
「2021年度 東京藝術大学音楽学部・別科入学者選抜試験 試験内容及び課題曲」(PDFファイル)(東京藝大入試情報サイト)
コロナ禍の影響で志願者数はどうなるか?
2021年度の器楽科全体の募集人員は、例年通り98名。
この98名のうちの若干名が、2020年11月に試験を行う音楽学部SSP(Special Soloist Program)「飛び入学」による募集となる。
尚、募集5年目となった2020年度(2019年11月実施)の「飛び入学」は、受験者が3名、合格者が1名だった。
制度が始まった2016年以降の合格者は2名のみに留まる狭き門となっている。
【飛び入学】
2019年度:志願者なし
2018年度:2名受験、合格者なし
2017年度:2名受験、合格者1名
2016年度:4名受験、合格者なし
器楽科の2020年度入試は、志願者455名のうち450名が受験し、101名が最終合格、実質競争率は4.46倍だった。※東京藝大入試情報サイトによる最終集計数(2020/4/1時点)で、「ヴァイオリニア」が記事で随時フォローした試験期間前後に都度公表された数とは異なっている。
【器楽科】
2019年度:志願者423名、最終合格99名、競争率4.27倍
2018年度:志願者438名、最終合格106名、競争率4.13倍
2017年度:志願者447名、最終合格102名、競争率4.38倍
2016年度:志願者412名、最終合格102名、競争率4.04倍
2015年度:志願者429名、最終合格 99名、競争率4.33倍
また2020年度の器楽科ヴァイオリン専攻は、志願者51名、1次合格30名、2次合格23名、最終合格は20名だった。※試験期間中に公表されたデータによる。
【ヴァイオリン専攻】
2019年度:志願者49名、1次合格32名、2次合格26名、最終合格22名
2018年度:志願者60名、1次合格33名、2次合格25名、最終合格23名
2017年度:志願者56名、1次合格36名、2次合格28名、最終合格20名
2016年度:志願者44名、1次合格30名、2次合格26名、最終合格23名
2015年度:志願者46名、1次合格27名、2次合格22名、最終合格18名
2020年度入試は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月5日と7日に行われる予定だった音楽に関する基礎能力検査(聴音書き取り・楽典・新曲視唱・リズム課題)と副科ピアノなどの試験が中止となる異例の事態に見舞われた。
2021年度入試は一体、どうなるのか?
コロナ禍が志願者数にどのような影響を及ぼすのかが注目される。
尚、2020年7月31日に発表された入学者選抜要項によれば、2021年度入試の弦楽器 専攻実技第1回は、2021年2月25日~27日、第2回は3月4日・5日。音楽に関する基礎能力検査(聴音書き取りと楽典の筆記試験、新曲視唱とリズム課題の実技試験)と副科ピアノの実技試験は3月8日に実施される予定。
※今後の新型コロナウイルス感染症の感染状況によっては、選抜要項に記載されている出願期間や試験日等について、変更する場合がある。
2021年度入試の専攻楽器別のより詳細な日時等は、2020年12月上旬に公表される「学生募集要項」(ウェブ掲載のみ)に記載される「入学試験実施日程表」で明らかとなる。
「2021年度(令和3年度)入学者選抜要項」(PDFファイル)(東京藝大入試情報サイト)
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【藝大入試】
過去13年間の第1回と第2回のヴァイオリン専攻の課題曲の変遷
- 平成20年(2008年)実施
・第1回 音階+パガニーニ:カプリース24番
・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ1番ブーレ+メンデルスゾーン:協奏曲ホ短調1楽章 - 平成21年(2009年)実施
・第1回 音階+バッハ:無伴奏ソナタ3番ラルゴ・アレグロアッサイ
・第2回 メンデルスゾーン:協奏曲ホ短調1楽章 - 平成22年(2010年)実施
・第1回 音階+バッハ:無伴奏パルティータ3番プレリュード+パガニーニ:カプリース20番
・第2回 チャイコフスキー:協奏曲1楽章(カデンツァの終わりまで) - 平成23年(2011年)実施
・第1回 音階+バッハ:無伴奏ソナタ1番フーガ
・第2回 パガニーニ:協奏曲1番1楽章(カデンツァなし) - 平成24年(2012年)実施
・第1回 音階+パガニーニ:カプリース9番
・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ3番ルール+プロコフィエフ:協奏曲1番1楽章 - 平成25年(2013年)実施
・第1回 音階+パガニーニ:18番
・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ3番ガヴォット+メンデルスゾーン:協奏曲ホ短調1楽章 - 平成26年(2014年)実施
・第1回 音階+イザイ:無伴奏ソナタ4番1楽章
・第2回 バッハ:無伴奏ソナタ1番シチリアーノ+ヴュータン:協奏曲5番1楽章(カデンツァの前まで) - 平成27年(2015年)実施
・第1回 音階+パガニーニ:23番
・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ1番ブーレ+メンデルスゾーン:協奏曲ホ短調1楽章 - 平成28年(2016年)実施
・第1回 音階+パガニーニ:4番
・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ1番サラバンド+チャイコフスキー:協奏曲1楽章 - 平成29年(2017年)実施
・第1回 音階+パガニーニ:24番
・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ2番アルマンド+シベリウス:協奏曲1楽章 - 平成30年(2018年)実施
・第1回 音階+パガニーニ:11番
・第2回 バッハ:無伴奏ソナタ2番グレイヴ+メンデルスゾーン:協奏曲ホ短調1楽章 - 平成31年(2019年)実施
・第1回 音階+パガニーニ:9番
・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ3番ルール+メンデルスゾーン:協奏曲ホ短調1楽章 - 令和2年(2020年)実施
・第1回 音階+パガニーニ:22番
・第2回 バッハ:無伴奏ソナタ3番ラルゴ+ドヴォルザーク:協奏曲1楽章
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