専攻実技は概ね3つの観点から評価される
東京藝大の入試情報サイトに、昨年度(2019)の専攻実技試験の「出題意図」が公表されている。
以下、器楽科の弦楽器・ピアノ・管打楽器の各専攻別に、その内容を要約する。
弦楽器専攻(第1回・第2回)
- 作曲家の作品を演奏するにあたり、その内容や様式を理解しているかどうか
- 的確に表現するための十分な技術を備えているかどうか
- 演奏者のインスピレーションの発露、創造性があるかどうか
その能力を確認する。
ピアノ専攻(第1回・第2回)
- 各時代や地域、あるいは作曲家個人それぞれの様式および美学を理解しているか
- その理解を演奏を通じて的確に表現するための身体的な技術と感情のコントロールを備えているかどうか
- 東京藝大で学ぶにふさわしい創造性を持っているかどうか
これらについて、その習熟度と将来性について判定する。
管楽器専攻(第1回・第2回)
- 第1次試験では、スケールを中心とした物や、教則本からの抜粋の物は、音楽を表現する上で重要な基礎能力を測る為の課題曲である
- 第2次試験では、伴奏ピアニストと、音楽でコンタクトが取れるかどうか、さらにピアノのピッチで、演奏出来るかどうかを含めてアンサンブルの能力を測る課題を課している
- 作曲者の意図をしっかり理解して、東京藝大で学ぶにふさわしい能力を有しているか、創造性が有るかどうかの確認をしている
打楽器専攻(第1回・第2回)
- その楽器に相応しい美しい音色
- 正確で安定したテンポ
- 自然な呼吸を伴った適切なフレーズ感
- 音楽的で豊かな表現力
- (第2回の共通課題1では)音楽に対する受験者個人の創造性を測る
※管打楽器専攻で、能力や創造性を「はかる」という意味で、漢字の「図る」が使われていたが、「測る」が適切だろう。
まとめると、どの専攻も概ね、「様式理解」・「的確な技術」・「創造性」の3つが試されるのだと理解できる。
記述内容としては、管楽器のように第1次と第2次に分けて、打楽器のように演奏上の判定ポイントをもう少し詳しく箇条書きで示すなどの形で、全専攻が足並みを揃えて欲しいところだ。
既報記事のように、2020年度入試の学生募集要項では、合否判定基準について従来よりも踏み込んだ記載が見られたが、この出題意図の公表も、東京藝大の入試情報透明化の方針の一環と思われる。
受験生にとっては、楽譜の再現、安全運転的演奏にとどまらずに、音楽家でもある試験官に訴求し得る「創造性」をいかに発揮できるかが、専攻実技試験突破の最大の鍵となるだろう。
東京芸術大学 入試過去問題 音楽学部 2019年度(東京藝大入試情報サイト)
photo by 663highland
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