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ヴァイオリン「鬼親」伝説-わが子のおけいこに全てを捧げた家族の肖像

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セレブな「おけいこヴァイオリン」、その実態は・・・

ヴァイオリンと言えば、お金持ちのお嬢様の習いごとの典型だった時代があります。

最近は少々事情が変ったとはいえ、今でも、特に地方都市では、ヴァイオリンケースを抱えて街を歩く子供とその親には、自他ともに認める、そこはかとないセレブ感が漂っているようです。

ヴァイオリンを習うことは特別なこと、と周囲も思っているし、自分たちも、そこにある種の優越感を感じることができる。

そういう雰囲気が、ヴァイオリンのおけいこにはつきものです。

しかしながら、そのイメージと現実がこれほど異なるおけいこ事も、他にありません。

イメージだけに惹かれて習い始めてはみたものの、人はすぐに、ヴァイオリンでまともな音を出せるようになるまでに、どれほどの忍耐と努力が必要なのかを、思い知らされることになります。

努力したらうまくなるかというと、資質的な向き・不向きも加わって、簡単にはいきません。

持って生まれた音感がないと、この先厳しい、という現実に突き当たることにもなります。

そして、そこそこ弾けるようになったとしても、それなりのレヴェルになろうと思えば、それなりの先生につく必要があります。

当然、そういう先生は恐くて、厳しい。要求されるものは高く、レッスン料も高い。

それなりのレヴェルになろうと思えば、また、それなりの道具(=楽器)が必要となります。

そういう楽器は当然、高い。

結果として、日常の遊びやレジャーや息抜きを最小限に留め、勉強は良くも悪くもない程度にしておいて、残りのすべての時間・労力・お金をヴァイオリンに注ぎ込む。

「家族総動員体制」。

極端な場合、そこまで行きます。

そう、ヴァイオリンを習うということは、やはり特別なことなのです。

さて、このシリーズは、かくのごとく「家族総動員体制」下に置かれた、凄まじくも哀しい「鬼親」の皆様方の実態を、数々の証言をもとに、活写していきます。

星一徹は、飛雄馬と明子の前で、ちゃぶ台をひっくり返して怒りました。

しかし、その程度では済まないレヴェルの、いつ果てるとも知れない恐ろしい日常が、一見セレブなヴァイオリンのおけいこの世界の裏側に秘められていることが、これからご紹介する様々な証言によって明らかになっていくことでしょう。

* 尚、言うまでもなく、このシリーズはすべてフィクションです。

【鬼親伝説①】 ある郵便配達員の “証言”

【鬼親伝説②】 伴奏ピアニストは知っている

【鬼親伝説③】 ピアノと “格闘” フォルテな鬼親の真実

【鬼親伝説④】 カール3世の悲劇

【鬼親伝説⑤】 「私の前で好きなだけお泣きなさい」

【鬼親伝説⑥】 あの偉人も “証言” : 「鬼親」家の現状

【鬼親伝説⑦】 左手を強化するための仰天のトレーニング法とは?

photo credit: Cherylblossoms Resident – AWAY FROM SL via photopin cc


【世界大学ランキング】 第1位にジュリアード音楽院、日本勢は?

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ジュリアード音楽院が5年連続で第1位

世界の大学のトップ100をランキングする「QS世界大学ランキング」(※)の「舞台芸術(Performing Arts)」分野の2020年度のランキングで、ジュリアード音楽院(アメリカ)が92.9点(100点満点)を獲得して第1位となった。(※)イギリスの大学評価機関 “Quacquarelli Symonds” による

ジュリアード音楽院はこの分野のランキング集計が始まった2016年以降、5年連続で第1位となっている。

第2位は英国王立音楽大学で92.2点、第3位はウィーン国立音楽大学(オーストリア)で91.9点と、トップ3校は1点内の僅差だった。

第4位は英国王立音楽院で88.5点、第5位はニューヨーク大学(アメリカ)で87.7点、第6位はギルドホール音楽演劇学校(イギリス)で85.5点。

今回は、これら常連校に交じって、香港演芸学院(中国)が前年度の第13位から一気に順位を上げて、第7位(83.7点)に躍進し、強固な英米勢の一角を崩してアジア勢として初のトップ10入りを果たした。

シベリウス音楽院(フィンランド)は第13位、パリ国立高等音楽院(フランス)は第17位、ザルツブルク・モーツァルテウム大学(オーストリア)は第22位。

ドイツ勢は、第46位のハンス・アイスラー音楽大学ベルリンが最上位だった。

アジア勢はトップ50に4校がランクイン

香港演芸学院の他に、アジア勢では、シンガボール国立大学が第36位、韓国芸術総合学校が第38位、中央戯劇学院(中国)が第40位と、4校がトップ50にランクインしたが、昨年、第42位だった日本の東京大学はトップ50圏外(51位~100位)に沈んだ。

尚、東京藝術大学などの日本の芸術大学・音楽大学は、トップ100には1校もランクインしなかった。

公式サイト

ハーバード大学とジュリアード音楽院にダブル合格&首席卒業


地方の公立校から、塾・留学経験一切なしで、ハーバード大学に現役合格し、首席卒業。
3歳から始めたヴァイオリンでは国内外のコンクールで上位入賞。
ハーバード大学卒業の後、ジュリアード音楽院に入学し、こちらも首席卒業。学業とヴァイオリンの究極の二刀流を達成。
世界屈指の頭脳が集まるトップ校で、自分の限界を乗り越えつつ、獲得した世界最高の「考える力」。そのノウハウを受験や仕事にすぐに役立つ形で59のルールにまとめた。

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King Gnu(キングヌー)は J-POP 最強バンド その4つの理由

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King Gnu(キングヌー)が、まだあまり売れていなかった頃、常田大希はこう言った。

「今一番売れている音楽が、最も良い音楽だなんて思わないでほしい」

最高のクォリティの音楽を、日本で一番売れる音楽にしたい。

そんな野望は、メジャーデビューからわずか1年で実現した。

2019年の年末に NHK 紅白歌合戦に出場、年明けの1月15日にリリースしたサードアルバム『CEREMONY』は、発売1週間でいきなり25万枚を売り上げ、Billboard 週間アルバムチャートで首位に躍り出た。

また、メガヒットチューン「白日」は、「オリコン週間ストリーミングランキング」の週間再生数(533.5万回)で歴代1位を記録。

革新的でありながら、多くの人々を魅了し、楽曲・ボーカル・演奏・アレンジ、あらゆる面において、他をしのぐ驚くべきレベルにあるバンドと言っても過言ではない。

J-POP シーンにおいて、最強のバンドと呼ぶにふさわしい King Gnu の類いまれなスペックと戦略を明らかにする。

※この記事は敬称を省略します。

【サウンド力】キャッチーで、凝った音作り

日本では、曲作りにおいて本格的な洋楽系のアプローチをとると、サビや歌謡性に慣れたリスナーの耳には少々縁遠いサウンドになりがちだ。

そこで、親しみやすいメロディを縦横に駆使しつつ、インストバンド級の強力なリズムラインで下支えして、グルーヴ感を引き立たせる。

マンネリズムを排した多彩な展開に、特異な転調とリズムパターンを加え、精巧なアレンジを施す。

キャッチーで聴きやすいが、鳴っている音は凝りに凝っていて、とてもマニアック。

この矛盾の対置、違和感の表出こそ、 King Gnu の真骨頂と言える。

バンドとしての技術があり、生音は十分にクォリティが高い。

しかし録音では、エレクトロサウンドを大胆に取り入れ、トラックを重ね、精緻に作り込む。

アンサンブルを重視し、ソロパートの主張は抑え気味。もちろん、ここぞというポイントでは一点豪華なソロがフィーチャーされる。

そしてミキシングが立体的な響きを絶妙に演出する。

同じ曲をイヤフォンで聴くと、その醍醐味がわかる。

「これ、イヤフォンで聴くと、凄い!」とリスナーは新鮮な驚きを覚える。

イントロがなく、冒頭から耳を惹きつけるフレーズを次々とたたみかける曲もあり、ストリーミングに慣れた移り気しやすいリスナーへの訴求にも抜かりがない。

メガヒットチューン『白日』の3つの主要なメロディ(通称Aメロ・Bメロ・Cメロ)は、すべてがサビと言えるほどの強度とこだわりで作られている。

既存の J-POP 音楽では考えられないアプローチだ。

女声とまがう高音域のボーカルが紡ぐバラードだが、一方でベースとドラムがファンキーなリズムを刻む。

どちらも技巧的に群を抜くレベルだが、主張しすぎず、共存し、対比され、提示される。

ボーカルが心地よいメロディーラインを動いていくだけの音楽ではない。

徹底的に尖ったセッション系の技巧バリバリの音楽でもない。

両方をほどよく対置する。

録音ではその絶妙のバランス感覚が光っている。

【演奏力】炸裂するロウ感

精緻に作り込まれた録音から一転して、ライブではアレンジを変え、バンドとしての強圧的なロウ(生)の音で攻め立てる。

スキルフルな奏者たちによる自在のプレイが前面に押し出される。

言わば、録音とライブの対置だ。

だから同じ曲が全く別の相貌を表し、異なった感動を呼び起こす。

2020年1月17日放映の TV 番組(「Mステ」)で展開された「Teenager Forever」のライブ演奏がよい例だろう。

この曲は録音では生ドラムやアコースティックギター(アコギ)が活躍するが、ライブでは常田大希のアコギがエレキギターに替わり、井口理が独特のためを作りながら情感をクレッシェンドさせる演出が見られた。

勢喜遊のロックフィーリング全開のドラミング、新井和輝の強烈にうねるベースライン、常田大希の歪みの強度を増したギターソロは、絶妙のカメラワークと相まって、ライブならではの効果を生んでいた。

井口理は、便所サンダルが脱げてしまうほど、完全に振り切ったパフォーマンスで暴れ回ったが、歌唱のほうは決して乱れず、音程も確かだった。

King Gnu のライブではアコースティックコーナーがあり、力強いサウンドから一転、たおやかで親密な雰囲気の中、洗練されたソロとインタープレイが展開され、このバンドのもうひとつの魅力が引き出される。

とりわけ、「It’s a small world」のアコースティック・バージョンは、この上なく美しい。

CEREMONY (初回生産限定盤) (Blu-ray Disc付)
特典Blu-rayには2019年4月に行われた東京・新木場STUDIO COAST公演のライブ映像全20曲を収録

一定の型やスタイルに収れんされず、自由にクリエイティブにプレイする。

そんな真のアーティスト性を有したこのバンドは、自由だから、ライブだから、少々音が雑になってもいい、などという甘い考えとはまったく無縁だ。

ライブ演奏では、直後に必ずメンバー同士で演奏の出来を細かくレビューしチェックし合う。

バンドの屋台骨のリズムラインを支える新井や勢喜は、アドリブ一発勝負で音をフィニッシュさせるジャズやブラックミュージックのセッションシーンでならしてきた。

King Gnu としてメジャーになった今でも、彼らが自らの原点となったライブハウスへの出演を継続していることは、2020年2月23日に放映された「情熱大陸」でも明らかだ。

彼らは師匠宅に泊まり込みで弟子入りするほど、一途に技術を追求する職人気質のストイシズムを持っている。

門下に弟子入りし、練習漬けの日々を送った点では、東京藝大出身の常田や井口と重なる部分がある。

King Gnu が薄っぺらい音を奏でるバンドとは比較にならないレベルのスペックを備えているゆえんがここにある。

【ボーカル力】ファルセット&ユニゾン 清濁の対置

井口は東京藝大声楽科のテノール専攻卒で、クラシック唱法のトレーニングを積んだ基礎がある。

声量と声質もさることながら、音程の正確さでは J-POP の歌手の中では抜きに出ている。

かなり高いピッチの音も絶対に外さない。

ファルセットの使い手としては随一の井口が、その真価を発揮した一例が、「Hitman」のライブ・バージョン。

後半の超高音域でのスキャットはまさに圧巻だ。

CEREMONY (初回生産限定盤) (Blu-ray Disc付)
特典Blu-rayには2019年4月に行われた東京・新木場STUDIO COAST公演のライブ映像全20曲を収録

音楽を読み取る能力も高く、常田が作る複雑な構造の楽曲を即座に吸収し、モチーフの機微をわきまえ、隅々の音符まで、ゆるがせにせずに歌うことができる。

バラードやアコースティックはもちろん、疾駆するロックチューンも、ストップ&ゴーのファンクナンバーも、井口が歌えば美しく洗練された響きとなる。

たとえグランジにシャウトしても、それはあくまでも「音楽的に」汚れた効果を表現するスキルのひとつだ。

井口と常田のユニゾンでは、ダミ声系のダークな味のある常田の声と対置され、メロウなサウンドはひときわ甘美になり、クリスピーなファンキーナンバーはその高揚感を増す。

相反する2つの声のキャラクターの対置。

ここにも強烈な印象を与える仕掛けがある。

【戦略性】これ以上のものを出せる「余裕感」

作曲も演奏もきわめて強度は高いが、J-POP の標準を考慮し、一方の極を追求しすぎない。

万人受けするメロディーと精巧で重層的なサウンド構造、ウェルメイドな録音と炸裂するライブプレイ、ミューズの高音と堕天使のダミ声。

相反するものを対置して提示し、今までにないインパクトを与える。

そして、これ以上にハイレベルな曲は作れるし、実際に常田は別のプロジェクト(“millennium parade”)で、その実践を重ねている。

新井が、紅白歌合戦に出場した後、年が明けて最初の演奏の場として選んだのはジャズバンドのギグ。そこでウッドベースを弾いた。

アーティストとしてのキャパシティの大きさと、そこから生じる余裕感。

それが King Gnu というバンドのブランド力を際立たせる。

見すえるのは世界進出

2020年1月27日、常田大希率いる millennium parade が、2020年春に NETFLIX が全世界独占配信する「攻殻機動隊」シリーズ最新作 『攻殻機動隊SAC_2045』のオープニング・テーマ曲を担当することが発表された。

常田は、millennium parade が創造しようとする世界観は攻殻機動隊から多大な影響を受けたと語り、このコラボレーションへの強い意欲を示した。

また常田は、ファッションブランド「N.HOOLYWOOD」のニューヨーク・コレクションの音楽を担当し、2020年2月4日にアメリカ・ニューヨークの Masonic Hall NYC で行われたショーで自身の制作した音源に合わせてチェロの生演奏を披露した。

楽曲は、ニューヨーク出身の現代作曲家スティーヴ・ライヒへのオマージュとも言えるミニマルな音型の反復から、次第に熱量と緊張を増幅させた響きが劇的に展開し、「フォーマルの再構築」を謳うコレクションのテーマを見事に表現した。

”N.HOOLYWOOD COMPILE FALL2020 COLLECTION”

終演後に常田は、今回のニューヨークでのパフォーマンスを、今後、音楽家として様々なジャンルの作品を世界に向けて発信していく足がかりにしたいと語った。

ファッションデザイナーの山本耀司、川久保玲、映画監督のスタンリー・キューブリック…

常田は刺激や影響を受けた様々なジャンルのアーティストの名前を挙げるが、音楽に関しては、彼の視線の先にあるのは、おそらく坂本龍一だろう。

坂本は東京藝大作曲科卒。大衆に背を向け純粋芸術に閉じた現代音楽の領域から脱して、YMO を結成し、そのワールドツアーを成功させ、テクノポップという新たなジャンルを開拓した。また劇伴音楽の分野でも世界のトップクラスに登りつめた。

King Gnu のボップネスはどのようにして海外に訴求しうるのか。

3D 映像と音楽とのコラボレーションによって新次元のライブ体験を提示する millennium parade による世界進出は果たされるのか。

King Gnu がたった1年で国内最強バンドとなった今、それらもまた、従来ないスピードで実現への歩みを進めていくに違いない。

by: 三木拓(音楽ライター)

発売1週間で25万枚 Billboard 週間アルバムチャート首位獲得

革新的でありながらポップでキャッチー
クラシック、ジャズ、R&B、ヒップホップ、ハードロック、ラウドロック あらゆるジャンルをのみ込む J-POP 史上の金字塔
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極上のボーカル・演奏・アレンジ

CEREMONY (初回生産限定盤) (Blu-ray Disc付)

全曲ダイジェスト試聴
King Gnu 3rd ALBUM 「 CEREMONY 」Teaser Movie

下記で『CEREMONY』の全曲レビューとKing Gnu についての最新記事(2020/2/23付)を公開中

【King Gnu 常田大希】芸大・チェロ・Nコン・マリンバ 異才に注ぐ音楽の水脈

東京藝大が一部入学試験を中止

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2020年3月4日、東京藝術大学音楽学部は、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況を鑑み、受験者の感染リスクを避けるために、3月5日と7日に行われる予定だった音楽に関する基礎能力検査(聴音書き取り・楽典・新曲視唱・リズム課題)と副科ピアノなどの試験を中止すると発表した。

尚、中止に該当する試験以外の試験は予定通り実施される。(楽理科の3月6日和声・小論文と8日口述試問、指揮科の3月6日和声、作曲科の3月7日ピアノ新曲・面接は実施)

また、別科入試は予定通り実施、3月8日「東京藝大ジュニア・アカデミー」第2次試験も予定通り実施される。

今回中止される試験は最終合否判定の材料には用いないことから、器楽科の各専攻は、実技試験とセンター試験の結果及び調査書を総合的に判断して最終合否が決定されることになる。

「入試日程・合格発表」(東京藝術大学入試情報サイト)

自宅練習で積む「成功体験」が “あと伸び” を促す

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家でひとりで課題克服できるのは中学生でもひと握り

指導者が、この子はこう練習すればここのパッセージは弾くことができると分析して練習の処方箋を出しても、家でひとりで課題を克服してこれるのは、中学生になっても極々ひと握りです。

大抵は何百回も弾いていればそのうち何とかなるだろうと、「下手な鉄砲も・・・」方式ですが、これが不思議と何とかならないものです。

千人にひとりを除けば、誰もが自分ひとりではいい加減な練習をしてしまいます。誰でも真実は見たくないからで、そこをきちんとチェックできるのはやはり保護者ということになります。

保護者にその役割を担ってもらうために、レッスンにも来て頂くのです。

具体的に指示して、実行させる

子供は基本的に「その場限り」の生き物ですから一万回同じことを言って当然、と思わなければいけません。「何回同じことを言わせるの」とか「部分練習をしなさい」という漠然とした言い方では動きません。

細かいスケール、アルペジオのパッセージでは上方形で書いてあれば下降形も弾かせる、弓が複雑なら全部スラーにしてまず左手だけ固める、三弦にわたる分散和音ならまず徹底して三和音で練習させる、等々指導者が出した処方箋のとおり具体的な指示を出して頂きたいのです。

もちろん一日では出来ません。出来たようでも次の日にはまた出来なくなっている。そこでまたやらせる、その積み重ねが後々生きてくるのです。

「成功体験」を積み重ねる

レッスンは週一か週二、多くてせいぜい2時間から4時間が限度です。後は家庭での練習にかかっているわけです。

怒鳴ったり、手を上げたり、精神論を振り回すことは簡単で誰にでもすぐ出来ます。毎回具体的指示を出して実際にやらせ、「こういう練習をすれば絶対に弾けるようになる」という成功体験を積み重ねさせることは保護者にしか出来ません。

子供の中に「練習すれば弾けるようになる」との確信が生まれるかどうかで、高校以降の伸びが違ってくると言っていいでしょう。

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photo credit: TinyTall via photopin cc

【藝大入試2020】ヴァイオリン23名、ピアノ33名が最終へ

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【第2次競争倍率】 ヴァイオリン2.22倍、ピアノ3.67倍、トランペット11.00倍、ユーファニアム8.00倍、チューバ8.00倍

3月3日~6日、東京藝大音楽学部器楽科の第2回専攻実技試験(※)が行われ、3月6日に合格者が発表された。(※古楽のチェンバロ、リコーダーは3月5日に1回のみ専攻実技試験を実施した)

古楽を除く器楽科全体の志願者は446名。専攻実技第1回試験に合格した202名が第2回試験に進み、121名が合格した。(古楽チェンバロの志願者は3名、実技合格者は1名、リコーダーは志願者3名、実技合格者は2名、バロック・ヴァイオリンは志願者2名、実技合格者は1名だった)

第2次合格者の志願者数に対する競争倍率(第2次競争倍率)は全体平均で3.69倍。(昨年は419名が志願、127名が第2次合格、第2次競争倍率は3.30倍だった)

ヴァイオリン専攻は51名が志願、第1回実技試験(音階とパガニーニ 第22番)に合格した30名が、第2回実技試験(バッハ:無伴奏ソナタ 第3番 第3楽章とドヴォルザーク:協奏曲 イ短調 第1楽章)に臨み、23名が合格、第2次競争倍率は2.22倍だった。(昨年は49名が志願、32名が1次合格、26名が2次合格、2次競争倍率は1.88倍)

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、3月7日に予定されていた聴音・楽典・新曲視唱・リズム課題・副科ピアノの試験は中止された。

これにより器楽科の各専攻の最終合否は、専攻実技試験とセンター試験の成績及び調査書を総合的に判断して決定されることになる。

最終合格者は3月12日14時以降に発表される。

2020年度 器楽科の志願者数・合格者数・倍率

志)志願者数、①合)第1次合格者数、①率)第1次競争倍率、②合)第2次合格者数、②率)第2次競争倍率 ※古楽を除く。カッコ内は昨年

ピアノ
志)121、①合)60、①率)2.02、②合)33、②率)3.67
(118、76、1.55、38、3.11)

オルガン
志)6、①合)6、①率)1.00、②合)4、②率)1.50
(1、1、1.00、1、1.00)

ヴァイオリン
志)51、①合)30、①率)1.70、②合)23、②率)2.22
(49、32、1.53、26、1.88)

ヴィオラ
志)3、①合)2、①率)1.50、②合)2、②率)1.50
(7、5、1.40、5、1.40)

チェロ
志)10、①合)7、①率)1.43、②合)5、②率)2.00
(10、5、2.00、5、2.00)

コントラバス
志)9、①合)7、①率)1.29、②合)5、②率)1.80
(13、7、1.86、5、2.60)

ハープ
志)4、①合)4、①率)1.00、②合)3、②率)1.33
(1、1、1.00、1、1.00)

フルート
志)34、①合)14、①率)2.43、②合)10、②率)3.40
(33、16、2.06、10、3.30)

オーボエ
志)19、①合)6、①率)3.17、②合)4、②率)4.75
(11、5、2.20、4、2.75)

クラリネット
志)26、①合)12、①率)2.17、②合)5、②率)5.20
(26、14、1.86、8、3.25)

ファゴット
志)15、①合)10、①率)1.50、②合)5、②率)3.00
(6、4、1.50、3、2.00)

サクソフォーン
志)34、①合)12、①率)2.83、②合)6、②率)5.67
(34、7、4.86、5、6.80)

トランペット
志)33、①合)5、①率)6.60、②合)3、②率)11.00
(21、6、3.50、3、7.00)

ホルン
志)21、①合)8、①率)2.63、②合)5、②率)4.20
(24、6、4.00、3、8.00)

テナー・トロンボーン
志)12、①合)2、①率)6.00、②合)2、②率)6.00
(22、7、3.14、2、11.00)

バス・トロンボーン
志)2、①合)1、①率)2.00、②合)0、②率)-
(3、2、1.50、1、3.00)

ユーフォニアム
志)8、①合)2、①率)4.00、②合)1、②率)8.00
(7、2、3.50、2、3.50)

チューバ
志)8、①合)4、①率)2.00、②合)1、②率)8.00
(10、4、2.50、1、10.00)

打楽器
志)30、①合)10、①率)3.00、②合)4、②率)7.50
(23、9、2.88、4、5.75)


志)446、①合)202、①率)2.21、②合)121、②率)3.69
(419、208、2.01、127、3.30)

器楽科以外の各科の試験進行・合格状況(3月6日現在)
  • 作曲科(募集人員15名):志願53名、第1次(和声)合格41名、第2次(厳格対位法・コラール課題)合格30名、第3次(自由作曲)合格23名。3月7日第4回(ピアノ新曲・面接)。
  • 指揮科(募集人員2名):志願6名、第1次(聴音・新曲視唱・指揮実技)合格2名、第2次(指揮実技・初見視奏・器楽試験・適性検査・音楽一般試問)合格2名。3月6日第3回(和声)
  • 声楽科(募集人員54名):ソプラノ志願120名、第1次(課題曲)合格72名、第2次(自由曲)合格42名。アルト志願24名、第1次合格17名、第2次合格12名。テノール志願34名、第1次合格22名、第2次合格14名。バス志願32名、第1次合格20名、第2次合格12名。
  • 邦楽科(募集人員25名):志願41名、第1次(課題曲)合格33名、第2次(自由曲・課題曲・口頭試問※)合格26名。※他に専攻によって初見試奏を課す。
  • 楽理科(募集人員23名):志願56名、第1次(国語・外国語)合格30名、3月6日第2次(和声・小論文)、3月8日口頭試問
  • 音楽環境創造科(募集人員20名):志願102名、第1次(学力検査:音楽)合格62名、2月27日第2次(小論文)・3月3日~6日第2次(面接 ※自己表現を含む)。

「入試日程・合格発表」(東京藝術大学入試情報サイト)

音楽大学・高校 2020入試問題集

2019年度東京藝大入試の楽典、東京藝大附属高入試の楽典・国語・英語の解答例・解説を掲載
解説は東京藝大作曲科・楽理科卒を中心とする精鋭執筆陣

音楽大学・入試問題集 2020 国公立大・私大・短大・高校・中学・大学院

東京藝大教授陣が執筆 新時代の楽典テキスト

東京藝大音楽楽部の音楽理論・ソルフェージュ教育に準拠
東京藝大附属高校がはじめて教科書に採用
楽譜の読み書きから基本的な和声学習までをカヴァー

楽典 音楽の基礎から和声へ

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【メニューイン初来日】 悪魔のトリルに震え涙した日

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14年ぶりに聴くヴァイオリンの本当の音色

1951年(昭和26年)9月18日、初来日したメニューインが、日比谷公会堂のステージに立った。

聴衆は2700名。内外の著名人も多く駆けつけた。

来賓席には、リッジウェイGHQ総司令官夫妻や吉田茂首相夫妻の姿もあった。

吉田首相は、この9日前に、全権代表としてサンフランシスコに赴き、連合国との講和条約に調印していた。

日本が第二次大戦後の占領下を脱し、独立国としての第一歩を踏み出そうとしていた時だった。

アドルフ・バラーのピアノ伴奏で、この日メニューインが演奏したのは、タルティーニ:悪魔のトリル、フランク:ソナタ、パガニーニ:協奏曲第1番。そして、バッハ:無伴奏パルティータ第2番 “シャコンヌ” 。

それは1937年(昭和12年)のミッシャ・エルマンの来日以来、日本人が14年ぶりに聴いた海外の著名ヴァイオリニストの生の音だった。

photo : Wikimedia Commons

小林秀雄「メニューヒンを聴いて」

翌9月19日の『朝日新聞』紙上で、文芸評論家の小林秀雄が、その感動を以下のように記している。

会場にあふれる聴衆は熱狂していた。久しい間、実に久しい間わが国の、音楽の好きな人達は、ヴァイオリンの本当の音色というものを聞かずに暮していたのである。これは、恐らくメニューヒン氏には想像も出来ない事であろう。

第一日目の演奏を聴いて、何か感想を書くことを約したが、きっと感動してしまって何も言うことがなくなるだろうと考えていた。その通りになった。タルティニのトリロが鳴り出すと、私はもうすべての言葉を忘れて了った。バッハだろうが、フランクだろうが、それはもうどうでもよい事であった。さような音楽的観念は、何処へやらけし飛び、私はふるえたり涙が出たりした。魂を悪魔に渡してから音楽を聞くということもある。タルティニはうそをついたのじゃあるまい。たゞ、私は夢の中で、はっきり覚めていた。そして名人の鳴らすストラディヴァリウスの共鳴盤を、ひたすら追っていた。あゝ、なんという音だ。私は、どんなに渇えていたかをはっきり知った。

メニューヒン氏は、こんな子供らしい感想が新聞紙上に現われるのを見て、さぞ驚くであろう。しかし、私は、あなたの様な天才ではないが、子供ではないのだ。現代の狂気と残酷と不幸とをよく理解している大人である。私はあなたに感謝する。

冷静に「音」を聴き取る

『朝日新聞』に掲載されたこの小林秀雄の感想に比べて、当時の音楽評論家らのメニューインの演奏に対する評価は、あまり芳しいものではなかったようだ。

「確かに、『会場にあふれる聴衆は熱狂していた』のだが、少なくとも、日本の音楽評論家の中で、『ふるえたり涙が出たりした』などと書いた人は、一人もいなかったのである。」(杉本圭司氏「小林秀雄實記 最後の音楽会」より)

とはいえ、小林秀雄の耳は、待ちに待った海外アーティストの実演に接した過剰なほどの喜びに浸る中でも、決して麻痺することなく本質を聴き捉えていた。

その時のメニューインの演奏について、後に『新潮』1952年1月号に発表した「ヴァイオリニスト」という随筆の中で、小林はこう書いている。

タルティーニの最初の音が意外に悪かったものの、弾き続けるうちに調子が出て、パガニーニの協奏曲では楽器が完全に鳴っていた。

そこでは、演奏会場で「音という事件」に直接遭遇したことにより生じる感慨に言及している。

それは、美質の多くの部分が音を創り出すことにあるヴァイオリンいう楽器の特性に深く触れるものだった。

ヴァイオリンにおいては、技巧や曲の解釈云々の前に、あるいはそれ以上に何よりも、音が問題なのだ。

なぜ最初のタルティーニでは音が悪かったのか?

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当日のメニューインの演奏会においては、実はこのヴァイオリンの音にとっての決定的な不幸があった。

演奏会の5日後の『朝日新聞』(1951年9月23日付)で、近衛秀麿が次のように書いている。

楽屋で聴いて耳の裂けるような、およそ日本人の十倍もあろうと思われるほどの強烈なストラディヴァリの音量が、あの舞台では天井に抜け、壁に吸われ、四面に散ってわれわれの耳に達するのは、その二、三割にも過ぎない。

さらには、

換気の悪い場内の蒸しブロのような人いきれと湿気とは、四囲の状況の変化に敏感な高級の弦楽器には禁物だ。

近衛秀麿は、東京都内に音楽専用ホールを作るべきだと、長年主張し続けてきた人である。

小林秀雄も、この不幸をきちんと聴き取っていた。

あれほど技を練り、場なれた名人が、初めのうちは調子が出ないと言う様な事ではおかしい。やはり、それは、弾いている間に次第に克服するより他はない湿度という物理的条件によったのだろうと思っている。(「ヴァイオリニスト」)

かつてヴァイオリンを習ったこともある小林秀雄。

ヴァイオリンを愛し、ヴァイオリンの本質を熟知した人の演奏評は、ヴァイオリン学習者にって実にしっくりとくる。

photo by 663highland

小林秀雄 最後の音楽会

一九八二年十二月二十八日、夜―。小林秀雄はもはや、音楽を聴く体力も気力も失い、病床に臥せっていた。その小林秀雄の耳に、戦後まもなく、日比谷公会堂で聴いて震えたあのヴァイオリニストの音色が、テレビの電波に乗って届いたのだ。彼は身を起こし、一階に降り、妻と並んで奇蹟のプログラムに耳を澄まし続けた…その二ヶ月後であった、一九八三年三月一日、小林秀雄は八十年の生涯を閉じた。愛読三十余年の気鋭が描く近代批評の創始者の生涯にわたる音楽との宿縁!

小林秀雄 最後の音楽会

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小林秀雄をも感激させたメニューインが、1951年の滞日中に、日本ビクターのスタジオで録音したもの。日比谷公会堂での実演に比して、音は素晴らしい。オリジナル・テープからのリマスタリングで、当時のメニューインがストラディヴァリウスから引き出してみせた美しい音色が満喫できるうえに、ショー・ピース系の作品における艶っぽい歌い回しが堪能できる点も魅力的。

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【大震災から2カ月】ハイフェッツのヴァイオリンが東京に響いた日

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1923年(大正12年)9月に起こった関東大震災の前後に、ふたりの偉大なヴァイオリニストが相次いで日本を訪れた。

ひとりはフリッツ・クライスラー。

1923年5月1日から5日間、帝国劇場で来日リサイタルを行った。

ギャラはワンステージ5,000円。当時の日本では家1軒が軽く購入できるほどの破格の金額であったという。

もうひとりは、そのクライスラーをして「我々に残されたのはもはや楽器を投げ捨てることだけだ」と言わしめた、若き日のヤッシャ・ハイフェッツ。

ハイフェッツの来日は当初1923年9月に予定されていたが、9月1日に起こった関東大震災が東京に壊滅的な被害を与え、9月中の来日は不可能となった。

この大震災でクライスラーが5月にリサイタルを行った帝劇は、外郭を残して焼け落ちてしまった。

ハイフェッツ、廃墟の東京に降り立つ

ハイフェッツはまさに大震災の日、9月1日にニューヨークから東洋への船旅に赴こうとしていた。

弱冠21歳。当時すでにその超人的な技巧と多彩な音色、峻厳な音楽性で世界のヴァイオリン界をリードする存在となっていた。

旅の途上、関東大震災の報に接したハイフェッツは船内で慈善演奏会を開催し、義捐金3,000円を集めたと言われている。

彼は1917年、ロシア革命の混乱に揺れるロシアから、シベリア経由で母・妹と共にアメリカに亡命している。その途中、一家は日本に立ち寄り、2週間ほど滞在したという。

ハイフェッツが震災で廃墟と化した東京への哀惜の念を強く感じたであろうことは想像するに難くない。

ハイフェッツはまず中国に向かい、その後日本の神戸へ。

11月7日、震災から2ヶ月後の東京に降り立った。

11月9日から3日間行われたリサイタルは、帝劇が焼失したため、帝国ホテルの宴会場で催された。

リサイタルでは、ヴィターリ『シャコンヌ』、ヴィエニヤフスキ『ヴァイオリン協奏曲第2番ニ短調』、シューベルト『アヴェ・マリア』などが演奏された。

日比谷公園で慈善演奏会

1923年(大正12年)11月12日午後2時。

折りからの雨は止んだが、北風が身にしみる。

急遽企画されたハイフェッツによる震災慈善演奏会を聞こうと、日比谷公園大音楽堂に詰めかけた聴衆は約3,600人。

前日まで3日間にわたり行われた帝国ホテルでのリサイタルの入場料は10円であったが、その日の慈善演奏会は1円に値下げされた。

この演奏会の入場料収入から諸経費の800円を引いた残り2,800円全額が、ハイフェッツから東京の罹災民のために寄付されることになっていた。

この日の演目はサラサーテ『ツィゴイネルワイゼン』、シューベルト『アヴェ・マリア』、ショパン『ノクターン』など、十数曲であった。

中でも震災直後の野外演奏会を象徴していたのは、ヘートーヴェン(アウアー編曲)の劇音楽『アテネの廃虚』よりの2曲(『苦行僧の合唱』と『トルコ行進曲』)が演奏されたことである。

大震災で壊滅的な被害を受けてまだ2か月。その傷跡も生々しい東京への鎮魂と癒し、そして復興へのエールの思いがあふれた選曲であった。

予定曲をすべて弾き終わった後、寒風をものともせずその名演に酔いしれていた東京市民に向け、ハイフェッツは万感の思いを込めて、『君が代』をゆっくりと2度演奏した。

聴衆は皆立ち上がり、「ハイフェッツ万歳」を唱和したという。

photo credit: joevare via photopin cc

ツィゴイネルワイゼン~ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン


ハイフェッツのスーパー・テクニックが堪能できる「ツィゴイネルワイゼン」やワックスマンの「カルメン幻想曲」もさることながら、ショーソンの「詩曲」の、澄み切った美音で奏でられる切ない歌もまたたまらない。8曲のどれを取っても、不世出のヴァイオリニスト、ハイフェッツの、そして、ヴァイオリンという楽器そのものの凄さが凝縮されたような極めつきのアルバム。

ツィゴイネルワイゼン~ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン(日本独自企画盤)

ハイフェッツ ザ・ラスト・リサイタル


10年間リサイタルから遠ざかっていたヤッシャ・ハイフェッツが、教鞭をとっていた南カリフォルニア大学音楽部の学生と教授陣の勉学の資金調達のために、1972年に開いた慈善コンサートの模様を収めたライヴ・アルバム。当時71歳のハイフェッツが、往時と変わらぬ完璧な演奏を披露した作品。

ザ・ラスト・リサイタル(期間生産限定盤)


【藝大入試2020】 音楽学部 器楽科 100名が最終合格

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【最終競争率】 ヴァイオリン2.55倍、ピアノ4.65倍、トランペット16.50倍、打楽器10.00倍

3月12日14:00、令和2(2020)年度東京藝術大学音楽学部入試の最終合格者が発表された。

音楽学部全体では、志願者922名のうち、236名が最終合格 、競争率(志願者数÷最終合格者数)は3.91倍だった。(昨年は志願874名、最終合格239名、競争率3.66倍)

器楽科は、志願者454名のうち、100名が最終合格、競争率は4.54倍。(昨年は志願423名、最終合格99名、競争率4.27倍)

器楽科ヴァイオリン専攻の最終合格者は20名、競争率は2.55倍だった。(昨年は最終合格22名、競争率2.23倍)

ピアノの最終合格者は26名(昨年26名)、ヴィオラ2名(5名)、チェロ4名(3名)、コントラバス5名(5名)、ハープ2名(1名)。

弦楽器全体では昨年より3名減の33名だった。

管打楽器は全体で昨年と同じく34名。

楽器別ではトランペットが16.50倍、打楽器が10.00倍と競争率が特に高かった。

今年度の入試は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、3月5日と7日に行われる予定だった音楽に関する基礎能力検査(聴音書き取り・楽典・新曲視唱・リズム課題)と副科ピアノなどの試験が中止された。

東京藝大が一部入学試験を中止

【器楽科】志願者数・合格者数・倍率
専攻 志願 1次 2次 最終 倍率
ピアノ 121 60 33 26 4.65
オルガン 6 6 4 3 2.00
ヴァイオリン 51 30 23 20 2.55
ヴィオラ 3 2 2 2 1.50
チェロ 10 7 5 4 2.50
コントラバス 9 7 5 5 1.80
ハープ 4 4 3 2 2.00
フルート 34 14 10 7 4.86
オーボエ 19 6 4 3 6.33
クラリネット 26 12 5 4 6.50
ファゴット 15 10 5 3 5.00
サクソフォーン 34 12 6 4 8.50
トランペット 33 5 3 2 16.50
ホルン 21 8 5 4 5.25
テナートロンボーン 12 2 2 2 6.00
バストロンボーン 2 1 0 0
ユーフォニアム 8 2 1 1 8.00
チューバ 8 4 1 1 8.00
打楽器 30 10 4 3 10.00
チェンバロ 3 1 1 3.00
リコーダー 3 2 2 1.50
バロック・ヴァイオリン 2 1 1 2.00
454 206 121 100 4.54
【作曲科・声楽科・指揮科・邦楽科・楽理科・音楽環境創造科】志願者数・合格者数・倍率
専攻 志願 1次 2次 3次 最終 倍率
作曲 53 41 30 23 15 3.53
声楽 210 131 80 54 3.89
指揮 6 2 2 2 3.00
邦楽 41 33 26 21 1.95
楽理 56 30 24 2.33
音環 102 62 20 5.10

※声楽科の内訳:ソプラノ(志願120・1次72・2次42・最終23・倍率5.22)、アルト(志願24・1次17・2次12・最終11・倍率2.18)、テノール(志願34・1次22・2次14・最終11・倍率3.09)、バス(志願32・1次20・2次12・最終9・倍率3.56)

「入試日程・合格発表」(東京藝術大学入試情報サイト)

音楽大学・高校 2020入試問題集

2019年度東京藝大入試の楽典、東京藝大附属高入試の楽典・国語・英語の解答例・解説を掲載
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ヴァイオリンやピアノを熱心に学べば英語も上達する 

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日本人はなぜ英語が苦手なのか?

中学と高校で6年間英語を学んでも、日常会話すらままならない。

多くの日本人は英語にコンプレックスを持っています。

それはなぜでしょうか?

理由は2つ考えられます。

「学習時間」と「環境」の圧倒的な不足です。

まず学習時間ですが、ここに興味深いデータがあります。

アメリカの国務省の職員が、外国に赴任する際に、その国の言語をマスターするのに何時間の授業が必要かを示すデータです。

それによると、英語を話す彼らにとって日本語は修得するのに最も難しい言語グループに属していて、日本語の日常会話をマスターするのに必要な授業時間は約1000時間(※1)。

そして、日本語で仕事をこなすために必要なレベルとなると、約2500時間(※2)の授業が必要だということです。

この時間はあくまでも国務省の外交官候補の授業時間であり、また一定期間日本語漬けにして集中的にトレーニングすることを前提にしています。

一般のアメリカ人が日本語をマスターする場合はさらにもっと多くの時間を要するはずですが、以上を踏まえると、逆に日本語を話す私たちが英語の日常会話をマスターする場合も、おそらく最低1000時間は授業が必要だと推定できるでしょう。

ところが、日本の中学・高校の6年間の英語の総授業時間数は、約850時間(※3)です。

つまり、6年間英語を学んでも日常会話もまともにできないのは、当たり前の話。

私たち日本人は英語の学習時間が圧倒的に少ないのです。

(※1)CEFR基準(語学の熟達度を測る国際基準)のA1・A2(基礎段階の言語使用レベル)に到達するのに720~1400時間。1000時間はその平均。
(※2)CEFR基準のB1・B2(自立段階の言語使用レベル)に到達するのに2400~2760時間。2500時間はその平均。
(※3)1年40週で週3~4時間の授業とした場合の平均。

英語に接する「環境」

不足しているのは学習時間だけではありません。

ボーダレスで人の行き来や移民が多いヨーロッパの国々などには、日常的に複数の言語が使われている地域もあります。

そこでは英語が共通語として、日常生活を送るための欠かせないツールとなっています。

しかし、日本に住んでいれば、日常生活で英語を使う必要はほとんどありません。

日本では英語に接する「環境」がほとんどないのです。

最近は外国人観光客も増えてはいますが、せっかく英語に接する機会なのに、多くの日本人は彼らとの積極的なコミュニケーションを避けて通りがちです。

音楽用語のみでコミュニケーション成立

前置きが長くなりましたが、日本人が英語を苦手とする以上の2つの要因(学習時間と環境の不足)のうち、ヴァイオリンやピアノ学習者は、実は「環境」の面でとても有利な状況にあります。

専門をめざして楽器を学んでいる場合、国内の講習会やマスタークラスで、海外の先生のレッスンを受ける機会は小学生の頃からたくさんあります。

その際、フランス人やドイツ人の先生であっても、レッスンはほぼ共通語の英語で行われます。

そして音楽用語は万国共通です。

「フォルテ!」「クレッシェンド!」「ヴィブラート!」 

最初は英語がまったく分からなくても、キーワードとなる音楽用語と声の調子、身振り手振りだけで、先生が何を言わんとしているかは、小学生でもほぼ理解できるでしょう。

海外の先生のレッスンを重ねていけば、英語で意思疎通する貴重な場数を踏むことができます。

やがて、曲の解釈や背景を説明する先生の英語を理解しなければならない必要性に迫られることになります。

また、「ここはどう弾きたいの?」という先生の質問に、英語で答えなければならない必要性にも迫られるでしょう。

こうして楽器に打ち込む学習者は、どうしても英語を使わなければならない環境に置かれることになるわけです。

楽器学習 2つのメリット

そして、専門をめざす楽器学習者は、何よりも「耳がよい」というメリットがあります。

常日頃から聴音を鍛えているので、英語を聴き取る力も自然に養われていきます。

英語の修得に最大の効果を発揮するのは、留学するなどして英語にどっぷりつかる日常生活を送ることですが、日本国内にいても、この「環境」と「耳」という2つのメリットを持つ楽器学習者なら、英語を身に着けることは十分に可能です。

小学校高学年から毎年、国内の講習会やマスタークラスで外国人の先生のレッスンを通訳なしで受講する。

夏休みには短期で海外の講習会に参加する。

ジュニアの国際コンクールに挑戦する。

これを中学・高校と続けていけば、英語に接する機会はかなり増えます。

そして、英語上達に有利な位置にある自分をさらにステップアップさせるために、必要となるのは「学習時間」の確保です。

ヴァイオリンやピアノが忙しすぎて、英語なんてやっている暇がないというのは、せっかく与えられた2つのメリットを宝の持ち腐れにしているようなものです。

できるだけ早い時期から着実に英語の学習時間を積み重ねていきましょう。

そうすれば、学校の限られた授業時間を補って、英語をマスターできる十分なレベルに到達できるはずです。

by: 杉山一太(塾講師)

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【King Gnu 常田大希】芸大・チェロ・Nコン・マリンバ 異才に注ぐ音楽の水脈

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斬新な音楽的手法の『白日』

メジャーデビュー1年目にして、「第61回日本レコード大賞」優秀アルバム賞を受賞、NHK 紅白歌合戦に初出場した、大プレイク中のロックバンド King Gnu(キングヌー)。

テレビドラマの主題歌となったメガヒットチューン『白日』は、ストリーミング総再生回数で1億回を突破した。

また、『白日』の MV も再生1億回を突破、国内では「MTVビデオ・ミュージック・アワーズ2019」で史上初の2冠(最優秀新人アーティストビデオ賞・年間最優秀ビデオ賞)に輝き、欧州最大級の音楽授賞式「2019 MTV EMA」でも「ベスト・ローカル・アクト賞 “BEST JAPAN ACT” 」を受賞した。

そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの King Gnu の作詞・作曲・編曲・ギター・ボーカル・キーボードを担当する常田大希(つねただいき)さんは、東京藝術大学音楽学部器楽科チェロ専攻の出身だ。

多くの人を魅了する『白日』は、既存の J-POP のヒット曲にはない斬新な音楽的手法で作られている。

静から動への劇的展開、絶妙に変転する調とリズム。オルガンの響きがコラール(教会歌)を思わせる一方、高低部の顕著な振れ幅により描かれる旋律線は、J-POP のボーカル曲としては極めて異質で、器楽的でさえある。

また、ニューアルバム『CEREMONY』は、クラシック、ジャズ、R&B、ヒップホップ、ラウドロック、グランジロックと、あらゆるジャンルを呑み込んで、 King Gnu 独自のフォーマットに落とし込んだ会心作だ。

その「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル」と呼ばれる音楽スタイルには、常田さんがこれまでに学んできた音楽の影響が少なからず見て取れる。

幼少期からチェロを習いつつ、中学時代は合唱部にも所属。全国屈指のコンクールに入賞した実績も持つ常田さんの音楽の水脈を探る。

6歳で兄・母と共演

常田大希さんは、1992年5月15日生まれ。

学歴は、伊那市立東部中学校卒業、長野県立伊那北高校卒業、東京藝術大学音楽学部器楽科チェロ専攻入学・中退。

幼少期から早期音楽教育で定評のあるスズキ・メソード(才能教育研究会)でチェロを習った。

6歳でコンサートに出演、兄の常田俊太郎さんもヴァイオリンで共演した。※「長瀬冬嵐クラスの生徒たちによるチェロコンサート」(1998年10月11日)。この時の プログラム には常田理恵さんという名前もあり、お母様がピアノ伴奏を務めたと思われる。

合唱コンクールの最高峰Nコン全国大会出場(動画あり)

チェロを続けながら、伊那市立東部中学校時代には合唱部にも所属していた。

同郷の King Gnu ボーカルの井口理(さとる)さん(東京藝大声楽科卒)も同じ中学の1学年下で、合唱部の一員だった。

同合唱部は2007年、「Nコン」として知られる「NHK全国学校音楽コンクール」中学校の部で、地区大会・県大会・関東甲信越大会をすべて最高位の金賞で勝ち抜き、全国コンクールに出場、優良賞を獲得した。

この時、課題曲『めぐりあい』では合唱に加わっていた常田さんだが、自由曲『IMBENI~魂の夜明け~』では、マリンバの伴奏を担当。初めてマリンバを手にしたのは地区大会が始まる1ヶ月前だったという。

楽器をマルチにこなす才能は、すでにこの時期に開花していた。

「平成19年度Nコン全国大会中学校の部(伊那市立東部中・めぐりあい)」(※)ピアノ伴奏は常田理恵さん

「平成19年度Nコン全国大会中学校の部(伊那市立東部中・IMBENI)」

チェロと合唱部以外では、中学生ですでにバンドを結成、ギターやベースを弾き、MTR(マルチトラックレコーダー)を使って作曲も始めた。

幼少期からチェロを弾く常田さんは絶対音感を持っている。

そして、フレットのないチェロを自在に弾きこなす常田さんなら、ギターやベースの左手の運指は難なく修得できたはずだ。

ベースとチェロの全国コンクールW入賞の離れ業

高校生になると、ロックとクラシックの両分野でトップ演奏家としての頭角を現す。

まず、高校2年(17歳)で、アーティスト志望の若手奏者にとって国内最高峰の決戦場と言われた「最強プレイヤーズコンテスト2009」(リットーミュージック主催)のベース部門で準グランプリを獲得。

そして高校3年(18歳)では、国内屈指のクラシック音楽コンクールである「日本クラシック音楽コンクール」全国大会のチェロ部門・高校の部で第3位に入賞した。

楽器を究めるなら、チェロかベースか、どちらかひとつに絞るのが普通だろう。

しかもチェロは、幼少期からその道一筋で、専門の先生から厳しいレッスンを受ける英才教育の積み重ねがなければ、全国コンクールで入賞するレベルにはまず到達できない。

ベースにしても、趣味でかき鳴らしバンドを組む程度ならともかく、テクニックを磨き、腕利きのライバル達と競って全国2位を獲得するのは、並大抵の努力では不可能だ。

その二つを並行してやり遂げてしまう。

さらに楽器演奏のみならず、作曲やアレンジの手法も学び、オリジナリティに富む楽曲を作る実践も続ける。

ジャンルを超えて、ストイックに音楽を探求する姿勢は、現在、King Gnu が標榜する「トーキョー・ニュー・ミクスチュア・スタイル」へと繋がっている。

そして、そのスタイルを支える基盤となっているのが、東京藝大受験に向け培われたアカデミックな音楽の素養だ。

狭き門の東京藝大チェロ科に入学、小澤征爾と共演(最近のチェロ演奏動画あり)

東京藝大にはチェロ専攻で入学した。

毎年、全国の同世代トップクラスのチェリストが5〜6名しか合格できない狭き門だ。

藝大受験では、チェロの実技試験に加え、副科ピアノの実技と音楽に関する基礎能力検査(聴音・楽典・新曲視唱・リズム課題)が課される。

たとえば副科ピアノは、モーツァルトやベートーヴェンのピアノソナタなどが入試の課題曲になる。

だから、ロックやボッブスジャンルのキーボードや電子ピアノの演奏は、藝大受験を経てきた常田さんと井口さんなら難なくこなせる。

また、聴音(耳で聞いた旋律や和音を楽譜に書き記す)、新曲視唱(新しくもらった楽譜を見て、練習せずにその場で正確に歌唱する)、楽典(楽譜を読み書きするために必要な理論・ルールを修得する)についても、藝大受験のためには専門の先生に師事して学ぶ必要がある。

すでに藝大に入学した時点で、高いレベルの音楽性と表現力、クリエイティブな演奏活動の基礎が出来上がっていると言ってもよい。

もちろんアーティストになるには、アカデミックな音楽教育は必須条件ではない。

しかし、音楽的基礎のない我流の知見や技術に拠る場合に比べれば、独創性を生み出すための引き出しの数や深さの点で違いを生むのは明らかだろう。

作曲もインスピレーションに頼ることはなく、どちらかというと数学に近いロジックで行っていると常田さんは語る。

そして、ストラヴィンスキーやプロコフィエフの音楽を探求するだけでなく、そこにサイケデリックなロックサウンドとの共通性を見い出す。

それは、クラシックとロックのいずれの道でも真摯に妥協せず進んできた常田さんならではの、音楽家としての独自の境地を示している。

2011年には、各楽器の国内トップクラスの若手奏者の中からオーディションで選抜され「小澤国際室内楽アカデミー奥志賀」にチェリストとして参加し、小澤征爾氏の指揮でモーツァルトやチャイコフスキーを演奏した。

新曲? 最近のチェロ演奏動画
(常田さんの Instagram より)

J-POP 革命前夜 その先にあるもの

クラシック音楽で培った土壌にしっかりと根をはりつつ、ロックや R&B での楽器プレイとアレンジ手法も究め、今、創造の枝葉を自由に拡げて、ジャンルの垣根を取り払い、融合し、さらにジャンルの概念自体をも超えていく。

あえて J-POP の領域に身を置いた King Gnu だが、見据える先にあるものは J-POP 音楽の革新にとどまらない。

常田さんは、音楽と 3D 映像のミックスにより今までにないライブ体験を提示する millennium parade(ミレニアム・パレード)というプロジェクトも主宰し、King Gnu と並行して精力的な創作活動とライブパフォーマンスを展開している。

2019年12月には大阪と東京でのライブを成功させ、ファッションブランド「DIOR(ディオール)」とのコラボレーションを実現。

そして、2020年春に NETFLIX が全世界独占配信する「攻殻機動隊」シリーズ最新作 『攻殻機動隊SAC_2045』のオープニング・テーマ曲を担当することが決まった。

日本のボッブネスの世界戦略をも構想する異才から、この先どんなスリリングな作品が放たれるのか。

『Sympa』からわずか1年後にリリースされた King Gnu のニューアルバム『CEREMONY』。

CEREMONY (初回生産限定盤) (Blu-ray Disc付)

収録された12曲のうち、TVと映画の主題歌が2曲、TVCM 曲が5曲を占める。

マニアックなサウンド構造でありながら同時に人々を魅了してやまないキラーチューンが、これでもかと詰め込まれたこの渾身の傑作アルバムは、リリース1週間で25万枚のセールスを記録、「Billboard JAPAN Top Albums Sales」で首位を獲得した。

2020年2月29日からは初のアリーナ公演を含む全国ツアー<King Gnu Live Tour 2020 “CEREMONY”>がスタートする。

もはやヌーの群れの増殖は、誰にも止められない。

【関連記事】
King Gnu(キングヌー)は J-POP 最強バンド その4つの理由

【全曲レビュー】『CEREMONY』

01. 開会式

インストゥルメンタル
人々のざわめき、管弦楽の不穏な響きから、交響的で勇壮なファンファーレが開会を告げる。

02. どろん

映画「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」主題歌
歯切れ良いボーカルユニゾン、ハードロックスタイルのドラムとベースにホーンセクションが共鳴する。ベースが低弦ソロに入った瞬間にグランジ感が一気に増し、犬の鳴き声(?)まで聞こえる。混沌からカタルシスへ。

03. Teenager Forever

ソニー「ノイキャンイヤホン」TVCM ソング
ラウドロック的アプローチだが、コントロールされたボーカルのシャウト、絶妙なアコースティックギター、サビ部分のベースの凄まじいうねり感など、 King Gnu の演奏力の高さを思い知らされる。
1/17 の TV番組(Mステ)では完全に振り切った怒涛のライブパフォーマンスを披露し、スタジオと視聴者の度肝を抜いた。

04. ユーモア

「ロマンシング サガ」完全新作、『ロマンシング サガ リ・ユニバース』 1周年記念 TVCMソング
ミニマルな打ち込みビートに乗ってグルーヴする、キャッチーなブラックミュージック系のメロウナンバー。クラップ、コーラス、マリンバ、アコースティックギターなどが彩りを添え、洗練されたアレンジに心がほどけていく。

05. 白日

日本テレビ系土曜ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」主題歌
言わずと知れた傑作中の傑作。国民的大ヒットとなった極上のファンキーバラード。アルバムの中の1曲として聴くと、楽曲・ボーカル・演奏・アレンジなどあらゆる面で、その素晴らしさを再認識できる。

06. 幕間

インストゥルメンタル
ジャズのビッグバンドの響き。ミュートホーンのわななきに、人々の歓声が入り交じりつつ、第2幕へ。

07. 飛行艇

ANA 国内版「ひとには翼がある」篇 TVCMソング
4つ打ちビートの地鳴りでスタジアムを揺るがす、大合唱必至の扇動的ロックチューン。ラグビーW杯のスタジアムでかかると観客の受けがよくウエーブが起こった。メジャーリーガー前田健太投手が登場曲に採用、スピードスケートの小平奈緒選手もお気に入りと、アスリートのモチベーションも高める曲。

08. 小さな惑星

Honda VEZEL「PLAY VEZEL 昼夜」篇 TVCMソング
ドライブする軽快なメロディーラインだが、そこは King Gnu、決してひと筋縄ではいかない。シンコペーティッドな刻み、歪んだベース音、グランジ感満載のドラム。ギターソロも予期せぬ方向へと跳梁する。スタイルや枠組みに片時も収まらない「上質な奔放さ」こそが King Gnu の真骨頂だ。

09. Overflow

家入レオさんへの提供曲をセルフカバー
バウンスフィーリングにあふれるファンキーチューン。腰の据わったベースラインのリフレイン、カッティングギターも加わった切れ味の良いビートに、ソウルフルなボーカルが心地よくはねる。ブレイクからサビへのキャッチーさが秀逸だ。

10. 傘

ブルボン「アルフォート」TVCMソング
エクスペリメンタルで不思議な味わいを持つ曲。歌謡性をはらんだメロディーがリリカルに流れる一方で、特異な転調が繰り返される。心情のメタモルフォーゼ(変容)を鮮やかに浮き彫りにする曲。

11. 壇上

このアルバムで唯一の非タイアップのボーカル曲。アルバムの締めくくりとして最後に作られた。
常田さんが「現在の思いをすべて詰め込んだ」と語るバラード。自らボーカルソロを務め、ピアノも弾き、兄の俊太郎さんと共にストリングスも担当した。ここでも絶妙にしつらえた転調がアンビバレントで複雑な心境を際立たせる。

12. 閉会式

インストゥルメンタル
常田さんが東京藝大時代の18、19歳の頃にプレイしたチェロ独奏をフィーチャー。内省的な終幕は次なるステージへの静かな闘志の表明とも読める。

全曲をダイジェスト試聴
King Gnu 3rd ALBUM 「 CEREMONY 」Teaser Movie


CEREMONY (初回生産限定盤) (Blu-ray Disc付)


Sympa(通常盤)

兄は東大卒 江藤俊哉ヴァイオリンコンクール第3位

ちなみに、兄の常田俊太郎さんは、「第9回(2004年)江藤俊哉ヴァイオリンコンクール」ジュニア・アーティスト部門で第3位に入賞。

東京大学工学部卒業後、戦略コンサルティング会社を経て、株式会社ユートニックを設立し、代表取締役に就任した。

会社経営の傍ら、King Gnu と millennium parade の楽曲にヴァイオリニストとして参加している。

【参照サイト】
「鈴木鎮一記念館」
「伊那谷ねっと」
「最強プレイヤーズコンテスト2009」
「日本クラシック音楽コンクール」
「小澤国際室内楽アカデミー奥志賀」
「ルネこだいら(小平市民文化会館)」
「音楽主義」

【最新記事】“ブレーキは折れちまってんだ” 進撃の巨ヌー、爆走中(2020/3/16)

2020年に入って、King Gnu(キングヌー) の快進撃が止まらない。

まるで、彼らのロックスピリットを象徴するアイコン曲「Flash!!!」の歌詞のように、もはやブレーキは折れてしまって、思いのままに、猛スピードで駆け抜けていく。

それも、下り坂ではなく、テッペンをめざす上り坂を、まっしぐらに爆走中だ。

ニューアルバム『CEREMONY』は、発売されるや驚異的なセールスを記録。

各音楽雑誌から AERA までが、こぞって表紙・巻頭特集で取り上げた。

テレビでは、1/17 に Mステ(テレ朝)、1/18 にバズリズム02(日テレ)、2/9 に Love music(フジ)、2/14 に再び Mステ、2/15 にシブヤノオト(NHK)で、次々と圧巻のスタジオライブを敢行。

2/23 には情熱大陸(TBS)に出演したが、メンバー4人がビートルズの All You Need Is Love を車の中で合唱するシーンはとても印象的だった。

そして、MV は2曲をリリース。

Teenager Forever | King Gnu

どろん | King Gnu

「Teenager Forever」は成功者のはっちゃけぶりをリアルに活写し、「どろん」は眼がバンドに憑依する不気味な世界観を呈示してみせた。

どちらも突き抜けたアート感覚が冴える映像で、楽曲と見事にシンクロしていて、魅了される。

常田さんの別のプロジェクト(millennium parade)とソロ活動も、軌を一にして新たなステージへと駆け上った。

2020年春にNETFLIX が全世界に独占配信する「攻殻機動隊」シリーズ最新作のテーマ曲の担当と、2/4 の NYコレクションでのチェロ独奏。

『攻殻機動隊SAC_2045』のオープニング・テーマ曲「Fly with me」は、4/22 に音楽配信され、millennium parade 初の CD シングルとしてもリリースされる。

また、NYコレクションで初披露された常田さんの斬新な現代音楽モードの楽曲についてもミニアルバム化が予定されているという。

“進撃の巨ヌー” は、増殖し続ける民をひき連れて、一体どこまで突っ走るのか。

2/29 からの初のアリーナ公演を含む全国ツアーは、残念ながら新型コロナウイルスの影響で福岡・大阪・東京の計4公演が中止となったが(※)、現在の King Gnu の観客動員力を考えれば、ドームやスタジアムでの単独公演も、もう手の届くところに来ているのは間違いない。
※2/29 のマリンメッセ福岡公演は 5/5 の振替実施が決定

King Gnu 公式サイト

King Gnu(キングヌー)は J-POP 最強バンド その4つの理由

【芸大入試のリアル】偏差値 “ありえね” 受験常識通じぬ「異界」

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「美校」入試は予備校全盛、浪人率7割

東京・池袋にある「すいどーばた美術学院」。

2020年度の東京藝術大学美術学部合格者数は81名で、6年連続で全国トップ。

専攻別でも油画・彫刻・工芸で全国第1位と、ダントツの合格実績を誇っている。

ところが、そのうちの現役合格者数を見てみると、81名中たったの19名。

全体の2割ほどにすぎない。

ためしに、東京藝大が2020年度受験生向けの「大学案内」で公表しているデータを見てみよう。

これによれば、美術学部の2019年度入学者231名のうち、現役は全体の34.6%。

1浪が28.1%、2浪が17.3%、3浪が9.1%、4浪以上が8.7%、その他大検等が2.2%という分布状況になっている。

現役は約3割程度。

残り7割が浪人で、そのうち3浪以上の「多浪」も2割ほどいることになる。

他の国公立大学、例えば東京大学は現役が約7割で浪人が3割。東京藝大とはまったく逆で、現役が明らかに優勢だ。

浪人率が圧倒的に高い東京藝大(以下藝大)美術学部の入試がいかに「ありえない」特異な世界かがわかるだろう。

かくして、藝大美術学部受験生は、「すいどーばた」や「新美」(新宿美術学院)、「御茶美」(御茶の水美術学院)など、藝大合格実績をウリにする美術予備校に通い、競争率10倍の超難関に多浪覚悟で挑み続ける。

東京藝大卒の漫画家が描く 藝大をめざして青春を燃やすスポ根受験物語


美術なんて全く知らなかった高校生の主人公が、ふとしたきっかけから東京藝術大学の絵画科を目指す
舞台となる美術予備校のモデルは新美(新宿美術学院)
著者の山口つばさ氏は都立芸術高校から現役で東京藝大油画科に合格

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)
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photo 東京藝術大学美術館 by Wiiii

「音校」入試は門下・個人レッスン全盛 現役率8割

藝大美術学部入学者に出身校を問えば、ほぼ全員が高校名ではなく美術予備校名を答えると言われるほど受験産業ドップリ状態の「美校」入試に対して、さて藝大のもう一方の入試、「音校」入試はどのような状況に置かれているのだろうか?
※藝大内ではかつての東京美術学校と東京音楽学校の伝統から、美術学部を「美校」、音楽学部を「音校」と呼び習わす。

そこは「美校」とはまさに真逆で、受験予備校はほぼ皆無。

個人レッスンのみが幅を利かせる、これも世間一般から見たら「ありえない」世界が展開している。

「音校」をめざす場合は、幼少期からヴァイオリンやピアノの個人レッスンをスタートさせ、中学生になるまでには、藝大の教授陣(現・元)あるいは藝大出身の指導者に師事する。

そして、そのうちのトップ層はまず、1クラス(約40名)しか募集しない藝大の附属高校(東京藝術大学音楽学部附属音楽高校)を受験する。

【芸高】 平成26年度 東京藝大附属高入試を振り返る

「音校」入試においても、音楽専門予備校(ソルフェージュなどの受験副教科を中心に指導)は一部存在する。

しかし、実質的に入試合否の鍵を握っているのは、幼少期からの厳しい個人レッスンによって培われてきた専攻実技の力だ。

だから、「音校」入試は、「美校」入試とは正反対で、現役が優勢。2019年度入学者の現役率は8割に達している。

実技の力は、幼少期からの長年の積み重ねにより形成されており、1年や2年浪人しても、その水準を飛躍的に高めることは難しい。

結果として、現役で受かるべき実力にある人が受かるという、現役優位の入試となっているのだ。
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photo 東京芸術大学 赤レンガ1号館 by 663highland

無意味な藝大音楽学部の偏差値データ

ほぼ「専攻実技がすべて」の藝大入試。

東大や京大などの一般大学の入試情報を扱う受験予備校が提供している偏差値データは、あくまでもセンター試験(2021年からは共通テスト)や学科試験に関するもの。

当然ながら実技重視の藝大入試においては、あってないようなものに等しい。

ためしに、「ベネッセ」 が提供している藝大音楽学部の難易度(偏差値)を見てみよう。

音楽環境創造科60、楽理科59、器楽科・声楽科53、作曲科・指揮科・邦楽科52

音楽環境創造科と楽理科は、センター試験3教科に、個別学力試験で学科や小論文を課し、それらの総合判定で合否が決まるという、一般の大学と似た方式を取っている。(楽理科には聴音書き取り等の実技もある)

一方、器楽科などでは、センター試験2教科(国語・英語)を課すものの、個別学力試験は実技のみで、それが重視され、センター試験の成績は最終判定時に用いるのみである。
(※但し2020年の募集要項には、センター試験についてもその年度の基準点が存在し、それを下回った場合は不合格になるとの記述が見られる。)

受験産業が提供する偏差値データは、合否調査にセンターリサーチや模試の結果等を加えて算出されるものだ。

そもそも個別試験の実技が重視される藝大音楽学部の入試においては、教科の成績のみによって設定されたそのような合否ラインはまったく意味を持たないことになる。

東京芸術大学 (2020年版大学入試シリーズ)

共通テストでも6割確保が目安か?

とはいえ、やはり気になるのは、藝大音楽学部志望者はセンター試験で一体何点くらい取っているのか、という点だろう。

2021年1月から、センター試験に代わって大学入学共通テストが実施されるが、ここでは過去のデータ蓄積があるセンター試験の得点率を概観しつつ、共通テストの得点率を予想してみることにする。

以下「スタディサプリ」 が提供するセンター得点率のデータを見てみよう。

音楽環境創造科80%、楽理科80%、作曲科72%、指揮科・邦楽科62%、器楽科61%、声楽科57%

データ自体があったとしても、わずかな数に違いないが、音環と楽理以外の科では、合格可能性が50%であるセンター試験の得点率は、ほぼ6割〜6割5分程度と推定される。
(※収集データが少ないので、センター試験が突出してできた人がいた年は、一部の科では得点率が跳ね上がるという現象が生じがちだ。)

以上より共通テストでも同じくらいの得点率が想定できるだろう。

無論、共通テストで6割以上、さらには7割・8割取ったところで、実技重視の藝大入試の合否に決定的な意味を持つことはないが、一方で2割・3割しか取れなかった場合は、最終判定に向けて安穏としていられなくなることはわかる。

次回から、集められ得る限りの公表データを用い、また受験経験者の口承伝承の記録も参考にしつつ、さらに深く藝大入試のリアル(現実)に迫っていく。

シリーズ【芸大入試のリアル】

【芸大入試のリアル②】「現実倍率」と「黒ひげ危機一髪」

【芸大入試のリアル③】専攻実技 4つの “常ならぬ事態”

『最後の秘境 東京藝大-天才たちのカオスな日常-』(新潮社)がコミック化

藝大生自身にとってはいたって普通、しかし世間から見たら秘境としか言いようがない世界。それを目の当たりにすれば、一般の読者は驚き、あきれ、でも最後はその真剣な姿に心を打たれるに違いない。

著者の二宮敦人氏はミステリー作家、奥さんは現役の「美校生」(東京藝大美術学部彫刻科)。

深夜に半紙で自分の型をとったり、藝大の生協で買ったというガスマスクをキッチンにポンと置くわが妻…

奥さんに導かれるように、謎の秘境に足を踏み入れる著者。「美校」と「音校」の全学科の学生にインタビューを敢行し、彼らの制作・演奏現場にも潜入した。

そんなベストセラー書籍がついにコミックで登場!


最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常 1巻: バンチコミックス


最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常― 2巻: バンチコミックス


最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―(新潮文庫)

効く言葉

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159_640px-Hermitage1photo by Yaropolk

 現状は文化やクリエイティブな業界に大きな負荷がかかっています。特に小さな文化施設とフリーランスのアーティストは極度の困難に直面する可能性があります。文化は良い時にのみ与えられる贅沢ではありません。暫くの間、文化なしで済まさなければならない状況に置かれたとしたら、その喪失感の大きさはどれほどのものでしょうか。私は彼らを失望させません。私たちは彼らの思いを受け止め、文化とクリエイティブのセクターのために支援と財政面でのサポートを確実に実行するため力を尽くします。

-モニカ・グリュッタース(ドイツ連邦首相府文化メディア担当国務大臣)(ドイツ連邦政府公式サイト

 才能は内なる可能性を表す「風」。創造性のスキルはその「風」を受けて、芸術という船を進める「帆」。「帆」がなければ、才能という「風」は吹き去っていくだけで、どこにも連れて行ってはくれない。

-ジェラルド・クリックスタイン( <著者に聞く> ジェラルド・クリックスタイン氏インタビュー 『成功する音楽家の新習慣』が演奏家たちの熱い支持を集める理由


新版 音楽家の名言~あなたの演奏を変える気づきのメッセージ~

 ヴュータンは壮大なスタイルで書きました。その音楽はどこをとっても豊かでよく響くものです。自分のヴァイオリンをよく鳴らそうと思うなら必ずヴュータンを弾いてほしいですね。

-ウジェーヌ・イザイ(『ヴァイオリン・マスタリー 名演奏家24人のメッセージ』 全音楽譜出版社 P84)

 弦だとか弓の毛だとか、そんなことを意識しているようじゃだめなんだ。ヴァイオリンは弾くものじゃなく、歌うものだ。

-レオポルド・アウアー(『ヴァイオリン・マスタリー 名演奏家24人のメッセージ』 全音楽譜出版社 P31)

 ヨーロッパで暮し始めたころには、バイオリニストとして生きる覚悟を決めました。もう親からの仕送りもありません。シゲティのレッスン代はツケにしてもらい、コンクールに出て賞金を得るとまとめて支払い、なんとかしのぎました。

-前橋汀子(「君たちの時代に 先輩からの手紙/174 バイオリニスト・前橋汀子さん/下」-2016年4月23日付「毎日小学生新聞」

 (チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲のレッスンで)チャイコフスキーのオペラ『エフゲニー・オネーギン』は見ましたか? 見ないと弾けませんよ。

-ミハイル・ヴァイマン(「君たちの時代に 先輩からの手紙/173 バイオリニスト・前橋汀子さん/中」-2016年4月9日付「毎日小学生新聞」

 ニューヨーク・フィルの弦楽器セクションは特別な響きを持っています。我々のホールは管楽器にフィットしているので、弦にはハードワークが求められます。合奏に適合しつつも、際立った音を持つ奏者が求められています。

-グレン・ディクテロウ“What makes a concertmaster special?”-“The Strad”

149_Acropolis_Athens_in_2004photo by Harrieta171

 シベリウスの協奏曲はもう何百回と弾いていますが、今なお私は挑戦し続けています。これで良いのか悪いのかをいつも考え続けています。

-レオニダス・カヴァコス(“‘I’m exhausted by the time I reach the Sibelius third movement,’ says violinist Leonidas Kavakos”-“The Strad”

 このヴァイオリンは私が子供の頃にレコードで聴いたグリュミオーの声を持っています。まるで私がこの楽器と共に成長してきたかのように、グリュミオーは私の血に、私の耳に、何らかの形で痕跡をとどめてきたのです。

-フランク・ペーター・ツィンマーマン(“Frank Peter Zimmermann receives ‘General Dupont’, ‘Grumiaux’ Stradivarius on long-term loan”-“The Strad”

 バッハは演奏家に完璧な芸術的要素と技術的精巧を求める楽譜を残している。彼が意図するところには至らないまでも、30年以上、人前で演奏を続けてきた私にとって、今が全曲録音に挑戦するときだと感じた。

-五嶋みどり(「バッハと私の経験が糸になり、大きな布に」 五嶋みどり、「無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ」全曲録音発表-2016年1月15日付「産経ニュース」)

 マスタークラスは新たな先生を探すのには役立つが、あまりに多く取りすぎると生徒は混乱してしまう。

-パヴェル・ヴェルニコフ(“Playing in too many masterclasses can be confusing for the student, says violinist Pavel Vernikov”-“The Strad”

 いいかね、君はシャツにアイロンをあてているのではなく、楽器から音を引き出そうとしているのだよ。楽器に音を押し込んでどうするんだい?

-アーロン・ロザンド(“‘Every bow movement should be calculated,’ says violinist Aaron Rosand”-“The Strad”


新版 音楽家の名言~あなたの演奏を変える気づきのメッセージ~

143_640px-Waidhofen_Ybbs.Innenstadt_von_Zeller_Hochbrückephoto by Martin Hirsch

 以前、日本で公開レッスンをしたとき、若い学生がブラームスのソナタの1番を弾きました。でも、ただ音符を弾いているだけ。音楽になっていないのです。ブラームスは、この曲をオーストリア南部のケルンテン州にあるベルター湖畔で作曲しています。朝もやがかかったり、太陽の光が差し込んだりする風景のなかで生まれた曲だと一生懸命に説明するのですが、なかなか伝わらない。そういう場所や光景を知らなければイメージできませんし、そういう人にわかってもらうのは難しいですね。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:8 64歳」-2015年6月17日付「朝日新聞」)

 コンクリートに囲まれて育ち、人工的な経験ばかりした子には自然な演奏ができません。それは彼らの演奏を聴くとよくわかります。やはり自然と触れ合い、感じ、見聞きするなかで、いろんな感覚を養ってほしい。その経験は必ず生きます。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:8 64歳」-2015年6月17日付「朝日新聞」)

 (ウィーン国立音大で教えている生徒は10人ほど) 残念ですが、学生たちはスコアをなかなか見ないんですよ。曲の全体像をつかもうとしない。自分のパート譜は一生懸命勉強してもね。もちろん値段も高いし、経済的に厳しい。だからこそ、私の持っているスコアを見てほしい。スコアはとても大事です。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:8 64歳」-2015年6月17日付「朝日新聞」)

 (1970年の第4回チャイコフスキー国際コンクールは)出場した顔ぶれがすごかった。1位はギドン・クレーメルで、2位は指揮者になったウラジーミル・スピバコフと、藤川真弓。藤川さんは素晴らしい演奏でした。とにかく、すごい面々が本選まで進んでいましたから。私は最初でダメでした。でも最後まで会場に残って、ほかの人の演奏を聴きましたよ。コンクールはこの1回だけ。翌年、ウィーン・フィルのツアーで3週間旧ソ連へ行ったとき、コンクールで知り合った事務局の女性とモスクワで偶然再会したんです。「えっ、また来たの? 戻ってきたのね」と驚いていました。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:4 64歳」-2015年6月11日付「朝日新聞」)

 安いバイオリンを買ってもらい、まず父から習い始めました。たぶん2千円くらいのね。そのあと、地元のアマチュア楽団のコンサートマスターだった先生に付き、13歳くらいまで教えてもらいました。その先生に「ウィーンへ行きなさい」と勧められ、看護師だった父が働いていた病院の先生のつてを頼って、ウィーン国立音楽アカデミー(いまのウィーン国立音楽大学)のフランツ・サモヒル先生を紹介していただきました。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:2 64歳」-2015年6月9日付「朝日新聞」)

 慣れた音を再現するのでなく、あたかも今、曲が生まれているかのように、驚きながら弾きましょう。それが演奏。

-庄司紗矢香(「Interview:庄司紗矢香 バイオリンの心伝える 桐朋学園大「特命教授」として特別レッスン」

145_640px-Torino-pophoto by Giuseppe zeta

 私は工場生産のヴァイオリンで活動を始め、1956年のジュネーヴのコンクールに優勝した。楽器は平凡なドイツ製のヴァイオリンで、アマチュア演奏家であった私の父の楽器だったが、私にはそれしかなかったし、練習をしたのもその楽器だった。コンクールで優勝する妨げにはならなかった。

-サルヴァトーレ・アッカルド(『アッカルド ヴァイオリンを語る』音楽之友社)

 私は生徒からコンクールに参加する相談を受けると、それをあまり重要視しないなら、あまりそれにこだわらないなら、という条件をつけて、たいてい参加を勧める。コンクールだって正しい考え方で臨めば、非常によい経験になるのである。コンクールは人前で演奏する機会を提供してくれる。そして人前で演奏することは、音楽家の成長・成熟にとても大事なことなのである。

-サルヴァトーレ・アッカルド(『アッカルド ヴァイオリンを語る』音楽之友社 P41)

 うまくやろうなどという考えはどうでもよい。その瞬間、上手に弾こうなんて思うな。ただ弾け!

-イヴリー・ギトリス(『イヴリー・ギトリス ザ・ヴァイオリニスト』春秋社 P186)

 僕の生活条件として、なんでもないことは流行に従う。重大なことは道徳に従う。芸術のことは自分に従う。

-小津安二郎(米谷紳之介著『老いの流儀 小津安二郎の言葉』星雲社 P46)

 同じバイオリニストでも、“バイオリンが上手い” で終わる人と、巨匠にまで登りつめる人がいます。その違いは野心にあります。要は、巨匠になるために必要な時間、バイオリンの練習を続けたいかどうかなのです。

-ジェリー・ヤン(「あの有名人たちが卒業式で学生に語っていたこと」)

135_640px-ZW17_DSC0182photo by Wistula

 (国際コンクールは) たしかに一番良い演奏家がいつも受賞するとは限らないでしょう。なぜかと申しますと、コンクールを勝ちぬくことに適していない性格の音楽家もいるからです。しかしそれにもかかわらず、コンクールというのは、やはり音楽家のために社会的な役割を果たしていると、私は思います。

-ヘンリク・シェリング(千歳八郎著『大ヴァイオリニストがあなたに伝えたいこと』春秋社 P160)

 一流の指揮者に必要な能力とは、末席の最も未熟な奏者をも、まるで彼らの各楽器のほんのわずかな伴奏部分の演奏によって全体の出来栄えが決まるかのように演奏させる能力である。

-ピーター・ドラッカー(山岸淳子著『ドラッカーとオーケストラの組織論』PHP新書 P39)

 バッハを弾くヴァイオリニストが、ただ音色の効果だけを狙って、ロマン派風のG線の運指に安住していたり、対位法の特長を無視して声部を混同していたり、絶対にバッハにはありえないロマンティックな効果を生み出していたりすれば、たとえテクニックがいかに秀逸であろうとも、そのヴァイオリニストはまちがった道に踏み入ったのだと判断するしかない。

-ユーディ・メニューイン(『ヴァイオリンを愛する友へ』音楽之友社)

 ヴァイオリンを買うときは、四本の弦の音が揃っていて音の出しやすい、音程の切れのよい楽器で、耳につかないパリッとした音の出るものを選ぶと大体間違いないようである。

-佐々木庸一(『新版 魔のヴァイオリン』音楽之友社 P192)

 私は独力で本能を頼りにバッハの音楽と向きあった。そこから最大限に学ぼうと試み、ヴァイオリンで《平均律クラヴィーア曲集》を弾いてみることさえした。

-ナタン・ミルシテイン (ジャン=ミシェル・モルク著『偉大なるヴァイオリニストたち』 ヤマハミュージックメディア P141)

127_640px-Lateral_view_of_the_Riga_Nativity_of_Christ_Orthodox_Cathedralphoto by Tiago Fioreze

 物心ついた頃からずっと、私は自分にとってエモーショナルな意味を感じられる音楽を弾こうとしてきました。演奏回数が多い曲は、聴衆に気に入られるように弾かねばという現象の犠牲になっています。私にとって、音楽は譜面と演奏者のあいだだけの事柄なのです。

-ギドン・クレーメル(ジャン=ミシェル・モルク著『偉大なるヴァイオリニストたち』 ヤマハミュージックメディア P343)

 十七歳から三十歳の間のどこにでも危機的状態が起こり得ると思う。年長者の敷いたレールの上に乗っていたのが、その同じ道を走り続けるかどうか、自分で決心しなければならない年代であるからです。それは分岐点であり、みんなが通過しなければならないと思います。

-ドロシー・ディレイ(『天才を育てる』音楽之友社 P232)

 ハイフェッツが優れたヴァイオリニストだったとすると、シゲティは優れた音楽家であり、シゲティを支持した聴衆は、見事なヴァイオリン演奏と、ヴァイオリンで奏でる見事な音楽との違いを見わけることができたのだ。

マイケル・スタインバーグ (ジャン=ミシェル・モルク著『偉大なるヴァイオリニストたち』 ヤマハミュージックメディア P84)

 ひとつ大きな深呼吸をしましょう。気がついた時に深呼吸をするように癖をつけます。緊張がドを過ぎないように深呼吸をするのです。ドを過ぎる場合には大抵呼吸が浅くなっています。そして、酸素が脳まで行き渡らなくなっているのです。

-千住真理子(『ヴァイオリニスト 20の哲学』ヤマハミュージックメディア P83)

 世の中にはごまんと楽器があり、「無名でもびっくりするほどチャーミングな音が出る楽器」を発見することもあります。人が嫌っている楽器も、なぜか自分が弾くと良い音が出る、なんていうこともあります。ですから、楽器は絶対的なものではなく、まさに弾き手との相性なのです。

-千住真理子(『ヴァイオリニスト 20の哲学』ヤマハミュージックメディア P108-109)

117_640px-Central_part_of_Tbilisiphoto by Dmitry Gerasimov

 宗教心があろうとなかろうと、確かに何ものかの存在を信じさせてくれる。それがバッハの音楽です。

-リサ・バティアシュヴィリ(“Politics Is Personal, and Professional”

 コンクールの場で自身の実力が発揮されなくても、持ち味や個性が受け入れられなくても、審査員に評価されなくても、音楽のすばらしさを追い続けてください。それですべての道が閉ざされたわけではないからです。あなたにないものを、ほかの人が持っていたからといって、あなたの良いところが失われることはありません。あなたには、ほかの人が持っていないような良いところがきっとあるはずなのです。

-千住真理子(『ヴァイオリニスト 20の哲学』ヤマハミュージックメディア P14-15)

 十四時間さらった翌日は、筋肉が疲れてはいますが、明らかにテクニックが身についています。指の回りが良くなり、テクニックの冴えも出てきます。音は磨かれたように艶が出てきて、細かくて速い音符が自分にはゆっくりはっきり聴こえてくるようになります。

-千住真理子(『ヴァイオリニスト 20の哲学』ヤマハミュージックメディア P21)

 興味がそそられることはなんでも深入りしてみること。それを大切にしなさい。再発見し、提供し、どんなことをしても、それがもう一度花開くよう努力することです。

-ジャクリーヌ・デュ・プレ(檜山乃武著 『音楽家の名言3』ヤマハミュージックメディア P32)

「音楽のための呼吸」を習得すれば、明らかに音が変わる

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4小節・4小節・8小節のルールは例外も多々ありますが、フレージングの公式とも呼べる大原則です。

ところが、これを頭ではわかっていても、実際には呼吸ができていないために、曲が細切れになってしまうことが起こりがちです。

呼吸が「細切れ」になるから、フレージングも「細切れ」になってしまう

呼吸を教える場合に考慮しなければならないのは、身体的な条件が整ったかどうか、平たく言えば息が取れるかどうかです。

子供は、極端に言えば、一弓ごとに「吸う」「吐く」を繰り返しているような状態です。

そこで、弓の返しで音が切れないように集中することを教えると、今度は息を止めてしまいます。

また、息継ぎを教えたとしても、殆どは息を吸ったままで吐くことをせず、死にそうになりながらとりあえず息の続く限り弾いて、適当なところであわてて吐くということになってしまいがちです。

しかしそのようにあわてて吐いても、肺に残った空気をきちんと吐き切っていませんから、今度は吸うときに浅くしか吸えないことになります。

吸ったまましばらく弾いた後は、あわてて吐き、浅く吸い、それを繰り返していく・・・

こうして呼吸が「細切れ」になることによって、フレーズもどんどん「細切れ」になってしまいます。

「学生音コン」の小学校の部でさえ、なんとなく息苦しく感じられる演奏が多いのはこのためです。

「音楽のための呼吸」には地道な訓練が必要

ソルフェージュを習っていれば、実際に歌わせる指導が入ってきますから、「吸う」「吐く」のコツは飲み込めそうに思えます。

しかし、いざヴァイオリンを弾きながら音楽に合わせて「瞬間的に吸う」「長い息を吐く」といった呼吸を行うとなると、そのためには相当の訓練を要することになります。

コンクールばかり追いかけるのではなく、腰を据えて取り組む必要があるのは、こういった課題だと言えるでしょう。

まず、「生きるための呼吸」と「音楽のための呼吸」をはっきりと区別させなければなりません。

音楽が始まったら、それが終わるまでは、呼吸は徹頭徹尾、曲のためにしなければなりません。

曲の始まりでとりあえず目一杯息を取ってしまうのは小学生にありがちですが、実は息の取り方はピアノで始まるのか、フォルテで始まるのかで異なってきます。

モーツァルトでは酸欠状態になりかねない

モーツァルトのように、フレージングの「終わり」が「始まり」でもあるような曲の場合は、忠実に息を取っていたのでは酸欠状態に陥ってしまいますから、ブレスの種類とその入れ所を事前にしっかりと考えておくべきです。

曲を手にしたら形式、曲想記号などを考えながら「速い息」「遅い息」「深い息」「浅い息」の配置を検討する必要があります。

「どうもこの曲は自分に合わない」といった場合は、実は曲にあったブレスが取れていないケースが多いと言えます。

「腹式呼吸」の必要性と「脱力」

また、短く吸い、長々と吐き出すには、肩を上げる胸式呼吸では不十分です。

トレーニングのひとつとして、うつぶせに寝て、顔を横に向け、3秒以内で吸い、20秒くらいで吐き出す方法があります。

吸ったときに瞬時におなかの部分が床を押す感覚が感じ取られるかどうか。これは腹筋の強化にも繋がります。

さらに、長い息を吐きながらの演奏は脱力にもつながります。

「音楽のための呼吸」ができるようになると、それまでいくらやかましく言っても抜けなかった力が抜け、明らかに音が変わってきます。勿論、そこに至るまでには腕の筋肉、腹筋・背筋のトレーニングをエチュードと平行して行っておくことが必要ですが。

呼吸法をきちん学んでいくと、演奏はただ頭で考えているだけでは駄目で、全身を使う行為であることを再認識させられるでしょう。

補足

「学生音コン」の予選は2006年以来、小学校から高校まですべて無伴奏曲が課題曲となっている。ピアノ伴奏がないので、ステージ上の「呼吸音」が、客席に直に聞こえてくることがある。

小学校の部でも、きちんと呼吸しているコンテスタントがいる。

その演奏は概ね、フレージングの流れが良く、音も良い。

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photo credit: The Old Violin via photopin (license)

「全日本学生音楽コンクール」で入賞を目指すレベルとは?

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バッハの無伴奏ならここまで

バッハの無伴奏を例にとると、音高受験であれば声部の弾き分けまでは要求されませんが、「全日本学生音楽コンクール」(学生音コン)の中学校の部で入賞を目指すとなれば、話は別です。

ここはゼクエンツ(※1)で、ここからは機能和声(※2)だから音程のとり方も違ってくる、オルゲルプンクト(※3)の弾き方はこう、と細かく指導していくことになります。

本人に任せておくと、大抵は「そう変ではないがコンクールでは通用しない」レベルにしか到達しません。

「学生音コン」は、将来のソリストを選抜するためのコンクールであり、審査基準は一般人が聴いて感動するかどうかではなく、専門家が聴いてどうかのレベルに設定されています。

生まれつきバロックの書法が分かっている人間など一人もいませんから、ルールを教え込む必要があります。

まれに一を言えばぱっと分かる生徒もいますが、専門を目指すとなれば、ほぼ例外なく小さい頃から鬼のような?母親(父親でもいいのですが)がついて、みっちり勉強することになります。

※1)ゼクエンツ:あるフレーズを音の高さを変えながら反復させること。
※2)機能和声:和音にそれぞれ異なった機能・役割を持たせること。機能はトニック(主音)・ドミナント(属音)・サブドミナント(下属音)に分かれ、バッハの曲の旋律は機能和声を土台に書かれている場合が多い。
※3)オルゲルプンクト:低音で持続する音。例えば、バッハ:無伴奏パルティータなら第3番ガヴォットの後半等に特徴的に現れる。

予選通過の顔ぶれを見てレベルを上げることも

目標が「学生音コン」の予選通過ではなく、本選で入賞狙いとなると、生徒にも相当の負担がかかりますから、どこまで引っ張るかはその生徒のポテンシャルな能力との相談になるでしょう。

その年度の予選通過者の顔ぶれを見て、この子は○○門下だから本選はここまでは仕上げてくるだろうと予想し、レベルを二段階上げたりもします。

本人がついて来ることができれば結果が出る可能性がありますが、たとえリハーサルでいけると思っても、本番では何があるかわからないリスクは常に抱えることになります。

ソリスト志望者の大半は、このようなサイクルを1、2年単位で繰り返します。

指導者の側で「この生徒、この家庭なら行けるだろう」と思っても、見込み違いの場合もあります。

「専門教育」は「情操教育」とは異なる

原則15歳でデビュー、高校までで入賞歴がなければ切り捨てというポリシーの指導者もいるくらいで、そのような場合は門下生とその家族が金縛りにかかることもあり得ます。

あまりにひずみが強く出るようなら、「分からない子には教えない、かわいそうだから」という方針の先生に替わって、時機を見るのも一法でしょう。

野球では甲子園組でなくとも活躍しているプロ選手がいるのと同じで、本人の「時期」がまだ来ていないだけなのかもしれませんから。

いずれにしろ、「学生音コン」レベルのコンクールで結果を出そうと思ったら、「好きな音楽を通して豊かな人間性を」といったような情操教育とは別の、しかるべき覚悟を伴う専門教育の次元の話になってきます。

日本では、どうもこのまったく違う二つの教育が混同されがちで、「もって生まれた音楽性はそのままでどこでも通用する」「好きに弾かせてくれない先生が悪い」と信じきっている保護者も多いようです。

音楽そのものよりもサイドストーリーが売り物になる時代ですから、ある意味仕方のないことかもしれませんが。

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「全日本学生音楽コンクール」小学校の部は何年生で出場させる?

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「コンクール至上主義になることはよくないとは思いますが、緊張感の中で与えられた課題曲をどう弾きこなすのかという経験は、学生音コンなどに参加しないと中々味わえないと思います。コンクールを「緊張感の中、練習してきた技術と感性を使って曲を表現する場」と捉えることは間違っていますでしょうか?」

との質問に答えて。

ロンドの冒頭スピッカートを完璧に弾ける場合は・・・

小学生のうちは個人差が非常に激しいものです。

4年生くらいまでは、曲が終了すると共にそれまで教えたことも綺麗さっぱり忘れてしまう生徒が多いものです。

それでも6年生になれば、たいていはこちらの言わんとすることがかなり通じるようになり、コンクール直前の追い込みにも対応できる体力がついてきます。

出場するからには当然、その子なりの結果がついてきたほうが良いと思われます。

私見では、学生音コン小学校の部なら、分数ヴァイオリンではなくフルサイズで弾けるようになる6年生くらいまで待ちたいところです。

ただし、低学年ですでに天性のバネと和音に対する感覚を持っている生徒もおり、たとえば、3年生でモーツアルト=クライスラー:ロンド ト長調の冒頭スピッカートを完璧に弾けるような場合は、5年生で出そうと考えます。

「入賞するまで」と頑張りすぎるリスク

分数ヴァイオリンの場合、どうしても2分の1から上のサイズに移行する際に、左手が崩れます。

もちろん上手いと見られている生徒は、そこを何とかして弾いてしまいますが、できるだけ早い段階で左手を鍛え直さないと、骨が固まり始める中学生時代に限界が来てしまいます。

また、小学校の部あるいは中学校の部に入賞するまで、あるいは1位を取るまでと頑張って出し続けると、一握りの生徒を除いては、高校に入った途端に「燃え尽き症候群」にかかる場合が見受けられます。

そこから這い上がって、さらに日本音コン、あるいは国際コンクールを目指す道のりには、非常に厳しいものがあるでしょう。

特に生徒は大人が走らせると、本人の限界を超えていても素直にどこまでも走ろうとします。

子供の力量を見定めて、ストップを掛けるのは指導者の役割と言えるでしょう。

先を見据えた小学生段階の戦略

基本的には、小学生のうちは、まずセブシックとシュラディックで基礎固めをし、発表会ではやや難易度の高い曲に挑戦させる。

長い曲をまとめる構成力がついてきたら、6年生でコンクールに出して追い込まれた場合に何が起きるかを確かめた上で、次の1年は理論と共に左手なり右手なりを徹底的に鍛え直す時間を取る。

先々を考えると、このような計画で進めたいところですが、勿論、これは生徒の経歴や性格によっても変わってきます。

コンクールの予選・本選の課題曲は、一見かけ離れているように見えて、実際は深いところで連関しているものです。

コンクールに臨む際に予選の課題曲だけを練習するわけではありませんから、本人が予選曲と本選曲のつながりの一端でも体得できれば、その後の練習に生かすことができるでしょう。

また、コンクールの課題曲だけを練習する方法では、年齢が上がるにつれ、直前になって崩れた場合に立て直しがきかなくなりますから、多くの指導者はそれに合わせてスケールとエチュードを平行して学習させているはずです。

特にスケールはどんなに忙しくても、何とかやりくりをして練習時間をとるべきでしょう。

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photo credit: pellaea via photopin cc

3密を避ける コロナの時代の新しいコンサートの形

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いつか新型コロナウイルスが終息して、日常生活が戻り、経済活動が再開される日が来るだろう。

しかし「3密」のリスクがあるコンサートの再開は、そこからさらに時間を要するかもしれない。

クラシック音楽のコンサートは、聴衆が整然と席に座り、静かに音楽に耳を傾ける。

ロックやポップスのコンサートやライヴに比べれば、リスクは軽減される。

しかし公演の規模や編成による違いはある。

大編成のフルオーケストラの公演とヴァイオリンの無伴奏ソロのリサイタルとでは、リスクの度合いはかなり異なる。

ある程度の長期戦も覚悟しなければならない状況の中で、コロナの時代の新しいコンサートの形について想いを馳せてみた。

舞台も客席もプログラムも日程も「密」を避ける

ステージ上の演奏者は最小限の人数で、複数の場合は必ず2メートルの間隔をあける。

まずはピアノや弦楽器のソロから。

その後、デュオ、アンサンブルの小編成へと移行し、管楽器と声楽も加わる。

ソーシャルディスタンスのルールがあると、ステージに上がる演奏者の数は限られる。

フルオーケストラの編成は、ルールを守る必要がなくなってからとなる。

客席も間隔を空けるので、ホールのキャパシティは半分になる。

聴衆は必ずマスクを着用し、曲間や楽章間の咳払いは抑える。

拍手だけで、ブラボーのかけ声はなし。公演中はホワイエでのお喋りも禁物だ。

音響効果の問題よりも、換気の徹底が優先されるので、ホールのあらゆる扉や窓の開放を検討する。

従来型の休憩を挟んだ前後半のプログラムは時期尚早で、まずは1回の公演は休憩なしの1時間以内に収める。

長い楽曲は当面演奏できない。マーラーの交響曲をフルオケで聴ける日はかなり先だ。

公演は単発が基本だが、どうしても複数公演となる場合は、演奏者やスタッフの感染発生のリスクに備えるため、少なくとも2週間は間隔をあける。

本来の形にはほど遠い。不完全で、制約ばかりで、息がつまる。

しかし、どのような形であろうとも、無観客のライブ配信では得られなかった心が震える感動がそこにはある。

演奏家と同じ時間、同じ場所に身を置き、生の音を直接耳にするという、あのかけがえのないコンサート体験。

それを今、私たちは心の底から欲している。

どんな音楽でも泣く自信がある

新型コロナウイルスが音楽や演劇など、芸術・文化へ与える深刻な影響について問われた作家・平野啓一郎氏は、「芸術・文化が社会に不可欠だと骨身に染みている」とし、次のように語った。

「僕は、コロナ明けに行く生のコンサートは、どんな音楽でも泣く自信があります。1曲目から最後まで泣き続けているかもしれない。演奏家も泣いていると思う。いま想像しただけで涙ぐんでしまう。」

「作家・平野啓一郎が見通す「新型コロナの2020年代」――「自分さえよければ」という生き方では社会が壊れる」(ヤフーニュース)

まさに、私たちは生のコンサートに「渇している」。

あの日の彼のように。

長い間耳にしなかったヴァイオリンの本当の音色に、打ち震え、涙を流した小林秀雄のように。

【メニューイン初来日】 悪魔のトリルに震え涙した日

コンサートやコンクールは参加者100人以下「緊急事態宣言」解除後

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2020年5月14日、新型コロナウイルス感染症対策を検討する政府専門家会議が状況分析と提言を行った。

提言には、今後、開催して良いイベントについて、その条件や規模についての指針が示されている。

提言ではまず、全国的かつ大規模なイベント等の開催については、「会場に感染者がいた場合に、クラスター(患者集団)の連鎖が発生し、爆発的な感染拡大のリスクを高めることにつながりかねないため、これらのリスクへの対応が整わない場合は、引き続き、中止又は延期するよう、主催者に特に慎重な対応を求める必要がある」としつつ、開催しても良いイベントについては、「明確なエビデンスはないものの、諸外国においては、参加人数や施設の収容人数に対する参加者の割合により開催を制限している例がある」として、ひとつの指針を示した。

イベントにはコンサートやコンクールも含まれると解釈され、示された指針は、今後、コンサートやコンクールの再開を検討している主催者の参考になるものと思われる。

以下その指針について、前提条件等を補足しつつまとめてみた。

「緊急事態宣言」が解除され、ホール等施設の所在地が「感染観察」地域に指定されること。

参加者は「感染観察」地域内に在住していること。(「特定警戒」地域・「感染拡大注意」地域との間の「不要不急」の移動は可能な限り避ける必要があるため、この2つの地域からの参加は難しいと判断)

参加者数は100人以下、収容人員の50%以下を目安とすること。

これらの条件をクリアーした上で、開催にあたっては、身体的距離の確保や基本的な感染対策の実施、業種毎の感染拡大予防ガイドライン等を踏まえた対応が求められることになる。

実際にはまず、「感染観察」地域に指定された後、「感染観察」地域内にいる出演者・スタッフ・観客ら総勢100人以下の規模のコンサートやコンクールから、順次再開していく流れが想定される。

「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月14日)」(PDFファイル)(厚生労働省公式サイト)※イベントについてはP13~14に記載

注:
尚、言うまでもないが、海外からの参加者があるコンサートやコンクールについては、宣言が解除され、また、国内の移動自粛が緩和されても、日本政府の入国禁止・制限措置が解除されない限りは、開催は難しい。

出演者も原則マスク着用 音楽ホールなど加盟の団体が指針公表

3密を避ける コロナの時代の「新しいコンサート様式」

出演者も原則マスク着用 音楽ホールなど加盟の団体が指針公表

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東京文化会館や東京芸術劇場などが加盟する団体が、劇場再開に向けたガイドラインを公表した。

「表現上困難な場合を除き」原則マスク着用

全国の国公立の劇場や音楽ホールなど約1300施設が加盟する「全国公立文化施設協会」(※)が、5月14日、新型コロナウイルスの感染拡大で休業中の施設の再開に向けて、感染拡大予防ガイドラインを公表した。

「表現上困難な場合を除き」としながら、出演者にも原則としてマスクの着用を求めるなど、コンサート再開の指針としては実施が容易ではない項目も見られる。

以下、いくつか特徴的なものをピックアップした。

会場入口の行列は、最低1m(できるだけ2m を目安に)の間隔を空けた整列を促すこと

チケットシステム等により事前に把握している範囲で、公演ごとに、来場者の氏名及び緊急連絡先の把握に努めること

座席は原則として指定席とし、座席の最前列席は舞台前から十分な距離を取り、また、感染予防に対応した座席での対策(前後左右を空けた席配置、又は距離を置くことと同等の効果を有する措置等) に努めること

事前に密集状況が発生しないように余裕を持った休憩時間を設定し、トイレなどの混雑の緩和に努めること

表現上困難な場合を除き原則としてマスク着用を求めるとともに、出演者間で十分な間隔をとるようにすること

同協会は、すべての項目の実施が活動再開の必須条件ではないが、基本となる感染予防策を実施した上で、より感染予防効果を高めるための推奨事項として、今後の取組の参考にして欲しいとしている。

※(注)「全国公立文化施設協会」
約1300施設のうち、クラシック音楽が用途の施設としては、東京都では東京文化会館、東京芸術劇場、すみだトリフォニーホール、府中の森芸術劇場など70施設、神奈川県では神奈川県民ホール、神奈川県立音楽堂、ミューザ川崎シンフォニーホールなど57施設が加盟している。

「劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」(PDFファイル)

コンサートやコンクールは参加者100人以下「緊急事態宣言」解除後

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Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)が中止

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5月18日、「Nコン」(NHK全国学校音楽コンクール」が、新型コロナウイルスの感染拡大防止の取り組みが長期にわたる現状を鑑み、地区コンクール、ブロックコンクール、全国コンクールをすべて中止すると発表した。

「Nコン」は、小学校、中学校、高校の部に分かれて課題曲と自由曲を競う国内最大規模の合唱コンクールで、87回目となる今年は、7月末から地区コンクールが始まり、11月21日~23日に全国コンクールが行われる予定だった。

主催のNHKならびに全日本音楽教育研究会は、「学校再開ガイドライン」を踏まえ、また「新しい生活様式」を心掛けても、コンクールでの集団による合唱は、十分な間隔をあけたり近距離での発声を避けたりすることに限界があり、感染拡大のきっかけに繋がりかねないとしている。

尚、すでに公式サイト上で公表した2020年の課題曲については、2021年の課題曲としても使用する。

Nコン公式サイト

5月に入って、国内の感染拡大は抑制傾向にあるものの、全国から参加者が集まる大規模な音楽コンクールについては、まだ開催が見通せない状況が続いている。

5月10日には、国内最大規模の吹奏楽コンクールである「吹コン(全日本吹奏楽コンクール)」など3つのコンクールの全国大会の中止が発表された。

「Nコン」と「吹コン」は、いずれも歴史と伝統のある音楽コンクールで、「Nコン」は1932年、「吹コン」は1940年に始まり、太平洋戦争の影響で中断した以降では、いずれも今回が初めての中止となった。

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コンサートやコンクールは参加者100人以下「緊急事態宣言」解除後

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