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ウィーン・フィルがアカデミーを創設 第1期生は12名

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ヴァイオリンは2名 個人レッスン・オケ実習・室内楽等で育成

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団がオーケストラアカデミーを創設し、次代を担う若手演奏家の育成に乗り出した。

2019年夏に行われたアカデミー第1期生のオーディションに合格したのは12名。

年齢は18~27歳、11の専攻楽器に渡り、国籍はオーストリア4名、アメリカ2名、韓国、ロシア、スロヴェニア、スイス、イタリア、ハンガリー各1名だった。

ヴァイオリンは2名で、アメリカの Hannah Cho さんは、ジュリアード音楽院を経てマンハッタン音楽院に在籍。「2016アリス&エレノー・シェーンフェルド国際弦楽コンクール」ヴァイオリン部門第3位、「2019マイケル・ヒル国際ヴァイオリンコンクール」第5位。

アカデミー生には、2019~21年シーズンの2年間の研修期間中に、各パートの団員による個人レッスン、ウィーン・フィルのリハーサル・公演・ツアーでのオーケストラ実習、室内楽の指導と楽友協会での演奏会、オーディションへの準備、メンタル&プレゼンテーションコーチ、楽友協会資料室・国立図書館での資料・楽譜の閲覧など、様々な育成プログラムが無償で提供される。

もちろん、アカデミー生になることで、ウィーン・フィルへの入団(※)が必ずしも有利になるわけではないが、1972年にオーケストラアカデミーを創設したベルリン・フィルでは、現在、団員の3割がアカデミー出身者で構成されるようになったという。(※)ウィーン国立歌劇場管弦楽団のオーディションに合格し、3年間実績を積むことが必要

ウィーン・フィルの育成プログラムにはオーディションへの準備も含まれており、今後、アカデミー出身者からウィーン国立歌劇場管弦楽団あるいはその他の著名なオーケストラのオーディション合格者を輩出することが期待される。

また、ウィーン・フィルのオーストリア以外の外国出身の団員は増加しつつあるものの、その多くは中・東欧やロシアに限られ、それ以外の国の出身者はまだ少ないのが現状だ。

今後のアカデミーの展開が、ウィーン・フィルのさらなるグローバル化を推し進めるかどうかも注目される。

【Members of the Vienna Philharmonic Orchestra Academy 2019-2021】

Paul Blüml(Austria)/ Oboe

Hannah Cho(USA)/ Violin

Andraž Golob(Slovenia)/ Clarinet

Patrick Hofer(Austria)/ Trumpet

Hana Jeong(South Korea)/ Double Bass

Kelton Koch(USA)/ Trombone

Andrei Krivenko(Russia)/ Flute

Ulisse Mazzon(Italy)/ Violin

Samuel Mittag(Switzerland)/ Viola

Michael Stückler(Austria)/ Horn

Benedikt Sinko(Austria)/ Violoncello

Szabolcs Szöke(Hungary)/ Bassoon

ウィーン・フィル公式サイト

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photo by Gryffindor


【藝大】合否判定基準に言及-令和2年度音楽学部募集要項

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「合格基準点」・「楽器の枠」・「実技の順位付け」

東京藝大が、令和2(2020)年度音楽学部入試の学生募集要項を公式サイトに掲載した。

今回の募集要項には、これまでほぼベールに包まれていた合否判定基準について、従来よりも踏み込んだ記述が見られる。

注目されるのは以下の3点だ。※募集要項の「7.試験科目一覧および合否判定方法・基準」より

音楽に関する基礎能力検査、副科ピアノ、センター試験は、最終合否判定に用い、得点が当該受験年度の基準点に満たない者は不合格とする
実技試験が重視され、それ以外の成績は最終判定に用いることはわかっていたが、今回、各分野の合格基準点が存在し、それに満たないと不合格になることが明らかにされた。

最終合否判定では専攻内における楽器種の人数のバランスを考慮することがある
専攻楽器の合格者数に一定の枠があることが予想されていたが、その存在が認められた。

合否判定の順位付けの方法を開示
実技試験と最終の合否判定における順位付け表が開示された。この表が今回最も注目すべきものだろう。

弦楽は1次、ピアノは2次を重視

以下、その表中にある弦楽・ピアノ・管打楽器各専攻の順位付けの方式を示しておこう。

【弦楽専攻】
第1次合否判定:第1回専攻実技試験(100点)の高得点順
第2次合否判定:第1回専攻実技試験(100点)および第2回専攻実技試験(100点)の合計点(200点)の高得点順
最終合否判定 :第1回専攻実技試験(100点)、第2回専攻実技試験(100点)の合計点(200点)の高得点順

【ピアノ専攻】
第1次合否判定:第1回専攻実技試験(100点)の高得点順
第2次合否判定:第2回専攻実技試験(100点)の高得点順
最終合否判定 :第2回専攻実技試験(100点)の高得点順

【管打楽器専攻】
第1次合否判定:第1回専攻実技試験(100点)の高得点順
第2次合否判定:第2回専攻実技試験(100点)の高得点順
最終合否判定 :第1回専攻実技試験(100点)、第2回専攻実技試験(100点)の合計点(200点)の高得点順

弦楽専攻は1次の成績が2次と最終合否に50%の割合で影響するが、ピアノは2次重視で、1次の成績は2次・最終合否には影響しない。管打楽器は最終合否に1次の成績を反映させる方式だ。

ピアノの2次重視は、課題曲の構成と分量からある程度予想できたことだが、弦楽は1次の出来が最終合否にもかなり影響することがわかった。

ヴァイオリンでは1次の音階とパガニーニの出来が重要になってくるだろう。

入試日程

今回発表された募集要項の「入学試験実施日程表」(別表2)によると、器楽科ピアノ・弦楽器・管打楽器の専攻実技第1回試験は、2020年2月25日(火)~27日(木)の各日10時~。第1次合格者発表は、ピアノ・弦楽器が2月28日(金)16時以降、管打楽器が3月2日(月)16時以降となっている。

また、第2回試験はピアノと管打楽器が3月3日(火)~5日(木)各日10時~、弦楽器が3月4日(水)・5日(木)各日10時~、第2次合格者発表は3専攻とも3月6日(金)16時以降。

翌3月7日(土)10時から、聴音書き取り・楽典・新曲視唱・リズム課題・副科ピアノの試験が実施される。

最終合格者発表は、3月12日(木)14時以降となっている。(専攻楽器毎のより詳細な日時、注意事項等は、試験期間中に掲示される)

「東京藝術大学入試情報サイト」


東京芸術大学 (2020年版大学入試シリーズ)

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【King Gnu 常田大希】藝大・チェロ・Nコン・マリンバ 異才に注ぐ音楽の水脈

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斬新な音楽的書法の『白日』

メジャーデビュー1年目にして、「第61回日本レコード大賞」優秀アルバム賞を受賞、NHK 紅白歌合戦初出場を決めた、大プレイク中のロックバンド King Gnu(キングヌー)。

テレビドラマの主題歌となったメガヒットチューン『白日』は、ストリーミング総再生回数で1億回を突破した。

また、『白日』の MV も再生1億回を突破、国内では「MTVビデオ・ミュージック・アワーズ2019」で史上初の2冠(最優秀新人アーティストビデオ賞・年間最優秀ビデオ賞)に輝き、欧州最大級の音楽授賞式「2019 MTV EMA」でも「ベスト・ローカル・アクト賞 “BEST JAPAN ACT” 」を受賞した。

まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの King Gnu の作詞・作曲・編曲・ギター・ボーカルを担当する常田大希(つねただいき)さんは、東京藝術大学音楽学部器楽科チェロ専攻の出身。

既成の J-POP のヒット曲にはない斬新な音楽的書法で作られた『白日』は、オルガンの響きがコラール(教会歌)を思わせる中、テンポが絶妙に変転しつつ、高低部の振り幅が顕著な独特の旋律線を描く。ボーカル曲としては極めて異質で、器楽的でさえある。

また、セカンドアルバム『Sympa』の『Don’t Stop the Clocks』や『The hole』における巧みなストリングスアレンジ、インタールードに見られる色彩感に富んだオーケストレーションの手法など、「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル」と呼ばれるその独自の音楽スタイルには、常田さんがこれまでに学んできた音楽の影響が少なからず見て取れる。

幼少期からチェロを習いつつ、中学時代は合唱部にも所属。全国屈指の音楽コンクールに入賞した実績も持つ常田さんの音楽の水脈を探る。

6歳でチェロコンサート出演 母・兄と共演

常田大希さんは、1992年5月15日生まれ。

学歴は、伊那市立東部中学校卒業、長野県立伊那北高校卒業、東京藝術大学音楽学部器楽科チェロ専攻入学・中退。

幼少期から早期音楽教育で定評のあるスズキ・メソード(才能教育研究会)でチェロを習った。

6歳で、「長瀬冬嵐クラスの生徒たちによるチェロコンサート」(1998年10月11日)に出演。兄の常田俊太郎さんもヴァイオリンで共演している。
(また、この時のプログラムには常田理恵さんという名前もあり、お母様もピアノ伴奏で共演していると思われる)

合唱コンクールの最高峰Nコン全国大会出場 マリンバ伴奏

チェロを続けながら、伊那市立東部中学校時代には合唱部にも所属していた。同郷の King Gnu ボーカルの井口理(さとる)さん(東京藝大声楽科卒)も同じ中学の1学年下で、合唱部の一員だった。

同合唱部は2007年、「Nコン」として知られる「第74回NHK全国学校音楽コンクール」中学校の部で、地区大会・県大会・関東甲信越大会をすべて最高位の金賞で勝ち抜き、全国コンクールに出場、優良賞を獲得した。

この時、課題曲『めぐりあい』では合唱に加わっていた常田さんだが、自由曲『IMBENI~魂の夜明け~』では、マリンバの伴奏を担当。初めてマリンバを手にしたのは地区大会が始まる1ヶ月前だったという。

楽器をマルチにこなす才能はすでにこの時期に開花していた。

「平成19年度Nコン全国大会中学校の部(伊那市立東部中・めぐりあい)」(※)ピアノ伴奏は常田理恵さん

「平成19年度Nコン全国大会中学校の部(伊那市立東部中・IMBENI)」

チェロと合唱部以外では、中学生ですでにバンドを結成、ギターやベースを弾き、MTR(マルチトラックレコーダー)を使って作曲も始めた。

幼少期からチェロを弾く常田さんは絶対音感を持っている。

そして、フレットのないチェロを自在に弾きこなす常田さんなら、ギターやベースの左手の運指は難なく修得できたはずだ。

クラコンのチェロ部門で全国3位、東京藝大へ

チェロでは、17歳(高校3年生)の時、「クラコン」で知られる「第20回(2010年)日本クラシック音楽コンクール」チェロ部門・高校の部の全国大会で第3位に入賞した。

東京藝大にはチェロ専攻で入学した。

藝大受験では、チェロの専攻実技だけでなく、副科ピアノの実技と音楽に関する基礎能力検査(聴音・楽典・新曲視唱・リズム課題)も課される。

たとえば副科ピアノでは、モーツァルトやベートーヴェンのピアノソナタが課題曲になることもある。

常田さんと井口さんがキーボードや電子ピアノを難なく弾きこなせるのは、こうした藝大受験に向けて培われたものが大いに関係していることは容易に想像できる。

また、聴音(耳で聞いた旋律や和音を楽譜に書き記す)、新曲視唱(新しくもらった楽譜を視て、練習せずにその場で正確に歌唱する)、楽典(楽譜を読み書きするために必要な理論・ルール)についても、藝大受験のためには専門の先生に師事する必要がある。

もちろんアーティストになるには、アカデミックな音楽教育は必須条件ではないが、音楽的基礎のない我流の知見や技術に拠る場合に比べれば、独創性を生み出すための引き出しの数や深さの点で違いがあるのは明らかだ。

作曲もインスピレーションに頼ることはなく、どちらかというと数学に近いロジックで行っていると常田さんは語っている。

ストラヴィンスキーやプロコフィエフの音楽に、サイケデリックなロックサウンドの質感との共通性を見い出すところなどは、クラシックとロックのいずれにも通暁した常田さんならではの音楽家としての境地を示していると言えるだろう。

2011年には、同世代の各楽器の国内トップクラスの奏者の中からオーディションで選抜され「小澤国際室内楽アカデミー奥志賀」に参加し、小澤征爾氏の指揮でモーツァルトやチャイコフスキーを演奏した。

ニューアルバム『CEREMONY』 その先にあるもの

クラシック音楽への修養で培った土壌にしっかりと根をはりつつ、今、創造の枝葉を自由に拡げ、ジャンルを融合し、垣根を取り払い、それらを超えていく。

あえて J-POP の領域に身を置いた King Gnu だが、見据える先にあるものは J-POP 音楽の脱構築にとどまらない。

常田さんは、音楽と 3D 映像のミックスにより今までにないライヴ体験を提示する millennium parade(ミレニアム・パレード)というプロジェクトも主宰し、King Gnu と並行して精力的な創作活動とライヴパフォーマンスを展開している。

2019年12月には東京と大阪でのライヴを成功させ、ファッションブランド「DIOR(ディオール)」とのコラボレーションも実現させた。

日本のボッブネスの世界戦略をも構想する異才から、この先どんなスリリングな作品が放たれるのか。

『Sympa』からわずか1年後にリリースされる、King Gnu のニューアルバム『CEREMONY』。

CEREMONY (初回生産限定盤) (Blu-ray Disc付)

収録曲12曲のうち、2曲は TV・映画の主題歌、5曲は TVCM 曲だ。

また未発表曲のうち、常田さんが現在の自らの思いをすべて込めたという『壇上』は、ストラヴィンスキーのようなプリミティヴなリズムに後期マイルス・デイヴィス的なホーンがフィーチャーされるカオティックな響きの前奏から、井口さんのクリスプなボーカルが疾駆を始める。

常田大希 Instagram

アルバムのリリースに合わせて、2020年春、初のアリーナ公演を含む全国ツアーも決定した。

ヌーの群れの増殖は、もう誰にも止められない。

『CEREMONY』(2020/1/15発売)収録曲

01. 開会式

02. どろん
映画「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」主題歌

03. Teenager Forever
ソニー「ノイキャンイヤホン」TVCM ソング

04. ユーモア
「ロマンシング サガ」完全新作、『ロマンシング サガ リ・ユニバース』 1周年記念 TVCMソング

05. 白日
日本テレビ系土曜ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」主題歌

06. 幕間

07. 飛行艇
ANA 国内版「ひとには翼がある」篇 TVCMソング

08. 小さな惑星
Honda VEZEL「PLAY VEZEL 昼夜」篇 TVCMソング

09. Overflow

10. 傘
ブルボン「アルフォート」TVCMソング

11. 壇上

12. 閉会式


CEREMONY (初回生産限定盤) (Blu-ray Disc付)


Sympa(通常盤)

兄は東大卒 江藤俊哉ヴァイオリンコンクール第3位

ちなみに、兄の常田俊太郎さんは、「第9回(2004年)江藤俊哉ヴァイオリンコンクール」ジュニア・アーティスト部門で第3位に入賞。

東京大学工学部卒業後、戦略コンサルティング会社を経て、株式会社ユートニックを設立し、代表取締役に就任した。

ヴァイオリニストとして、King Gnu と millennium parade の楽曲に参加している。

【参照サイト】
「鈴木鎮一記念館」
「伊那谷ねっと」
「日本クラシック音楽コンクール」
「小澤国際室内楽アカデミー奥志賀」
「ルネこだいら(小平市民文化会館)」
「音楽主義」

King Gnu(キングヌー)が J-POP 最強バンドである4つの理由

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King Gnu(キングヌー)がまだあまり知られていない頃、常田大希はこう言った。

「今一番売れている音楽が、最も良い音楽だなんて思わないでほしい」

最高のクォリティの音楽を、日本で一番売れる音楽にする。

そんな野望を着々と実現しつつある King Gnu(キングヌー)。

現 J-POP シーンにおいて、最強のバンドと呼ぶにふさわしい、その稀有のスペックと戦略を明らかにする。

【楽曲の力】キャッチーで凝った作り

日本ではブラックミュージックやジャズ系の音作りのアプローチをとると、サビや歌謡性に慣れた日本のリスナーの耳には縁遠くなる。

そこでメロディーに歌謡性を大胆に取り入れつつも、インストバンド級の重厚でソリッドなベースとドラムをそれに対置し、グルーブ感を際立たせる。従来にない展開とリズムパターンを加え、凝ったアレンジを施す。

耳に心地よい聞き慣れた感じのメロディーだが、何かがか違う、これは凄い、と多くの人に思わせる。

聴き易いが、音作りは凝りに凝ってマニアック。

この矛盾の対置、違和感の表出こそ、 King Gnu の真骨頂と言える。

エレクトロ音楽を基本とし、生音は少ない。ベースはシンセ、ドラムもサンプリングを多用し、ボーカルにもエフェクトをかける。ソロパートの主張は極力抑える。

バンドとしての技術力があり、生音でも十分にクォリティが高いが、そこをあえてエレクトロサウンドで作り込む。そしてミキシングで立体的な響きを作り出す。

同じ曲を良質なイヤフォンで聴くと、その醍醐味は段違いだ。

「これ、イヤフォンで聴くと、凄い!」とリスナーに発見を促す。

たとえば、『Slumberland』にはサビがない。

一方、『白日』の3つの主要メロディ(通称Aメロ・Bメロ・Cメロ)は、すべてがサビと言えるほどの強度で作り込まれている。

いずれも既存の J-POP 音楽では考えらえないアプローチだ。

女声とまがう透明度の高いボーカルバラードで、重厚でうねるベースとドラムラインが変則的なリズムを刻む。

どちらも群を抜くうまさだが、それらはあくまでも共存し、対比されて提示される。

ボーカルが心地よい旋律線を動くだけの曲ではない。また徹底的に尖ったセッション系の技巧バリバリの音楽でもない。

両方を程よく対置する。

そのバランス感覚が圧倒的に光っている。

【演奏の力】炸裂するロウ感

精緻に作り込まれた録音とは一転して、ライヴではアレンジを変え、スキルフルな奏者たちによる自在のプレイを前面に押し出す。

言わば、録音とライヴの対置だ。

だから同じ曲が全く別の魅力を放つ。

井口理はボーカルのキーをあえて上げ、鮮烈な高揚感を狙う。常田大希はギターソロをより歪んだ響きにシフトチェンジし、新井和輝はベースラインの輪郭を強調して音圧を強める。オープンハンド奏法の勢喜遊は自由に装飾を凝らし、『Flash!!!』冒頭で圧巻のドラムソロを披露する。

ライヴでは精緻に作り込まれたサウンドから脱し、バンドとしての強圧的なロウ(生)の音で攻めたてる。

ライヴを意識して作られたのが『飛行艇』だ。

常田は「アリーナやスタジアムで鳴らす」ための音楽を作ろうと企んだ。

狙いは的中し、ラグビーW杯のスタジアムでこの曲がかかると、観衆のヴォルテージが最高潮に達し、ウェーブが起こった。

新井や勢喜はジャズやブラックミュージックのセッションシーンでならした。師匠宅に泊まり込みで弟子入りするほどの、芸を追求する職人気質のストイシズムを持つ。

師匠の門下に弟子入りし、練習漬けの日々を過ごした点では、東京藝大出身の常田や井口と重なるものがある。

King Gnu が、いかにも薄っぺらい音を奏でるバンドとは異次元にあるゆえんがここにある。

【ヴォーカルの力】ファルセット&ユニゾン 清濁の対置

井口は東京藝大声楽科のテノール専攻卒で、クラシック唱法のトレーニングを積んだ基礎がある。

声量と声質もさることながら、音程の正確さでは J-POP の歌手の中では群を抜いている。

あれだけ高いピッチの音も絶対に外さない。また楽譜を読み取る能力も高いので、常田が作る複雑な構造の楽曲を即座に吸収し、歌うことができる。

ファルセットの使い手としては随一だろう。これを聞くと、残念ながら他の歌手のそれは真似事のように思えてくる。

バラードやアコースティクナンバーはもちろん、疾駆するロックチューンも井口が歌えば美しく洗練された響きとなる。

井口と常田のユニゾンでは、ダミ声系のダークな味のある常田の声と対置され、メロウなサウンドはひときわ甘美になり、クリスプなファンキーナンバーはその高揚感が倍加される。

相反する2つの声のキャラクターの対置。

ここにも強烈な印象を与える仕掛けがある。

『Flash!!!』は常田のダミ声の破壊的リリックで攻め立てているようだが、井口の洗練された美しいコーラスのユニゾンが均衡を保ちつつ、やがて中間部で井口がすべてを引き取って、濁を清の世界へとかっさらう。

濁があればこそ昇華された清はさらに美しい。

【戦略の力】これ以上のものを作れる「余裕感」

作曲も演奏も極めて強度は高いが、J-POP の標準を考慮し、一方の極を追求しすぎない。

万人受けする歌謡曲と凝ったエレクトロサウンド、ウェルメイドな録音と炸裂するライヴプレイ、ミューズの高音と堕天使のダミ声。

相反するものを対置して提示し、今までにないインパクトを与える。

そして、これよりもハイレベルな曲は創れるし、実際に別のプロジェクト(「millennium parade」)で実践してもいる。

アーティストとしてのキャパシティの大きさと、そこから生じる余裕感が、King Gnu というバンドのブランド力を際立たせている。

恐らく常田大希の視線の先にあるのは坂本龍一だ。

坂本は、東京芸大作曲科卒で、現代音楽といういわば「アンダーグラウンド」の領域から、YMO でテクノポップという新たなジャンルを創始し、劇伴音楽でも世界性を獲得した。

King Gnu のボップネスはどのようにして海外に訴求しうるのか。さらに、3D映像と音楽による新次元の体験を提示する「millennium parade」の世界進出は果たされるのか。

King Gnu がたった1年で国内で最強のバンドとなった今、それらもまた、従来ないスピードで展開されていくに違いない。

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【King Gnu 常田大希】芸大・チェロ・Nコン・マリンバ 異才に注ぐ音楽の水脈


CEREMONY (初回生産限定盤) (Blu-ray Disc付)


Sympa(通常盤)

【楽器ケースに入って国外脱出】1966年に前例があった?

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楽器ケースに入って、国外脱出する。

そんなスパイ映画さながらの手口が現実に可能なのだろうか?

かつて、あるスパイの国外逃亡事件の際に、楽器ケースが脱出の手段に使われたとの情報が駆け巡ったことがある。

ハープケースに入って国外逃亡?

冷戦(Cold War)時代に、旧ソ連の国家保安委員会(KGB)に機密情報を流していたことが発覚して、禁錮42年の刑を受けてロンドンの刑務所に服役していた英国の元外交官ジョージ・ブレイク(George Blake)。

1966年、彼は様々な協力者による助力と導きで、刑務所を脱獄し、東ドイツを経由してモスクワに逃れた。

その際、捜索にあたったイギリスの公安当局のもとに、ロンドン公演を終え、空港から帰国の途上にあったチェコ・ナショナル交響楽団の楽器搬出に紛れて、ジョージ・ブレイクがハープケースの中に身を隠して国外脱出を図ろうとしているとの未確認情報がもたらされた。

公安当局はその航空便の貨物庫や楽器ケースの中などを徹底的に捜索したが、ついにプレイクを発見することはできなかったという。

逃走劇は数ヶ月に及び、別の便だった可能性もあるが、結局、ハープケースを使った国外脱出が実行されたかどうか、真相は謎のままとなった。

ちなみに、ハープケース(※)のサイズは、高さ:211cm × 幅:137cm × 奥行き:79cm。(※)サルヴィハープ製ペダルハープ専用ハードケースの場合

人がひとり入れそうなサイズではある。

また、ハープケース以外では、しゃがみこんだ姿勢でティンパニーのケース(高さ:89cm x 幅:88cm x 奥行き:95cm)に入る方法も考えうるかもしれない。

ただし、コントラバスのケースの場合は、上半分がネック部分となっていて細いので体を入れることはできず、また奥行きが30cmほどしかないので、しゃがみこんでもそのままでは大人が入るのは困難だろう。(改造されたものか、あるいはソフトケースならあり得るかもしれないが)

さらに、弦楽器が複数入るオーケストラツアー用のコンテナケースならどうかなどと、想像は次々と膨らむ。

成功した謎の逃走劇の真相を知りたいあまり、身を隠すのに丁度良さそうな楽器ケースに思い当たり、その利用の可能性をまことしやかに言い立てる。

そんな人間心理に影響されて流れた情報に尾ひれがついた可能性も否定できない。

※注意
言うまでもありませんが、各楽器の奏者の皆様、実験など絶対にしないで下さい。

ウィーン・フィルは超多忙 歌劇場と楽友協会だけで年間300公演以上

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歌劇場でのオペラ・バレエ公演。それに楽友協会での定期・一般公演、国内外ツアー、音楽祭、室内楽、教育活動等が加わる。

まさに年中無休状態のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。

特に4名体制で回すコンサートマスターのポジションは多忙を極め、最近、難航の末ようやく採用した候補者が退団する事態も生じた。

本職は歌劇場オーケストラ、シーズン中はほぼ毎晩演奏

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、ウィーン国立歌劇場の専属オーケストラであるウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーが自主運営団体として組織したものだ。

従ってメインの職務は、国立歌劇場でのオペラ・バレエ公演での演奏である。

これが9月1日~翌年6月30日の10ヵ月間のシーズン期間中、ほぼ毎晩ある(271公演)。※公演数は2018-19シーズンの例

これと並行して、楽友協会大ホールでのウィーン・フィル定期演奏会が20公演(土曜15:30~ / 日曜11:00~ )とソワレコンサートが6公演。これに一般公演(定期・ソワレは会員制)が14公演加わる。

またウィーンコンツェルトハウスで8公演、その他に国内外ツアー(日本には最近ほぼ毎年来演)、公開リハーサルもある。

12月30日~1月1日は、ニューイヤプレヴュー&ジルベスター&ニューイヤーコンサート。

5月または6月には、シェーンブルン宮殿を舞台にしたサマーナイト・コンサート。

そしてシーズンオフの7・8月は、ザルツブルク音楽祭でオペラ25公演、オーケストラ11公演をこなす。

超多忙なオーケストラ活動の傍らで、楽員らは多くの室内楽グループを編成しており、こちらのほうも国内外で公演を行う。

演奏活動に加えて、教育活動(第1期生として迎え入れたアカデミー生12名の指導や音大などでの教授活動)も積極的に進めている。

超多忙なスケジュールが原因で退団?

最近、難航した末にようやく採用された新コンサートマスター候補が、試用期間終了後にあっさりと退団してしまうケースが生じた。

在任45年で定年退職したライナー・キュッヒル氏の後任として入団したジョゼ・マリア・ブルーメンシャイン氏だ。

退団理由は明らかにされていないが、あまりにも多忙な公演スケジュールが原因ではないかとの観測が流れた。(ブルーメンシャイン氏は以前に所属していたケルンWDR交響楽団の第1コンサートマスターに復帰した)

また、1994年にウィーンでの教育を受けていない初のコンサートマスター候補として入団し、1997年に就任したダニエル・ゲーデ氏も、「家族と過ごす時間が欲しい」との理由で、2000年に退団している。

ウィーン国立歌劇場管弦楽団 / ウィーン・フィルのコンサートマスターは、秀でた経験と技術のみならず、激務への相応の覚悟が求められるポジションなのだ。

【関連記事】

ブルーメンシャイン氏の退団に伴い2019年2月に実施されたオーディションで、「2014アンリ・マルトー国際ヴァイオリンコンクール」第1位、「2018パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール」第2位等、多くの国際コンクール入賞実績を持つフョードル・ルディン氏(26歳)が採用された。
ウィーン・フィル、新コンサートマスターを発表


ウィーン・フィルとともに45年間–名コンサートマスター、キュッヒルの音楽手帳


ウィーン・フィル コンサートマスターの楽屋から

photo by de:user:Hieke

【芸大入試】共通テストの英語を何とか 「しのぐ」 その一手とは?

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「基準点に満たない者は不合格」

実技検査の出来で、ほぼ合否が決まると言われる東京芸大音楽学部器楽科入試。

従来、センター試験の成績は最終合否判定の際に「参考程度」に用いるとされていたが、2020年度の学生募集要項ではより踏み込んで、「得点が当該受験年度の基準点に満たない者は不合格とする」とされた。

基準点が何点になるか、また各要素(専攻実技・音楽に関する基礎能力検査・副科ピアノ・センター試験・調査書)の配点は何点か。いずれも不明だが、得点率60%程度を通過ラインと考えた場合、それを大きく下回る場合には影響が出てくる可能性はあるだろう。

2021年からはセンター試験に代わって大学入学共通テストが実施されるが、最終合否判定における藝大のこの方針が大きく変わることはないだろう。

そして共通テストの成績が芳しくない場合は、専攻実技試験に臨む心理が少なからず影響を受けることにも変わりがないだろう。

なんとか共通テストを「しのいで」、気持ちよく実技検査に臨みたい。

ここでは、共通テストの英語に絞って、その「しのぎ」の一手を考えることにしよう。

その際、最も重要となるのは単語力だ。

「単語」がわからなければ、話にならない

英語ができる受験生は数千語を暗記し、その単語力を駆使して英文を解釈できる。そして、知らない単語でも文脈で類推するなどの対応力を持っている。

しかし、英文を見ても、ひとつの文に知らない単語が3つも4つもある場合はどうか。

辞書を引く手間も加わって、読みが停滞してしまう。

基本的な単語力が欠けていては、まとまった文章を短い時間で読むことはまず不可能だ。

頻出の重要語をきちんと覚えていなければ、共通テストの英語のリーディング対策の訓練は、まったく積めなくなってしまう。

センター英語では1語ほぼ1.2秒の速さで単語の意味を捉えていく必要があったが、速読が必須となることは共通テストでも変わらないだろう。

そのためには、何はともあれ、まず共通テスト(センター試験)レベルの単語は暗記しておかなくては話にならないのだ。

もちろん単語同様に文法も押さえておかないと英文は読めないので、少なくとも高3の夏休み前までには、この2つにある程度のめどをつけておく必要がある。

リスニングを得点源にしよう

そして、音楽を専攻し「耳が良い」器楽科受験生は、リスニングの得点アップを是非とも目指したい。

共通テストではセンター試験よりもリスニングの配点が高くなるのでチャンスと言えるだろう。(センター試験は筆記80%:リスニング20%、共通テストはリーディング50%:リスニング50%)

リスニングに出てくるのは、聞き取れるレベルにある単語だから自ずと語彙レベルは下がる。英文読解に恐怖心と不安がある人でも、取り組みやすいはずだ。

共通テストにどのような問題が出題されるのか。その予想は難しいが、受験生にとっては、まずはセンター試験のリスニングの過去問が対策のための重要な教材となる。

高3の夏休みに、集中してリスニングの過去問に取り組み、実力アップの手ごたえをつかみ、リーディング対策への良い流れを作るようにしたい。

予備校の夏期講習は、単語力が伴わないうちにリーディングの講義を受けても役に立たないが、リスニング対策は別。積極的に利用したい。

【まとめ】 共通テストの英語 「しのぎ」の一手

夏休み前までには、単語と文法にめどをつけておく。学校で配布された英単語集の共通テストレベルのものの暗記を繰り返し、文法問題集も1~2冊は仕上げておく。夏休みはリスニングとリーディングの対策にシフトし、9月以降はセンター試験の過去問や予想問題集に取り組む。

直前対策も「単語」で

最後のセンター試験まであと10日となった。

この記事は、現在高校2年生以下の人に向けて書いているつもりだが、センター試験を控えた高校3年生の人も読んでいるかもしれないので、直前対策にもふれておきたい。

直前期は、予想問題集や直前問題集などに取り組む人もいるが、センターにはまったくの新作問題が出るから、それらの問題集の問題はあくまでも「予想」でしかない。

だから、新作につながる知識の最終確認を考えた時、一番有効となるのは、やはり単語のチェックだろう。

使い慣れた英単語集で、もう一度センター頻出語をチェックし、忘れてしまった語、記憶があいまいな語を脳の表面にしっかりと定着させておこう。

新作とはいえ、問題は必ずそれらの単語をかなりの割合で使用して作られているはずだ。

それは最もストレートなセンター英語の直前対策となる。

by: 杉山一太(塾講師)

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photo : Wikimedia Commons

【藝高入試2020】受験者はヴァイオリンが7名増、ピアノと管打楽器は大幅減

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2020年1月20日から始まる「東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校」(藝高)の入試に先立って、1月19日、藝高構内の掲示板に「入学試験に関する注意事項」・「第1回集合時間」・「ピアノ専攻課題曲演奏箇所」が掲示され、同内容が藝高公式サイトにも公表された。

集合時間表によれば、今年のヴァイオリン専攻の受験者は31名で、昨年(24名)より7名増加した。(昨年のヴァイオリン専攻の最終合格者数は9名)

一方、ピアノ専攻は32名で、昨年(41名)より9名も減少。

管打楽器専攻も全体で10名(昨年21名)と大幅に減少。受験者はフルート3名(4名)、オーボエ3名(1名)、クラリネット2名(3名)、トランペット1名(2名)、打楽器1名(2名)の5専攻のみで、ファゴット(昨年2名)、ホルン(3名)、トロンボーン(2名)、サクソフォーン(1名)、チューバ(1名)の受験者はゼロ。

作曲もゼロ(昨年4名)、邦楽も5名で、昨年(10名)より5名も減少した。

尚、ヴァイオリン以外の弦楽器専攻の受験者数は1月20日に判明する。

ヴァイオリン専攻の第1回試験は1月20日。カール・フレッシュ:スケール・システムより変ロ長調(B-dur)とローデ:24のカプリースより19番を演奏する。

第1回試験の合格発表は当日(1月20日)の16時半以降となっている。

「令和2年度年度入学試験前日掲示を掲載しました。」(2020/1/19)

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【藝高入試2020】 ヴァイオリン専攻 第1回合格者発表

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19名が第2回へ

1月20日17時20分、「東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校」(藝高)入試のヴァイオリン専攻第1回目の実技試験の結果が藝高公式サイトに発表され、受験者31名のうち19名(61%)が合格、第2回試験に進んだ。

昨年は24名中16名(67%)、一昨年は25名中18名(72%)が第2回試験に進んだ。(昨年のヴァイオリン専攻の最終合格者数は9名)

ヴァイオリン専攻の第2回試験は1月22日(水)に実施される。

指定された集合時間に集まった受験生が点呼を受け、伴奏を務める試験係員(藝大弦楽科伴奏助手の先生)とリハーサルの後、試験教室へ向かう。

第2回の課題曲は、メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 第1楽章。

また、ヴァイオリン以外の弦楽器専攻の受験者数が以下のように判明した。

ハープ2名(昨年2名)、ヴィオラ3名(6名)、チェロ9名(5名)、コントラバス1名(2名)

これにより、今年度の各専攻の合計受験者数は93名となり、昨年(115名)よりも、22名減少した。

ここ7年の受験者数推移は以下の通り。※カッコ内は最終合格者数

【全専攻計】
2020年: 93名
2019年:115名(42名)
2018年: 97名(40名)
2017年:109名(43名)
2016年:119名(41名)
2015年:112名(41名)
2014年:109名(43名)

【ヴァイオリン】
2020年:31名
2019年:24名( 9名)
2018年:25名(13名)
2017年:27名(11名)
2016年:37名(13名)
2015年:29名(12名)
2014年:27名(12名)

【ピアノ】
2020年:32名
2019年:41名(12名)
2018年:44名(14名)
2017年:41名(12名)
2016年:48名(12名)
2015年:47名(12名)
2014年:41名(12名)

【その他弦楽器】
2020年:15名
2019年:15名(9名)
2018年: 4名(3名)
2017年: 8名(4名)
2016年: 8名(7名)
2015年:10名(7名)
2014年:14名(7名)

【管打楽器】
2020年:10名
2019年:21名(5名)
2018年:17名(7名)
2017年:23名(8名)
2016年:18名(3名)
2015年:17名(5名)
2014年:18名(6名)

【作曲】
2020年: 0名
2019年: 4名(2名)
2018年: 2名(0名)
2017年: 3名(1名)
2016年: 2名(0名)
2015年: 2名(1名)
2014年: 2名(0名)

【邦楽】
2020年: 5名
2019年:10名(5名)
2018年: 5名(3名)
2017年: 7名(7名)
2016年: 6名(6名)
2015年: 7名(4名)
2014年: 7名(6名)

令和2年度「ヴァイオリン専攻 第1回合格者発表」(2020/1/20)(藝高公式サイト)

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【藝高入試2020】 最終合格者40名、競争率2.33倍

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ヴァイオリン専攻の最終合格者は12名

1月25日13時、令和2(2020)年度「東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校」(藝高)入試の最終合格者が発表された。

今年の最終合格者数は計40名※(11専攻)。昨年より2名少なかった。※併願合格者1名含む

受験者は昨年より22名少ない計93名(13専攻)、競争率は2.33倍だった。(昨年は115名⇒42名で2.74倍、一昨年は97名⇒40名で2.43倍)

昨年度からヴァイオリン専攻と管打楽器専攻の専攻実技試験の第2回合格者発表がなくなり、第1回合格者全員が第2回試験を経て、1月23日の楽典・聴音・新曲視唱・副科ピアノ、24日の一般教科(国・英・数)・面接の試験を受験した。

ヴァイオリン専攻は受験者31名が、1月20日の第1回試験(音階とローデ19番)を受験して19名が合格。1月22日の第2回試験(メンデルスゾーン:協奏曲 ホ短調 第1楽章)と23日の楽典・聴音・新曲視唱・副科ピアノ、24日の学科試験・面接を経て、最終合格者12名が決まった。(昨年は受験24名⇒第1回合格16名⇒最終合格9名、一昨年は受験25名⇒第1回合格18名⇒第2回合格15名⇒最終合格13名)

過去6年のヴァイオリン専攻の最終合格者数は2014年12名⇒2015年12名⇒2016年13名⇒2017年11名⇒2018年13名⇒2019年9名と推移している。

2020年度 専攻別 合格者数と受験者数

※カッコ内は昨年度
※ヴァイオリン以外の弦楽器専攻は昨年度は第1回合格者発表がなかった。

ピアノ
最終合格者 :12名(12名)
第1回合格者:16名(18名)
受験者   :32名(41名)

ヴァイオリン
最終合格者 :12名( 9名)
第1回合格者:19名(16名)
受験者   :31名(24名)

ヴィオラ
最終合格者 : 1名( 4名)
第1回合格者: 1名
受験者   : 3名( 6名)

チェロ
最終合格者 : 3名( 4名)
第1回合格者: 5名
受験者   : 9名( 5名)

コントラバス
最終合格者 : 0名( 0名)
第1回合格者: 0名
受験者   : 1名( 2名)

ハープ
最終合格者 : 2名( 1名)
第1回合格者: 2名
受験者   : 2名( 2名)

フルート
最終合格者 : 2名( 1名)
第1回合格者: 2名( 2名)
受験者   : 3名( 4名)

オーボエ
最終合格者 : 1名( 0名)
第1回合格者: 1名( 0名)
受験者   : 3名( 1名)

クラリネット
最終合格者 : 0名( 1名)
第1回合格者: 0名( 2名)
受験者   : 2名( 3名)

トランペット
最終合格者 : 1名( 1名)
第1回合格者: 1名( 1名)
受験者   : 1名( 2名)

打楽器
最終合格者 : 1名( 1名)
第1回合格者: 1名( 2名)
受験者   : 1名( 2名)

ファゴット
最終合格者 : 0名( 1名)
第1回合格者: 0名( 2名)
受験者   : 0名( 2名)

ホルン
最終合格者 : 0名( 0名)
第1回合格者: 0名( 0名)
受験者   : 0名( 3名)

トロンボーン
最終合格者 : 0名( 0名)
第1回合格者: 0名( 0名)
受験者   : 0名( 2名)

サクソフォーン
最終合格者 : 0名( 0名)
第1回合格者: 0名( 0名)
受験者   : 0名( 1名)

チューバ
最終合格者 : 0名( 0名)
第1回合格者: 0名( 0名)
受験者   : 0名( 1名)

作曲
最終合格者 : 0名( 2名)
第1回合格者: 0名( 2名)
受験者   : 0名( 4名)

筝曲
最終合格者 : 4名( 2名)
第1回合格者: 4名( 3名)
受験者   : 4名( 4名)

尺八
最終合格者 : 0名( 0名)
第1回合格者: 0名( 1名)
受験者   : 0名( 1名)

長唄三味線
最終合格者 : 1名( 1名)
第1回合格者: 1名( 3名)
受験者   : 1名( 3名)

邦楽囃子
最終合格者 : 0名( 2名)
第1回合格者: 0名( 2名)
受験者   : 0名( 2名)

「令和2年度入試 最終合格者発表ならびに最終合格者説明会のご案内」(藝高公式サイト)

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日本コロムビアの新レーベル“オーパス・ワン” 新世代クラシック演奏家を公募

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2019年に始動した日本コロムビアのクラシック音楽の新レーベル“オーパス・ワン”。

そのレーベル名は新時代アーティストの「作品1(Opus One)」を生み出すことを企図している。

特定のコンクール歴や活動実績にとらわれることなく、制作ディレクターがそれぞれアーティストを選定し、2019年は5名(ヴァイオリン・チェロ・ピアノ・ギター・ソプラノ)、2020年は3名(ヴァイオリン・指揮・ソプラノ)の若き異能のアルバムをリリースした。

Hakujuホールとコンサートも共同開催し、各アーティストのリサイタルの場を提供していくシステムも構築中で、若手登竜門のレーベルとして、演奏活動も積極的にプロデュース&サポートしていく。

CDでは過去に邦人作曲家の作品を積極的に世に送り出してきたレーベルとしての伝統を引き継ぎ、各アルバムに1曲は必ず邦人作品を取り上げる。

現在、第1期・第2期に続く新世代のクラシック演奏家を広く公募している。

公式サイト

【第1期生 ヴァイオリン】

【Opus One】ヤナーチェク: ヴァイオリン・ソナタ/石上真由子(ヴァイオリン)
邦人作曲家の作品は、幸田延:ヴァイオリン・ソナタ ニ短調

【第2期生 ヴァイオリン】

【Opus One】プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番/福田廉之介(ヴァイオリン)
邦人作曲家の作品は、竹内邦光:落梅集~無伴奏ヴァイオリンのために~より 「古謡」

ヒラリー・ハーン スズキ・メソードと37年ぶりの邂逅

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ヴァイオリニストのヒラリー・ハーン氏が、スズキ・メソードの教本(英語版)の模範演奏となる新たな音源を録音することがわかった。

対象となる教本は、“Suzuki Violin School ”Vol. 1-3(Alfred Music Publishing)。

これまでの音源(クリーヴランド管弦楽団元コンサートマスター William Preucil 氏による)に取って替る形となる。

新たな録音はCDだけにとどまらず、スマートフォンの音楽アプリなど、複数のプラットフォームへの提供が検討されている模様だ。

ヒラリー・ハーン氏は、1983年に3歳11ヵ月でヴァイオリンを始め、最初の1年間はスズキ・メソードだった。

2017年に「100日間の練習(100 Days of Practice)」と銘打って、自身のインスタグラム(“violincase”)に、練習動画を100日間連続でアップし、視聴した世界中のヴァイオリン奏者・学習者・指導者らが、同じタグで動画を公開したり、練習に取り入れたりした。

今回のスズキ・メソードとの37年ぶりの邂逅は、ハーン氏による教育プロジェクトの第2弾と言えるだろう。

“violincase”by Hilary Hahn

“Hilary Hahn to be Featured on New Suzuki Violin Book Recordings”(“The Violin Channel”)

ちなみに、日本版の『鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集」(全音楽譜出版社)の1巻~3巻の模範演奏は江口有香氏(「1986年日本音コン」第1位、「1991年パガニーニ国際」第3位)による。

photo : Suzuki Association of the Americas

ヒラリー・ハーン コンプリート ボックスセット


ヒラリー・ハーンがソニーで録音した5枚のアルバムをまとめたリーズナブルなボックスセット
バッハ:無伴奏パルティータ2番・3番、無伴奏ソナタ3番(すべて全楽章)
協奏曲はベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーン、ショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキー、バーバーなど(すべて全楽章)

Hilary Hahn: The Complete Sony Reccrdings

ヒラリー・ハーン ベスト


ヒラリー・ハーンの最高のパフォーマンスを厳選した2枚組ベスト
協奏曲はパガニーニ1番(第3楽章)、ヴュータン4番(第2楽章)、バッハドッペル(第2楽章)、シェーンベルク(第1楽章)など
ソナタはモーツァルト35番(全楽章)、42番(第3楽章)
ヴォーン・ウィリアムズのあげひばり、バッハ:マタイ受難曲のアリアも

ヒラリー・ハーン ベスト

【藝大】専攻実技試験の「出題意図」

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専攻実技は概ね3つの観点から評価される

東京藝大の入試情報サイトに、昨年度(2019)の専攻実技試験の「出題意図」が公表されている。

以下、器楽科の弦楽器・ピアノ・管打楽器の各専攻別に、その内容を要約する。

弦楽器専攻(第1回・第2回)
  • 作曲家の作品を演奏するにあたり、その内容や様式を理解しているかどうか
  • 的確に表現するための十分な技術を備えているかどうか
  • 演奏者のインスピレーションの発露、創造性があるかどうか
    その能力を確認する。
ピアノ専攻(第1回・第2回)
  • 各時代や地域、あるいは作曲家個人それぞれの様式および美学を理解しているか
  • その理解を演奏を通じて的確に表現するための身体的な技術と感情のコントロールを備えているかどうか
  • 東京藝大で学ぶにふさわしい創造性を持っているかどうか
    これらについて、その習熟度と将来性について判定する。
管楽器専攻(第1回・第2回)
  • 第1次試験では、スケールを中心とした物や、教則本からの抜粋の物は、音楽を表現する上で重要な基礎能力を測る為の課題曲である
  • 第2次試験では、伴奏ピアニストと、音楽でコンタクトが取れるかどうか、さらにピアノのピッチで、演奏出来るかどうかを含めてアンサンブルの能力を測る課題を課している
  • 作曲者の意図をしっかり理解して、東京藝大で学ぶにふさわしい能力を有しているか、創造性が有るかどうかの確認をしている
打楽器専攻(第1回・第2回)
  • その楽器に相応しい美しい音色
  • 正確で安定したテンポ
  • 自然な呼吸を伴った適切なフレーズ感
  • 音楽的で豊かな表現力
  • (第2回の共通課題1では)音楽に対する受験者個人の創造性を測る

※管打楽器専攻で、能力や創造性を「はかる」という意味で、漢字の「図る」が使われていたが、「測る」が適切だろう。

まとめると、どの専攻も概ね、「様式理解」・「的確な技術」・「創造性」の3つが試されるのだと理解できる。

記述内容としては、管楽器のように第1次と第2次に分けて、打楽器のように演奏上の判定ポイントをもう少し詳しく箇条書きで示すなどの形で、全専攻が足並みを揃えて欲しいところだ。

既報記事のように、2020年度入試の学生募集要項では、合否判定基準について従来よりも踏み込んだ記載が見られたが、この出題意図の公表も、東京藝大の入試情報透明化の方針の一環と思われる。

受験生にとっては、楽譜の再現、安全運転的演奏にとどまらずに、音楽家でもある試験官に訴求し得る「創造性」をいかに発揮できるかが、専攻実技試験突破の最大の鍵となるだろう。

東京芸術大学 入試過去問題 音楽学部 2019年度(東京藝大入試情報サイト)

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【藝大】 令和2(2020)年度入学試験 志願状況を発表

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美術学部は志願倍率12倍、音楽学部は6年ぶりに・・・

東京藝術大学の入試情報サイトに、令和2(2020)年度の美術学部と音楽学部の入試志願状況(2月13日確定)が発表された。

美術学部の一般入試の志願者数は、昨年比微減の2793名(昨年2828名)。募集人員は234名で、志願倍率は11.94倍となった。(昨年は12.09倍)

10年ほど前には3500名を超える志願者があった美術学部だが、その後は減少トレンドが続いている。

それでも志願倍率は12倍と高い水準を維持しており、超狭き門の厳しい入試状況に変わりはない。

一方、今年の音楽学部は、募集人員237名に対して志願者914名と、実に6年ぶりに900名台を回復。昨年より47名(5.4%)増で、志願倍率は3.86倍となった。(昨年は3.66倍)

器楽科の志願者数も募集人員98名に対して451名と、こちらも6年ぶりに450名台を回復。昨年より28名(6.6%)増で、志願倍率は4.60倍となった。(昨年は4.32倍)

器楽科は昨年、志願者423名のうち418名が受験し、99名が合格、実質競争倍率は4.22倍だった。

尚、器楽科の各専攻別の志願者数は、入試前日の2月24日に発表される集合時間表で明らかとなる。

「東京藝術大学 令和2年度 学部一般入試・別科志願者状況」(PDFファイル)(東京藝大入試情報サイト)

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効く言葉

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 才能は内なる可能性を表す「風」。創造性のスキルはその「風」を受けて、芸術という船を進める「帆」。「帆」がなければ、才能という「風」は吹き去っていくだけで、どこにも連れて行ってはくれない。

-ジェラルド・クリックスタイン-( <著者に聞く> ジェラルド・クリックスタイン氏インタビュー 『成功する音楽家の新習慣』が演奏家たちの熱い支持を集める理由

 ヴュータンは壮大なスタイルで書きました。その音楽はどこをとっても豊かでよく響くものです。自分のヴァイオリンをよく鳴らそうと思うなら必ずヴュータンを弾いてほしいですね。

-ウジェーヌ・イザイー(『ヴァイオリン・マスタリー 名演奏家24人のメッセージ』 全音楽譜出版社 P84)

 弦だとか弓の毛だとか、そんなことを意識しているようじゃだめなんだ。ヴァイオリンは弾くものじゃなく、歌うものだ。

-レオポルド・アウアー(『ヴァイオリン・マスタリー 名演奏家24人のメッセージ』 全音楽譜出版社 P31)

 ヨーロッパで暮し始めたころには、バイオリニストとして生きる覚悟を決めました。もう親からの仕送りもありません。シゲティのレッスン代はツケにしてもらい、コンクールに出て賞金を得るとまとめて支払い、なんとかしのぎました。

-前橋汀子(「君たちの時代に 先輩からの手紙/174 バイオリニスト・前橋汀子さん/下」-2016年4月23日付「毎日小学生新聞」

 (チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲のレッスンで)チャイコフスキーのオペラ『エフゲニー・オネーギン』は見ましたか? 見ないと弾けませんよ。

-ミハイル・ヴァイマン(「君たちの時代に 先輩からの手紙/173 バイオリニスト・前橋汀子さん/中」-2016年4月9日付「毎日小学生新聞」

 ニューヨーク・フィルの弦楽器セクションは特別な響きを持っています。我々のホールは管楽器にフィットしているので、弦にはハードワークが求められます。合奏に適合しつつも、際立った音を持つ奏者が求められています。

-グレン・ディクテロウ“What makes a concertmaster special?”-“The Strad”

149_Acropolis_Athens_in_2004photo by Harrieta171

 シベリウスの協奏曲はもう何百回と弾いていますが、今なお私は挑戦し続けています。これで良いのか悪いのかをいつも考え続けています。

-レオニダス・カヴァコス(“‘I’m exhausted by the time I reach the Sibelius third movement,’ says violinist Leonidas Kavakos”-“The Strad”

 このヴァイオリンは私が子供の頃にレコードで聴いたグリュミオーの声を持っています。まるで私がこの楽器と共に成長してきたかのように、グリュミオーは私の血に、私の耳に、何らかの形で痕跡をとどめてきたのです。

-フランク・ペーター・ツィンマーマン(“Frank Peter Zimmermann receives ‘General Dupont’, ‘Grumiaux’ Stradivarius on long-term loan”-“The Strad”

 バッハは演奏家に完璧な芸術的要素と技術的精巧を求める楽譜を残している。彼が意図するところには至らないまでも、30年以上、人前で演奏を続けてきた私にとって、今が全曲録音に挑戦するときだと感じた。

-五嶋みどり(「バッハと私の経験が糸になり、大きな布に」 五嶋みどり、「無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ」全曲録音発表-2016年1月15日付「産経ニュース」)

 マスタークラスは新たな先生を探すのには役立つが、あまりに多く取りすぎると生徒は混乱してしまう。

-パヴェル・ヴェルニコフ(“Playing in too many masterclasses can be confusing for the student, says violinist Pavel Vernikov”-“The Strad”

 いいかね、君はシャツにアイロンをあてているのではなく、楽器から音を引き出そうとしているのだよ。楽器に音を押し込んでどうするんだい?

-アーロン・ロザンド(“‘Every bow movement should be calculated,’ says violinist Aaron Rosand”-“The Strad”

143_640px-Waidhofen_Ybbs.Innenstadt_von_Zeller_Hochbrückephoto by Martin Hirsch

 以前、日本で公開レッスンをしたとき、若い学生がブラームスのソナタの1番を弾きました。でも、ただ音符を弾いているだけ。音楽になっていないのです。ブラームスは、この曲をオーストリア南部のケルンテン州にあるベルター湖畔で作曲しています。朝もやがかかったり、太陽の光が差し込んだりする風景のなかで生まれた曲だと一生懸命に説明するのですが、なかなか伝わらない。そういう場所や光景を知らなければイメージできませんし、そういう人にわかってもらうのは難しいですね。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:8 64歳」-2015年6月17日付「朝日新聞」)

 コンクリートに囲まれて育ち、人工的な経験ばかりした子には自然な演奏ができません。それは彼らの演奏を聴くとよくわかります。やはり自然と触れ合い、感じ、見聞きするなかで、いろんな感覚を養ってほしい。その経験は必ず生きます。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:8 64歳」-2015年6月17日付「朝日新聞」)

 (ウィーン国立音大で教えている生徒は10人ほど) 残念ですが、学生たちはスコアをなかなか見ないんですよ。曲の全体像をつかもうとしない。自分のパート譜は一生懸命勉強してもね。もちろん値段も高いし、経済的に厳しい。だからこそ、私の持っているスコアを見てほしい。スコアはとても大事です。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:8 64歳」-2015年6月17日付「朝日新聞」)

 (1970年の第4回チャイコフスキー国際コンクールは)出場した顔ぶれがすごかった。1位はギドン・クレーメルで、2位は指揮者になったウラジーミル・スピバコフと、藤川真弓。藤川さんは素晴らしい演奏でした。とにかく、すごい面々が本選まで進んでいましたから。私は最初でダメでした。でも最後まで会場に残って、ほかの人の演奏を聴きましたよ。コンクールはこの1回だけ。翌年、ウィーン・フィルのツアーで3週間旧ソ連へ行ったとき、コンクールで知り合った事務局の女性とモスクワで偶然再会したんです。「えっ、また来たの? 戻ってきたのね」と驚いていました。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:4 64歳」-2015年6月11日付「朝日新聞」)

 安いバイオリンを買ってもらい、まず父から習い始めました。たぶん2千円くらいのね。そのあと、地元のアマチュア楽団のコンサートマスターだった先生に付き、13歳くらいまで教えてもらいました。その先生に「ウィーンへ行きなさい」と勧められ、看護師だった父が働いていた病院の先生のつてを頼って、ウィーン国立音楽アカデミー(いまのウィーン国立音楽大学)のフランツ・サモヒル先生を紹介していただきました。

-ライナー・キュッヒル(「(人生の贈りもの)わたしの半生 ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル:2 64歳」-2015年6月9日付「朝日新聞」)

 慣れた音を再現するのでなく、あたかも今、曲が生まれているかのように、驚きながら弾きましょう。それが演奏。

-庄司紗矢香(「Interview:庄司紗矢香 バイオリンの心伝える 桐朋学園大「特命教授」として特別レッスン」

145_640px-Torino-pophoto by Giuseppe zeta

 私は工場生産のヴァイオリンで活動を始め、1956年のジュネーヴのコンクールに優勝した。楽器は平凡なドイツ製のヴァイオリンで、アマチュア演奏家であった私の父の楽器だったが、私にはそれしかなかったし、練習をしたのもその楽器だった。コンクールで優勝する妨げにはならなかった。

-サルヴァトーレ・アッカルド(『アッカルド ヴァイオリンを語る』音楽之友社)

 私は生徒からコンクールに参加する相談を受けると、それをあまり重要視しないなら、あまりそれにこだわらないなら、という条件をつけて、たいてい参加を勧める。コンクールだって正しい考え方で臨めば、非常によい経験になるのである。コンクールは人前で演奏する機会を提供してくれる。そして人前で演奏することは、音楽家の成長・成熟にとても大事なことなのである。

-サルヴァトーレ・アッカルド(『アッカルド ヴァイオリンを語る』音楽之友社 P41)

 うまくやろうなどという考えはどうでもよい。その瞬間、上手に弾こうなんて思うな。ただ弾け!

-イヴリー・ギトリス(『イヴリー・ギトリス ザ・ヴァイオリニスト』春秋社 P186)

 僕の生活条件として、なんでもないことは流行に従う。重大なことは道徳に従う。芸術のことは自分に従う。

-小津安二郎(米谷紳之介著『老いの流儀 小津安二郎の言葉』星雲社 P46)

 同じバイオリニストでも、“バイオリンが上手い” で終わる人と、巨匠にまで登りつめる人がいます。その違いは野心にあります。要は、巨匠になるために必要な時間、バイオリンの練習を続けたいかどうかなのです。

-ジェリー・ヤン(「あの有名人たちが卒業式で学生に語っていたこと」)

135_640px-ZW17_DSC0182photo by Wistula

 (国際コンクールは) たしかに一番良い演奏家がいつも受賞するとは限らないでしょう。なぜかと申しますと、コンクールを勝ちぬくことに適していない性格の音楽家もいるからです。しかしそれにもかかわらず、コンクールというのは、やはり音楽家のために社会的な役割を果たしていると、私は思います。

-ヘンリク・シェリング(千歳八郎著『大ヴァイオリニストがあなたに伝えたいこと』春秋社 P160)

 一流の指揮者に必要な能力とは、末席の最も未熟な奏者をも、まるで彼らの各楽器のほんのわずかな伴奏部分の演奏によって全体の出来栄えが決まるかのように演奏させる能力である。

-ピーター・ドラッカー(山岸淳子著『ドラッカーとオーケストラの組織論』PHP新書 P39)

 バッハを弾くヴァイオリニストが、ただ音色の効果だけを狙って、ロマン派風のG線の運指に安住していたり、対位法の特長を無視して声部を混同していたり、絶対にバッハにはありえないロマンティックな効果を生み出していたりすれば、たとえテクニックがいかに秀逸であろうとも、そのヴァイオリニストはまちがった道に踏み入ったのだと判断するしかない。

-ユーディ・メニューイン(『ヴァイオリンを愛する友へ』音楽之友社)

 ヴァイオリンを買うときは、四本の弦の音が揃っていて音の出しやすい、音程の切れのよい楽器で、耳につかないパリッとした音の出るものを選ぶと大体間違いないようである。

-佐々木庸一(『新版 魔のヴァイオリン』音楽之友社 P192)

 私は独力で本能を頼りにバッハの音楽と向きあった。そこから最大限に学ぼうと試み、ヴァイオリンで《平均律クラヴィーア曲集》を弾いてみることさえした。

-ナタン・ミルシテイン (ジャン=ミシェル・モルク著『偉大なるヴァイオリニストたち』 ヤマハミュージックメディア P141)

127_640px-Lateral_view_of_the_Riga_Nativity_of_Christ_Orthodox_Cathedralphoto by Tiago Fioreze

 物心ついた頃からずっと、私は自分にとってエモーショナルな意味を感じられる音楽を弾こうとしてきました。演奏回数が多い曲は、聴衆に気に入られるように弾かねばという現象の犠牲になっています。私にとって、音楽は譜面と演奏者のあいだだけの事柄なのです。

-ギドン・クレーメル(ジャン=ミシェル・モルク著『偉大なるヴァイオリニストたち』 ヤマハミュージックメディア P343)

 十七歳から三十歳の間のどこにでも危機的状態が起こり得ると思う。年長者の敷いたレールの上に乗っていたのが、その同じ道を走り続けるかどうか、自分で決心しなければならない年代であるからです。それは分岐点であり、みんなが通過しなければならないと思います。

-ドロシー・ディレイ(『天才を育てる』音楽之友社 P232)

 ハイフェッツが優れたヴァイオリニストだったとすると、シゲティは優れた音楽家であり、シゲティを支持した聴衆は、見事なヴァイオリン演奏と、ヴァイオリンで奏でる見事な音楽との違いを見わけることができたのだ。

マイケル・スタインバーグ (ジャン=ミシェル・モルク著『偉大なるヴァイオリニストたち』 ヤマハミュージックメディア P84)

 ひとつ大きな深呼吸をしましょう。気がついた時に深呼吸をするように癖をつけます。緊張がドを過ぎないように深呼吸をするのです。ドを過ぎる場合には大抵呼吸が浅くなっています。そして、酸素が脳まで行き渡らなくなっているのです。

-千住真理子(『ヴァイオリニスト 20の哲学』ヤマハミュージックメディア P83)

 世の中にはごまんと楽器があり、「無名でもびっくりするほどチャーミングな音が出る楽器」を発見することもあります。人が嫌っている楽器も、なぜか自分が弾くと良い音が出る、なんていうこともあります。ですから、楽器は絶対的なものではなく、まさに弾き手との相性なのです。

-千住真理子(『ヴァイオリニスト 20の哲学』ヤマハミュージックメディア P108-109)

117_640px-Central_part_of_Tbilisiphoto by Dmitry Gerasimov

 宗教心があろうとなかろうと、確かに何ものかの存在を信じさせてくれる。それがバッハの音楽です。

-リサ・バティアシュヴィリ(“Politics Is Personal, and Professional”

 コンクールの場で自身の実力が発揮されなくても、持ち味や個性が受け入れられなくても、審査員に評価されなくても、音楽のすばらしさを追い続けてください。それですべての道が閉ざされたわけではないからです。あなたにないものを、ほかの人が持っていたからといって、あなたの良いところが失われることはありません。あなたには、ほかの人が持っていないような良いところがきっとあるはずなのです。

-千住真理子(『ヴァイオリニスト 20の哲学』ヤマハミュージックメディア P14-15)

 十四時間さらった翌日は、筋肉が疲れてはいますが、明らかにテクニックが身についています。指の回りが良くなり、テクニックの冴えも出てきます。音は磨かれたように艶が出てきて、細かくて速い音符が自分にはゆっくりはっきり聴こえてくるようになります。

-千住真理子(『ヴァイオリニスト 20の哲学』ヤマハミュージックメディア P21)

 興味がそそられることはなんでも深入りしてみること。それを大切にしなさい。再発見し、提供し、どんなことをしても、それがもう一度花開くよう努力することです。

-ジャクリーヌ・デュ・プレ(檜山乃武著 『音楽家の名言3』ヤマハミュージックメディア P32)


故障知らずの「左手」を見分ける 5つのチェックポイント

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あなたの左手は故障知らずの「ヴァイオリニストの左手」になっているでしょうか?

以下に、それを見分けるための5つのチェックポイントと、現状を改善するための練習法を紹介します。

左手の指を強く押さえつけていないか

左手の指を力いっぱい押さえつけてはいませんか?

ヴァイオリンはポジションごとに、最もよく鳴る押さえ方というものがあります。その加減をつかむことが大切です。

【改善のための練習法】左の二の腕を鍛えよう

音がよく鳴る押さえ方を実現するには、まず手首から先が自由に動くようにする必要があります。

そのためには、左の二の腕(肩から肘まで)を適度に鍛えましょう。

二の腕が弱いために必要以上に肩が上がり、結果として左腕全体に負担がかかり、手首から先が固くなってしまうケースがあるからです。

500gくらいのマジックテープ付きの軽いダンベルを使用。

左の二の腕が動かないように右手で支えて、ダンベルを持って曲げ伸ばし運動を行う。(右手のボウイングの要領です)

次に二の腕を意識して左腕全体でダンベルを水平に持ち上げる。このときは手首を内側に曲げて、関節にかかる負担を軽くする。

同じダンベル運動を右手でも行う。右手で力の抜けたボウイングができるようになれば、楽器も良く鳴り、必ず左手にも良い影響を与える。

指の付け根は広がっているか

指の付け根とその先の2つの間接がゴツゴツしていれば、指自体に筋肉がついていて、ヴァイオリニストの左手になっている証と言えます。

そうなっていない場合は、まだ指先に力が入っています。

指の付け根から動かすことを意識して練習する必要があります。

前回の記事を参考にしてみて下さい。

ヴァイオリニストの左手に作り変える

実は最も厄介なのは薬指です。

左指を動かした際に、薬指が自分の鼻先を向いているかどうかチェックしてみて下さい。

薬指が弱いと、しばしば指先がカクっと、ネックの先のほうを向いてしまうはずです。

ポジションチェンジで手首が出ていないか

ポジションチェンジで下降する際、手首が出ていませんか?

指が届かない場合や強く押さえすぎる場合に、手首で引っ張りながら下降してしまうことがあります。

【改善のための練習法】スケール練習

スケールのアルペジオを弾かせて、ポジションチェンジの瞬間に手首に軽く指を添えてやる。

こうして手首を支点にして、瞬間的に力を抜き、移動することを覚えさせる。

右手のボウイングで肘を高くしすぎていないか

左手がテーマなのに、なぜ右手が問題なのかと思う人もいるかもしれません。

実は右手のボウイングの肘が高すぎると、弓と腕の重さが弦にかからなくなり、楽器が鳴らない⇒更に力が入る⇒左手も力が入って指が広がらなくなるという悪循環をきたしてしまうのです。

左指の拡張練習をやりすぎていないか

左指の拡張練習ですが、やりすぎは禁物です。

ヴァイオリンは肘を深く曲げた不自然な状態で指を動かすので、どうしても余計な力が入りがちで、小学校高学年から中学校の時期に始めた過度な拡張練習がたたって、後々苦しむ例があります。

音高志望なら副科ピアノの練習の際に、コルトーのピアノメトードの第4章あたりを使ってみるのも手です。

ただし、これも一日5分を限度とした短時間練習を毎日続ける形にし、痛みがくるような無理はしないことを厳守しましょう。

※この記事は neko 語録の原文にできるだけ忠実に、分かりやすい形で編集しています。

コルトーのピアノメトード


パリのサラベール社が発行するアルフレッド・コルトーの世界的名著、「ピアノのテクニックの合理的原則」の日本語版
訳者は八田惇氏(元大阪音大学教授)で難解な原文を見事に解りやすく翻訳

コルトーのピアノメトード アルフレッド・コルトー著/八田惇 訳・校閲

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【藝大入試2020】ヴァイオリン51名、ピアノ121名が志願

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【前年比】ヴァイオリン2名増、ピアノ3名増

2020年2月25日(火)から令和2(2020)年度東京藝術大学音楽学部の入学試験が始まる。

器楽科は2月25日(火)~27日(木)に専攻実技第1回の試験が行われるが(※)、これに先立ち前日の2月24日(月)に各専攻の集合時間と注意事項が発表された。※古楽は3月5日に実施

集合時間表から、今年の器楽科各専攻の志願者数が判明、志願者数は全体で454名で、昨年より31名増加した。

ヴァイオリンは51名で、昨年より2名増え、ピアノも121名と昨年より3名増加した。

その他弦楽器は5名減少、管打楽器は22名増加した。

各専攻別の今年の志願者数は以下の通り。※カッコ内は昨年

  • ピアノ121名(118名)、オルガン6名(1名)、ヴァイオリン51名(49名)、ヴィオラ3名(7名)、チェロ10名(10名)、コントラバス9名(13名)、ハープ4名(1名)、フルート34名(33名)、オーボエ19名(11名)、クラリネット26名(26名)、ファゴット15名(6名)、サクソフォーン34名(34名)、トランペット33名(21名)、ホルン21名(24名)、テナー・トロンボーン12名(22名)、バス・トロンボーン2名(3名)、ユーフォニアム8名(7名)、チューバ8名(10名)、打楽器30名(23名)、チェンバロ3名(2名)、リコーダー3名(2名)、バロック・ヴァイオリン2名(0名)、計454名(423名)

昨年は、器楽科全体で志願者423名のうち418名が受験し、最終合格者は99名で、実質競争倍率は4.22倍だった。

ヴァイオリン専攻は昨年、49名が志願、32名が第1次合格、26名が第2次合格、22名が最終合格、志願倍率は2.23倍だった。

今年のヴァイオリン専攻の課題曲は、第1回(1次)がカール・フレッシュ:スケール・システム ハ短調とパガニーニ:24のカプリース 第22番、第2回(2次)がバッハ:無伴奏ソナタ 第3番 第3楽章(ラルゴ)とドヴォルザーク:協奏曲 イ短調 第1楽章。

ヴァイオリンなど弦楽器専攻は、第1次と第2次はそれぞれ100点満点の高得点順で合否が決定され、最終合否は第1次+第2次合計200点満点の高得点順に加え、音楽に関する基礎能力検査・副科ピアノ・センター試験の結果(基準点未満は不合格)と調査書を総合的に判断して決定される。

【藝大】合否判定基準に言及-令和2年度音楽学部募集要項

専攻実技第1回の結果は、弦楽器とピアノが2月28日(金)16:00~、管打楽器が3月2日(月)16:00~に発表される。

「入試日程・合格発表」(東京藝術大学入試情報サイト)

photo by axona AICHI

【芸大入試のリアル】偏差値 “ありえね” 受験常識通じぬ「異界」

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「美校」入試は予備校全盛、浪人率7割

東京・池袋にある「すいどーばた美術学院」。

2019年度の東京藝術大学美術学部合格者数は84名で、5年連続で全国トップ。

専攻別でも油画・彫刻・工芸・先端芸術表現で全国第1位と、ダントツの合格実績を誇っている。

ところが、そのうちの現役合格者数を見てみると、84名中たったの18名。

全体の2割ほどにすぎない。

ためしに、東京藝大が2020年度受験生向けの「大学案内」で公表しているデータを見てみよう。

これによれば、美術学部の2019年度入学者231名のうち、現役は全体の34.6%。

1浪が28.1%、2浪が17.3%、3浪が9.1%、4浪以上が8.7%、その他大検等が2.2%という分布状況になっている。

現役は約3割。7割が浪人で、そのうち3浪以上の「多浪」も2割ほどいることになる。

他の国公立大学、例えば東京大学は現役が約7割で浪人が3割。現役が明らかに優勢だ。

浪人率が圧倒的に高い東京藝大(以下藝大)美術学部の入試がいかに「ありえない」特異な世界かがわかるだろう。

かくして、藝大美術学部受験生は、「すいどーばた」や「新美」(新宿美術学院)、「御茶美」(御茶の水美術学院)など、藝大合格実績をウリにする美術予備校に通い、競争率10倍の超難関に多浪覚悟で挑み続ける。

東京藝大卒の漫画家が描く 藝大をめざして青春を燃やすスポ根受験物語


美術なんて全く知らなかった高校生の主人公が、ふとしたきっかけから東京藝術大学の絵画科を目指す
舞台となる美術予備校のモデルは新美(新宿美術学院)
著者の山口つばさ氏は都立芸術高校から現役で東京藝大油画科に合格

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)
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photo 東京藝術大学美術館 by Wiiii

「音校」入試は門下・個人レッスン全盛 現役率8割

藝大美術学部入学者に出身校を問えば、ほぼ全員が高校名ではなく美術予備校名を答えると言われるほど受験産業ドップリ状態の「美校」入試に対して、さて藝大のもう一方の入試、「音校」入試はどのような状況に置かれているのだろうか?
※藝大内ではかつての東京美術学校と東京音楽学校の伝統から、美術学部を「美校」、音楽学部を「音校」と呼び習わす。

そこは「美校」とはまさに真逆で、受験予備校はほぼ皆無。

個人レッスンのみが幅を利かせる、これも世間一般から見たら「ありえない」世界が展開している。

「音校」をめざす場合は、幼少期からヴァイオリンやピアノの個人レッスンをスタートさせ、中学生になるまでには、藝大の教授陣(現・元)あるいは藝大出身の指導者に師事する。

そして、そのうちのトップ層はまず、1クラス(約40名)しか募集しない藝大の附属高校(東京藝術大学音楽学部附属音楽高校)を受験する。

【芸高】 平成26年度 東京藝大附属高入試を振り返る

「音校」入試においても、音楽専門予備校(ソルフェージュなどの受験副教科を中心に指導)は一部存在する。

しかし、実質的に入試合否の鍵を握っているのは、幼少期からの厳しい個人レッスンによって培われてきた専攻実技の力だ。

だから、「音校」入試は、「美校」入試とは正反対で、現役が優勢。2019年度入学者の現役率は8割に達している。

実技の力は、幼少期からの長年の積み重ねにより形成されており、1年や2年浪人しても、その水準を飛躍的に高めることは難しい。

結果として、現役で受かるべき実力にある人が受かるという、現役優位の入試となっているのだ。
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photo 東京芸術大学 赤レンガ1号館 by 663highland

無意味な藝大音楽学部の偏差値データ

ほぼ「専攻実技がすべて」の藝大入試。

東大や京大などの一般大学の入試情報を扱う受験予備校が提供している偏差値データは、あくまでもセンター試験(2021年からは共通テスト)や学科試験に関するもの。

当然ながら実技重視の藝大入試においては、あってないようなものに等しい。

ためしに、「ベネッセ」 が提供している藝大音楽学部の難易度(偏差値)を見てみよう。

音楽環境創造科60、楽理科59、器楽科・声楽科53、作曲科・指揮科・邦楽科52

音楽環境創造科と楽理科は、センター試験3教科に、個別学力試験で学科や小論文を課し、それらの総合判定で合否が決まるという、一般の大学と似た方式を取っている。(楽理科には聴音書き取り等の実技もある)

一方、器楽科などでは、センター試験2教科(国語・英語)を課すものの、個別学力試験は実技のみで、それが重視され、センター試験の成績は最終判定時に用いるのみである。
(※但し2020年の募集要項には、センター試験についてもその年度の基準点が存在し、それを下回った場合は不合格になるとの記述が見られる。)

受験産業が提供する偏差値データは、合否調査にセンターリサーチや模試の結果等を加えて算出されるものだ。

そもそも個別試験の実技が重視される藝大音楽学部の入試においては、教科の成績のみによって設定されたそのような合否ラインはまったく意味を持たないことになる。

東京芸術大学 (2020年版大学入試シリーズ)

共通テストでも6割確保が目安か?

とはいえ、やはり気になるのは、藝大音楽学部志望者はセンター試験で一体何点くらい取っているのか、という点だろう。

2021年1月から、センター試験に代わって大学入学共通テストが実施されるが、ここでは過去のデータ蓄積があるセンター試験の得点率を概観しつつ、共通テストの得点率を予想してみることにする。

以下「スタディサプリ」 が提供するセンター得点率のデータを見てみよう。

音楽環境創造科80%、楽理科80%、作曲科72%、指揮科・邦楽科62%、器楽科61%、声楽科57%

データ自体があったとしても、わずかな数に違いないが、音環と楽理以外の科では、合格可能性が50%であるセンター試験の得点率は、ほぼ6割〜6割5分程度と推定される。
(※収集データが少ないので、センター試験が突出してできた人がいた年は、一部の科では得点率が跳ね上がるという現象が生じがちだ。)

以上より共通テストでも同じくらいの得点率が想定できるだろう。

無論、共通テストで6割以上、さらには7割・8割取ったところで、実技重視の藝大入試の合否に決定的な意味を持つことはないが、一方で2割・3割しか取れなかった場合は、最終判定に向けて安穏としていられなくなることはわかる。

次回から、集められ得る限りの公表データを用い、また受験経験者の口承伝承の記録も参考にしつつ、さらに深く藝大入試のリアル(現実)に迫っていく。

シリーズ【芸大入試のリアル】

【芸大入試のリアル②】「現実倍率」と「黒ひげ危機一髪」

【芸大入試のリアル③】専攻実技 4つの “常ならぬ事態”

『最後の秘境 東京藝大-天才たちのカオスな日常-』(新潮社)がコミック化

藝大生自身にとってはいたって普通、しかし世間から見たら秘境としか言いようがない世界。それを目の当たりにすれば、一般の読者は驚き、あきれ、でも最後はその真剣な姿に心を打たれるに違いない。

著者の二宮敦人氏はミステリー作家、奥さんは現役の「美校生」(東京藝大美術学部彫刻科)。

深夜に半紙で自分の型をとったり、藝大の生協で買ったというガスマスクをキッチンにポンと置くわが妻…

奥さんに導かれるように、謎の秘境に足を踏み入れる著者。「美校」と「音校」の全学科の学生にインタビューを敢行し、彼らの制作・演奏現場にも潜入した。

そんなベストセラー書籍がついにコミックで登場!


最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常 1巻: バンチコミックス


最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常― 2巻: バンチコミックス


最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―(新潮文庫)

【芸大入試のリアル②】「現実倍率」と「黒ひげ危機一髪」

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もうひとつの倍率の存在

2019年度の東京藝大音楽学部器楽科の入試結果は以下の通りであった。

 募集人員: 98名  志願者: 423名  受験者: 418名  合格者: 99名

受験者数÷合格者数の「実質倍率」は、4.2倍である。

しかしながら藝大器楽科入試においては、藝大大附属高校(藝高)出身者以外の学生(以下、外部生)にとって、この「実質倍李」とは別に、より実態に近い入試競争率を示す、もうひとつの倍率が存在する事実を指摘しておかなければならない。

それは、藝高生の藝大器楽科合格率が外部生のそれよりかなり高く推移しているという過去の経験則を踏まえた上で算出される、外部生にとっての現実的な難易度を示す倍率である。

ここではそれを「現実倍率」と呼ぶことにしよう。

藝高の公式サイトには、各年度の生徒の藝大受験結果が公表されている。

2019年度入試においては、藝高生(2018年度卒)は現役40名が藝大を受験して、合格者は37名だった。

つまり藝高生内での「実質倍率」は約1.1倍。過去5年間を見ても、ほぼ1.1倍で推移しており、40名ほどが受けて、2~4名が不合格になるパターンが続いている。

藝大入試よりも難関と言われる藝高入試を突破したのに、それでも2~4名が藝大を不合格になってしまうというのは、藝高生にとっては考えたくない「不都合な真実」である。

しかしながら、外部生にとってはそれ以上に、藝高生の合格率の高さが厳然と存在することを思い知らされるデータであろう。

つまり、この「藝高枠」を取り除いて考えないと、外部生にとっての本当の競争倍率は出てこないことになる。

「実質倍率」4.2倍⇒「現実倍率」5.6倍

2019年度に藝大を受験した40名の藝高生のうち、過去の藝高入試の楽器別合格者のデータから推計すると、器楽専攻の受験者は34名で、合格者は31名程度と考えられる。

あくまでも推定値であるが、さほど現実から遠い数字ではないだろう。

すると、2019年度の藝大器楽科入試の外部生にとっての「現実倍率」は、受験者384名(全体418名-藝高34名)、合格者68名(全体99名-藝高31名)より、5.6倍だったことになる。※注)藝高の過年度卒業の受験生の合格率は推計に加味していない

無論、管楽器では年度によって藝高生がいないパートもあり、倍率の持つ意味は楽器によって異なってくるが、受験者の多いヴァイオリンやピアノではこの倍率が持つ意味は小さくはない。

ヴァイオリンの場合、20名ほどの藝大合格者のほぼ半数は「藝高枠」と考えておくべきだろう。

まとめ

外部生は「実質倍率」を1.3~1.4ポイントあげた「現実倍率」を想定しておく。

孤高を行く外部生、「黒ひげ危機一髪」状態の藝高生

外部生が感じる「藝高の壁」は、倍率だけに留まらない。

実技試験の会場は藝大で、藝高生にとっては「ホーム」、外部生にとっては完全「アウェー」となる。

試験官は藝大弦楽専攻の教官らで、高校での実技レッスンや試験で藝高生にとってはお馴染み。気持ち的に「ホーム」というのは強みとなる。

「私ら藝高生」というプライドも加わって、「同調行動を取りがちな」(俗な言葉で「つるみがちな」)藝高生を横目に、外部生は孤高を貫かねばならない。

実技試験が1次、2次と進行するにつれて、当然ながら受験生に占める藝高生率は高まっていく。

首都圏なら、高校は違えど、同じ門下だったり、「学生音コン」や他のコンクールで顔馴染みだったりと、言葉を交わせる藝高生は見つかるかもしれないが、それ以外の地域から来た外部生にはそれもなかなか難しくなる。

一方、藝高生も、「ホーム」での戦いに気を緩めている場合ではない。

2~4名は確実に「落ちる」のだ。

誰が「危機一髪状態の黒ひげ」をジャンプさせるのか。

専攻実技はともあれ、共通テストについては、その平均点は外部生よりも藝高生のほうがおそらくは低いであろう現実が存在してもいるのだ。

「壁」は、グローバル化の阻害要因

藝高生と外部生との間に見られる心理的な「壁」は、えてして入学後も存在し続けることにもなりかねない。

附属高校のある私立大学などではよく見られる現象ではあるが、やはり藝高生は外部生に気さくに声をかけ、外部生は藝高生の輪の中に飛び込んでいくなどして、お互いに壁を取り除いていく努力をする必要があるだろう。

グローバル人材とは、「専門性」と「創造力」と「教養」を持ち、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するための「コミュニケーション能力」と「協調性」を持っている人のことを言う。

安心し気を許せる者同士だけで固まるという行動パターンは、海外に出た時には、外国語ができないことも加わって、今度は日本人だけで固まるという行動パターンへと容易に転換しがちだ。日本人のこれまでの悪しき習性に陥ってしまうことになりかねないのだ。

だから、固まらず、誰とでも融和できるようにする。

グローバル時代は、そんなメンタリティを養っていくことが求められている。


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大学入試は人生の岐路である。

「そんなことは言われなくてもわかっている。心をかき乱さないで欲しい。」

そう感じる受験生は、以下は読まないで頂きたい。

しかし、受験が2年後、3年後、さらにずっとその先で、「入試の課題曲は学コンに比べればレベルが低い。冬場まではコンクール対策で押して、その勢いで受ければ、入試なんて楽勝」と、入試をコンクールの延長、あるいはそれ以下と、かなり甘く考えている人は、ぜひこれから書くことを読んで、藝大専攻実技のリアルと今から向き合って頂きたいと思う。

これは早ければ早いほど良い。

“見ないふり” して遠ざけてはならない

藝大入試の専攻実技試験には、あなたがこれまでの演奏人生でまだ一度も経験したことのない未曾有の事態が待ち受けていると思っておいたほうがよいだろう。

いかにコンクール経験が豊富でも、それらに関して何の対策もしなければ、合格を手にするのは容易ではない。

実際、コンクールの入賞実績がある受験生が、入試の専攻実技で落とされるケースは、それほど珍しくはないのだ。

入試で待ち受ける事態について深く考えすぎると、かえってプレッシャーになってしまうので、それを見ないふりして、やり過ごし、「何とかなるだろう」という気持ちのまま受験に臨んでしまうケースもあるが、それはリスクの大きさから言っても、少々無謀と言わざるを得ない。

ここでは、人生の岐路となる入試に伴う専攻実技の4つの常ならぬ事態と、それらがもたらす心理的状況をあえて挙げてみることにする。

まずはそれらに正面から向き合って頂きたいと思う。

「チャレンジは1度きり」という切迫した状況

コンクールなら、駄目でも別のコンクールがある。「学コン」は1年に1度だけだが、毎年受けられる。

しかし大学入試は落ちれば、1年後、しかもそれがほぼラストチャンスになると言ってよい。美大入試と違って、浪人を何年も重ねる選択肢はありえないのだ。

そして、浪人できない事情が加われば、チャンスはたったの1度きりとなる。

そのプレッシャーは並大抵ではない。

「アラ探しの数十の冷たい視線」にさらされること

器楽科専攻の担当教官らの前で、1次は音階とパガニーニを弾く。

まずは正確に。「アラ探しに余念がない数十の冷たい視線」をものともせず、ミスしないで、正しい音程で弾き切らなければならない。

「ミスできない」という思いに、上記の「チャンスは1度きり」という思いが重なってくると、相当に追い込まれた精神状態となる。かなりのプレッシャーが受験生に襲い掛かってくると考えるべきだろう。

そして、プレッシャーがあるからと言って、演奏が安全運転に終始していいわけではない。(特に2次の協奏曲では)

「寒さ」

専攻実技の試験は2月末から始まる。まだ冬は終わっていない。

室内の暖房が十分でも、手先が冷えて、かじかんで、そこにプレッシャーが加わると、満足に指が動かずに普段の演奏ができなくなる危険性がある。

「共通テストの結果」が胸の奥で “ひっかかっている”

2021年から導入される共通テストは、これまでのセンター試験と同様、自己採点によって専攻実技試験の前にその得点がすでにわかっていることになる。

センター試験では「6割は欲しい」とされていたので、共通テストも同じような得点ラインが想定されるが、2020年の募集要項に記載されたように、その年度の基準点を下回った場合は不合格となる可能性がある。

おそらく7~8割取れていれば心配はなくなり、メインの専攻実技に集中できるが、5割を切って3割~4割レベルに低迷してしまうようだと、胸の奥にこの共通テストの芳しくない結果がひっかかったままとなる。

とても不安な心理状態の中で、専攻実技に臨まざるを得なくなってしまうのだ。

専攻するバイオリンと、割合はそれほどでもないが決して軽んずることができない勉強との両立が、厳しく試される機会こそが入試なのである。

あらゆる事態を想定しておく

リスク対策の基本は、まずあらゆる事態を想定しておくこと。

上記の不都合な真実を「見ないふり」して、入試当日に、いきなりその現場に立たされて、「こんなはずではなかった」「こんなに緊張するとは思わなかった」となってしまうことだけは、まず避けなければならない。

「チャレンジは1度きり」という切迫した状況の中で、「アラ探しの数十の冷たい視線」にさらされ、「寒さ」に手がかじかみ、「共通テストの結果」に気が重くなりながらも、試験場ではミスなく闊達に表現豊かに演奏を完遂しなければならない。

そう考えると、受験はコンクールの季節を過ぎた後の付け足し程度のイベントでは決してあり得ないことがわかるだろう。

もっとも藝高生の場合は、同様の(あるいはそれ以上に苛酷な)事態と心理状況を藝高受験時にすでに1度経験済みで、そこを切り抜けてきている。それはかなりの強みとなるだろうが、もう1度、入試のプレッシャーをはねのけたハイパフォーマンスを試験場で実践しなければならない。

そして、共通テストの出来は、多くの藝高生にとっては無視できない “ひっかかり” となるかもしれない。

どんな状況でも弾ける訓練、共通テスト対策、楽器へのケア

あらゆる事態を想定した上で、講ずるべき対策の基本は、プレッシャーがかかる状況でも普段の練習の成果が出せるように訓練することに尽きるだろう。

人前で、できるだけ音階やパガニーニを弾く。それも朝起きた直後や、運動したり移動した直後などに、一切の準備なしに、すぐに弾いてみる等、どんな状況でも当たり前に弾けるようにトレーニングする。

また、控え室で手袋をはめる等の冬場の寒さ対策も、日頃から意識して行い、習慣化しておく必要がある。

そして、共通テスト科目の国語と英語。普段の授業と定期試験にまじめに取り組むことと、受験期は夏休み前から共通テスト形式の問題集を使って、徹底的なパターン・プラクティスを繰り返すことだ。必要なら模試も受けておきたい。

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あとは、楽器へのケアも怠りなく。これはコンクール前でも実践していると思うが、入試前は特に念入りに、弦の張り替え、弓の毛の張り替え、楽器の調整のタイミングをよく見計らって、試験場でトラブルなく最高の状態で演奏できるようにチューンナップを万全に施しておく必要がある。

受験用にもし楽器を借りる場合は、その楽器がどれくらい違いを生み出せるのかという点と、扱い慣れた自分の楽器がもたらす安心感・操作性とを天秤にかけて、慎重に判断する必要があるだろう。

借りた楽器だと、弦の張り替え時期や調整の時期も、今までの楽器と異なってきて、経験が生かせなくなる可能性があるので、その点は大いに注意する必要がある。

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