パリ国立高等音楽院とローザンヌ音楽院で多くの俊英を育て上げ、著名な国際コンクールの審査委員長や審査員を歴任しているピエール・アモイヤル氏が、弦楽雑誌 “The Strad” で、コンクールの審査における重要な観点について見解を述べた。
コンクールにおいて、私は常に基本的な価値を備えていると認められる演奏家を探し求めている。
基本的な価値、それは素晴らしき我が師ヤッシャ・ハイフェッツから私自身が光栄にも受け継いできたものだ。
私は何年にも渡りコンサート・ヴァイオリニストとして、あるいは指導者として、この価値を発展させ、伝承しようと努めてきた。
コンクールの審査員は次の3つの異なった観点から、コンテスタントを注意深く観察していると私は考えている。
- 楽器を演奏する技能: 運弓の技術、発音とイントネーション、緩急とタイミング、シフティング、アーティキュレーション、ヴィブラートのセンスなど。
- 音楽の知識: 作曲家の文化的背景への理解、スコアへのリスペクト、異なった様式に対する深い理解。
- 十分に高められたステージングセンス: 音を際立たせ、音色をコントロールできること、他の楽器やオーケストラと調和できること、ポジティブな存在感、テイストの良さ、エレガンス、そしてコミュニケーション能力に富んだ強い個性。
私は、その人のコンサートなら何年待っても必ず行ってみたいと思わせるような演奏家を探し求めている。
そうした演奏家に必要なものは、才能、知性、感性、好奇心、勤勉さ、健康、メンタルコントロール、誠実さ、決断力、そして良き指導者とのコラボレーション・・・
これらすべてを兼ね備えた人は、めったにいない。
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