あなたの左手は故障知らずの「ヴァイオリニストの左手」になっているでしょうか?
以下に、それを見分けるための5つのチェックポイントと、現状を改善するための練習法を紹介します。
左手の指を強く押さえつけていないか
左手の指を力いっぱい押さえつけてはいませんか?
ヴァイオリンはポジションごとに、最もよく鳴る押さえ方というものがあります。その加減をつかむことが大切です。
【改善のための練習法】左の二の腕を鍛えよう
音がよく鳴る押さえ方を実現するには、まず手首から先が自由に動くようにする必要があります。
そのためには、左の二の腕(肩から肘まで)を適度に鍛えましょう。
二の腕が弱いために必要以上に肩が上がり、結果として左腕全体に負担がかかり、手首から先が固くなってしまうケースがあるからです。
500gくらいのマジックテープ付きの軽いダンベルを使用。
左の二の腕が動かないように右手で支えて、ダンベルを持って曲げ伸ばし運動を行う。(右手のボウイングの要領です)
次に二の腕を意識して左腕全体でダンベルを水平に持ち上げる。このときは手首を内側に曲げて、関節にかかる負担を軽くする。
同じダンベル運動を右手でも行う。右手で力の抜けたボウイングができるようになれば、楽器も良く鳴り、必ず左手にも良い影響を与える。
指の付け根は広がっているか
指の付け根とその先の2つの間接がゴツゴツしていれば、指自体に筋肉がついていて、ヴァイオリニストの左手になっている証と言えます。
そうなっていない場合は、まだ指先に力が入っています。
指の付け根から動かすことを意識して練習する必要があります。
前回の記事を参考にしてみて下さい。
実は最も厄介なのは薬指です。
左指を動かした際に、薬指が自分の鼻先を向いているかどうかチェックしてみて下さい。
薬指が弱いと、しばしば指先がカクっと、ネックの先のほうを向いてしまうはずです。
ポジションチェンジで手首が出ていないか
ポジションチェンジで下降する際、手首が出ていませんか?
指が届かない場合や強く押さえすぎる場合に、手首で引っ張りながら下降してしまうことがあります。
【改善のための練習法】スケール練習
スケールのアルペジオを弾かせて、ポジションチェンジの瞬間に手首に軽く指を添えてやる。
こうして手首を支点にして、瞬間的に力を抜き、移動することを覚えさせる。
右手のボウイングで肘を高くしすぎていないか
左手がテーマなのに、なぜ右手が問題なのかと思う人もいるかもしれません。
実は右手のボウイングの肘が高すぎると、弓と腕の重さが弦にかからなくなり、楽器が鳴らない⇒更に力が入る⇒左手も力が入って指が広がらなくなるという悪循環をきたしてしまうのです。
左指の拡張練習をやりすぎていないか
左指の拡張練習ですが、やりすぎは禁物です。
ヴァイオリンは肘を深く曲げた不自然な状態で指を動かすので、どうしても余計な力が入りがちで、小学校高学年から中学校の時期に始めた過度な拡張練習がたたって、後々苦しむ例があります。
音高志望なら副科ピアノの練習の際に、コルトーのピアノメトードの第4章あたりを使ってみるのも手です。
ただし、これも一日5分を限度とした短時間練習を毎日続ける形にし、痛みがくるような無理はしないことを厳守しましょう。
※この記事は neko 語録の原文にできるだけ忠実に、分かりやすい形で編集しています。
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パリのサラベール社が発行するアルフレッド・コルトーの世界的名著、「ピアノのテクニックの合理的原則」の日本語版
訳者は八田惇氏(元大阪音大学教授)で難解な原文を見事に解りやすく翻訳
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