歌劇場でのオペラ・バレエ公演。それに楽友協会での定期・一般公演、国内外ツアー、音楽祭、室内楽、教育活動等が加わる。
まさに年中無休状態のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。
特に4名体制で回すコンサートマスターのポジションは多忙を極め、最近、難航の末ようやく採用した候補者が退団する事態も生じた。
本職は歌劇場オーケストラ、シーズン中はほぼ毎晩演奏
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、ウィーン国立歌劇場の専属オーケストラであるウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーが自主運営団体として組織したものだ。
従ってメインの職務は、国立歌劇場でのオペラ・バレエ公演での演奏である。
これが9月1日~翌年6月30日の10ヵ月間のシーズン期間中、ほぼ毎晩ある(271公演)。※公演数は2018-19シーズンの例
これと並行して、楽友協会大ホールでのウィーン・フィル定期演奏会が20公演(土曜15:30~ / 日曜11:00~ )とソワレコンサートが6公演。これに一般公演(定期・ソワレは会員制)が14公演加わる。
またウィーンコンツェルトハウスで8公演、その他に国内外ツアー(日本には最近ほぼ毎年来演)、公開リハーサルもある。
12月30日~1月1日は、ニューイヤプレヴュー&ジルベスター&ニューイヤーコンサート。
5月または6月には、シェーンブルン宮殿を舞台にしたサマーナイト・コンサート。
そしてシーズンオフの7・8月は、ザルツブルク音楽祭でオペラ25公演、オーケストラ11公演をこなす。
超多忙なオーケストラ活動の傍らで、楽員らは多くの室内楽グループを編成しており、こちらのほうも国内外で公演を行う。
演奏活動に加えて、教育活動(第1期生として迎え入れたアカデミー生12名の指導や音大などでの教授活動)も積極的に進めている。
超多忙なスケジュールが原因で退団?
最近、難航した末にようやく採用された新コンサートマスター候補が、試用期間終了後にあっさりと退団してしまうケースが生じた。
在任45年で定年退職したライナー・キュッヒル氏の後任として入団したジョゼ・マリア・ブルーメンシャイン氏だ。
退団理由は明らかにされていないが、あまりにも多忙な公演スケジュールが原因ではないかとの観測が流れた。(ブルーメンシャイン氏は以前に所属していたケルンWDR交響楽団の第1コンサートマスターに復帰した)
また、1994年にウィーンでの教育を受けていない初のコンサートマスター候補として入団し、1997年に就任したダニエル・ゲーデ氏も、「家族と過ごす時間が欲しい」との理由で、2000年に退団している。
ウィーン国立歌劇場管弦楽団 / ウィーン・フィルのコンサートマスターは、秀でた経験と技術のみならず、激務への相応の覚悟が求められるポジションなのだ。
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ブルーメンシャイン氏の退団に伴い2019年2月に実施されたオーディションで、「2014アンリ・マルトー国際ヴァイオリンコンクール」第1位、「2018パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール」第2位等、多くの国際コンクール入賞実績を持つフョードル・ルディン氏(26歳)が採用された。
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