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【日本人が上位入賞】 ロシアの2つの国際コンクールで

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2016年5月、ロシアの2つの都市で相次いで開催された国際ヴァイオリンコンクールで、日本人が上位入賞を果たした。

ひとつは、ロシア連邦中南部に位置するシベリア最大の都市ノヴォシビルスクで、5月3日~10日に行われた「第8回ノヴォシビルスク国際ヴァイオリンコンクール」。

もうひとつは、ロシア連邦中央部に位置するバシコルトスタン共和国の首都ウファで、5月10日~15日に行われた「第1回ウラジーミル・スピヴァコフ国際ヴァイオリンコンクール」。

1995年以来3年毎に開催されてきた「ノヴォシビルスク国際」で審査委員長を務めるのはザハール・ブロン氏。新たに自らの名を冠した「ウラジーミル・スピヴァコフ国際」を創設し、審査委員長を務めるのは、ウラジーミル・スピヴァコフ氏。

いずれも現在のヴァイオリン界に強い影響力を持つロシアを代表するヴァイオリニスト・指導者である。

photo by Obakeneko

日本勢が2大会連続入賞

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「ノヴォシビルスク国際」はジュニア部門(10歳~16歳)とシニア部門(17歳~22歳)の2部門で3ラウンド制で審査が行われ、5月10日のシニア部門ファイナルでブラームスの協奏曲を演奏した日本の小川恭子さん(22歳 / 桐朋学園大研究生)は、「技術と芸術性が高く評価され」(「毎日新聞」)、第1位に入賞した。

同コンクールのシニア部門では前回(2013年)、服部百音さんが飛び級でグランプリ、田中杏菜さんが第2位に入賞しており、日本勢の2大会連続入賞となった。

小川恭子さんは、「第59回(2005)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・全国大会第1位、「第84回(2015)日本音楽コンクール」第1位と、国内で学コンと日コンの頂点を極め、国際コンは中学2年生で「第5回(2007)シュポア国際コンクール・ユース」カテゴリー1(14歳以下)で第2位に入賞、「第13回(2015)ヴィエニャフスキ&リピンスキ国際ヴァイオリンコンクール」シニア部門でも第3位に入賞している。

Prize Winners

1st prize Kyoko OGAWA

1st prize Elvin GANIEV

1st prize Ellinor MELON

2nd prize Dennis GASANOV

2nd prize Eun Che KIM

2nd prize Veronika SVESHNIKOVA

3rd prize Evgeny ASEEV

3rd prize Vladislav SHARIPOV

コンクール公式サイト

メジャー国際コンへ弾み

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一方、「ウラジーミル・スピヴァコフ国際」は出場12名中、第2ラウンド(セミファイナル)に8名、ファイナルに4名が進出した。

日本の鈴木舞さん(26歳 / ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学)は、ラウンド毎の異なる書法の楽曲への明晰なアプローチの中に、一貫して表情豊かな美しい響きを聴かせ、5月14日に行われたファイナルではミハイル・ゲルツ氏指揮:バシコルトスタン国立響とメンデルスゾーンの協奏曲を共演、第2位に入賞した。

第1位は、スウェーデンの15歳、ダニエル・ロザコヴィッチ(Daniel Lozakovitj)さん。

鈴木舞さんは、「第55回(2001)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・東京大会奨励賞、「第57回(2003)全日本学生音楽コンクール」中学校の部・東京大会第2位、「第75回(2006)日本音楽コンクール」第2位。国際コンは高校3年生で世界三大メジャーのひとつ「第13回(2007)チャイコフスキー国際コンクール」で最年少セミファイナリストとなった後、「第10回(2013)ヴァーツラフ・フムル国際ヴァイオリンコンクール」で第1位、「2014オルフェウス室内楽コンクール」で第1位。今回の同コンクール入賞の1週間後に行われる 「モントリオール国際」 への出場が決まっており、勢いに乗ったラウンドの戦いに期待がかかる。

Prize Winners

1st Prize Daniel Lozakovitj(Sweden)

2nd Prize Mai Suzuki(Japan)

2nd Prize Agnes Langer(Hungary)

3rd Prize Leonid Zhelezny(Russia)

同コンクールでは、第1位に、イタリア・モダンの名器、1890年製の カルロ・ジュゼッペ・オッドーネ(Carlo Giuseppe Oddone ※)が、第2位にはフランスのコンテンポラリー(Alain Carbonare)と5千ドル、第3位にはクレモナのコンテンポラリー(Maria Strelnikova)と3千ドルがそれぞれ贈呈された。(※)11万5千ドル相当

コンクール公式サイト


辻彩奈さん1位、吉田南さん3位 モントリオール国際コンクール

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辻彩奈さんがファイナルの演奏曲に選んだのは、シベリウスの協奏曲。

昨年(2015年)3月の「ソウル国際」(第2位)、10月の「ハノーファー国際」(第5位)のファイナルでも演奏し、得意のレパートリーとしてきた曲だ。

3度目の正直。カナダ・モントリオールで、そのシベリウスはさらなる進化を遂げていた。

カレリアの地の凍てついた湖から湧き出たような音楽は、辻さんの駆動力のある緻密な音で、時に律動し、跳梁し、時に余韻を残し静寂に帰していった。

辻さんは、恐ろしくも美しい、この楽曲の多様なドラマ性を見事に表現し、念願のメジャー国際コン初制覇を果たした。

一方、出場者中で最年少の吉田南さんが、ファイナルの演奏曲に選んだのもシベリウスの協奏曲。

昨年12月、「シベリウス国際」のファイナルでも演奏し、この時は惜しくも入賞を逃した。

半年後、そのシベリウスはやはり大きな進化を遂げていた。

吉田さんは楽器のポテンシャルを十全に解き放ち、鳴らし切る。誰も真似できない圧倒的な迫力とスケールの大きさで聴衆を魅了し、第3位を獲得した。

まだジュニア世代の日本の17歳と18歳。

ファイナリスト6名のうち、他の4名は23歳~28歳。シニア世代が大挙して挑むメジャー国際コンで、日本の10代後半のふたりが示した恐るべき技量と音楽性に、カナダ・モントリオールの地は大いに沸いた。

“アヤナ” と “ミナミ” モントリオールを席巻

montreal final ayana_tsujiphoto by CBC Classical

5月22日~6月2日、カナダ・モントリオールで開催された「モントリオール国際音楽コンクール」ヴァイオリン部門で、日本の辻彩奈さん(18歳 / 東京音大1年)が第1位、吉田南さん(17歳 / 桐朋女子高3年)が第3位に入賞した。

世界34カ国から206名が応募、前回を70%も上回る記録的な応募者数となった同コンクールの事前審査に通過し、本審査に出場した精鋭は23名。

第1ラウンドにあたるクォーターファイナルからリサイタル形式(35分以内)が採用された。規定課題のバッハ:無伴奏とパガニーニ:カプリースを除き、ヴィルトゥオーゾ・ピース等で各コンテスタントが得意とする楽曲を組み合わせてプログラムを構成する。

リサイタルを完成させる演奏家としてのメンタルとフィジカルが厳しく問われる中、それぞれの個性と個性がぶつかり合った。

出場23名中、12名が進んだセミファイナルも、45分以内のリサイタル形式。すでに過去の国際コンで入賞実績のあるコンテスタントらが振り落とされる中、任意の協奏曲1曲をジャンカルロ・ゲレロ指揮:モントリオール交響楽団と共演するファイナルに進出したのは6名だった。

優勝した辻彩奈さんは、クォーターファイナルのバッハ:無伴奏とパガニーニ:カプリース、セミファイナルのソナタとカナダ人作品の4つの楽曲の演奏で最優秀演奏賞を受賞、さらにセミファイナルのベストリサイタル賞も獲得した。全ラウンドで審査員から最高の評価を受ける、まさに完全優勝だった。

第2位は、ショスタコーヴィッチの協奏曲 第1番を演奏した韓国のキム・ボムソリ(Bomsori Kim)さんが受賞した。

世界3大メジャー国際コンへ照準

優勝した辻彩奈さんは、「第63回(2009年)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・全国大会第1位、「2012メニューイン国際コンクール」ジュニア部門 ファイナリスト、「第82回(2013)日本音楽コンクール」第2位と、早くから国内外の主要コンクールで実績を重ね、16歳で初めて挑んだシニア国際コンクールとなった「第9回(2014年)インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクール」でセミファイナリスト・審査員特別賞を受賞、「2015ソウル国際音楽コンクール」ヴァイオリン部門で第2位(最高位)、「第9回ハノーファー国際ヴァイオリンコンクール」で第5位・聴衆賞、特別賞を受賞した。

一方、第3位となった吉田南さんは今回、同時期に行われた「仙台国際」の事前審査にも通過していたが、「モントリオール国際」への出場を選択した。

吉田さんは、「第64回(2010)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・全国大会第1位、「第66回(2012)全日本学生音楽コンクール」中学校の部・全国大会第1位、「第83回(2014)日本音楽コンクール」第1位と、メジャー国内コン3冠を達成。15歳で挑んだ「2014メニューイン国際コンクール」シニア部門で最年少セミファイナリスト。「第11回(2015)シベリウス国際ヴァイオリンコンクール」でも出場最年少でファイナリストとなった。

ジュニア世代ながら、早くからシニアの国際コンに挑み、実績を重ねてきたふたりが見据えているのは、おそらく「2018インディアナポリス国際」と「2019エリザベート王妃国際」だろう。

トップランクのふたりに刺激された日本の10代には、今、逸材が多い。グローバル化の波にも後押しされ、早くからヨーロッパのジュニア国際コンにトライし、成果を上げる例も増えている。

近年、国際コンで圧倒的な存在感をみせる韓国に追いつき、日本が再び弦王国の座を奪還することができるかどうか。

その芽は確実に育ちつつある。

Prize Winners

1st prize Ayana Tsuji(18) Japan

2nd prize Bomsori Kim(26) South Korea

3rd prize Minami Yoshida(17) Japan

Radio-Canada People’s Choice Award: Bomsori Kim

André-Bachand Award for the best performance of the compulsory Canadian work in the semifinal round : Ayana Tsuji

Award for the best semifinal recital: Ayana Tsuji

Award for the best performance of a sonata in the semifinal round: Ayana Tsuji

Award for the best performance of a work by J.S. Bach in the quarter-final round : Ayana Tsuji

Award for the best performance of a Caprice by Nicolo Paganini in the quarter-final round : Ayana Tsuji

公式サイト

公式フェイスブック

青木尚佳さん3位、岡本誠司さん6位 仙台国際音楽コンクール

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モントリオールでの快挙の報が駆け巡った翌日、日本の仙台も2名の日本人コンテスタントが入賞する結果に沸いた。

6月2日~4日、「第6回仙台国際音楽コンクール」ヴァイオリン部門のファイナルが行われ、日本の青木尚佳さんが第3位、岡本誠司さんが第6位に入賞した。

協奏曲中心の課題曲構成を特徴とする同コンクールには、事前審査に通過した40名のうち32名が出場した。

予選ではパガニーニ:カプリースとバルトーク:無伴奏ソナタに加え、モーツァルトのアダージョとロンドを指揮者なしの室内楽オーケストラと共演、セミファイナルでは難度の高さで知られ、実演機会が少ないシューマンの協奏曲とヴィルトゥオーゾピースを広上淳一氏指揮:仙台フィルハーモニー管弦楽団と共演するプログラム。

ソリストとしての高度な技術、時代様式の異なる楽曲の弾き分け、アンサンブル能力等が厳しく問われる中、32名(日本19名)の出場者は予選で12名(日本7名)、セミファイナルで6名(日本2名)へと絞り込まれた。

迎えたファイナルは、メンデルスゾーンの協奏曲とロシア系協奏曲を1度のステージで仙台フィルと共演するハードなプログラム。ファイナルの特別審査員としてギドン・クレーメル氏が招聘された。

日本勢でファイナルに残ったのは、すでに国際コンクールで輝かしい入賞実績を持つ青木尚佳さんと岡本誠司さん。

ファイナルのロシア系協奏曲として、ふたりは共にプロコフィエフの2番を選択した。

青木尚佳さんは予選とセミファイナルで示した安定した技術と完璧なピッチコントロール、多彩な旋律の歌い回しをファイナルでもいかんなく発揮、2つの作品世界の異なる美の稜線を丁寧に描き分けて第3位に入賞。

一方、岡本誠司さんは、真摯な楽曲への探求心と柔軟な音楽性に、一昨年の国際コン優勝以降備わった自信と風格が良い相乗効果をもたらす堂々の演奏で、第6位に入賞、合わせてセミファイナル3日目の聴衆賞も獲得した。

第1位は、優美かつ力強い表現で群を抜く作品世界の造形力を示した韓国のジャン・ユジィン(JANG Yoojin)さん。(「2013宗次エンジェル」第1位、「2014インディアナポリス国際」第5位。)

第4位に、前回(2013)同コンクール第4位のアンナ・サフキナ(Anna SAVKINA)さん(ロシア)が入った。

Prize Winners

1st prize JANG Yoojin(25) Korea

2nd prize Stephen KIM(20) USA

3rd prize AOKI Naoka(24) Japan

4th prize Anna SAVKINA(21) Russia

5th prize Meruert KARMENOVA(23) Kazakhstan

6th prize OKAMOTO Seiji(21) Japan

青木尚佳さんは、「第56回(2002)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・東京大会第3位、11歳で挑んだ「第5回(2004)若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」で最年少ディプロマを受賞。「第78回(2009)日本音楽コンクール」第1位。2014年10月に「第4回中国国際ヴァイオリンコンクール」で第2位、その3週間後に過密な日程と難度の高い課題曲で競われた「2014 ロン=ティボー=クレスパン国際コンクール」 ヴァイオリン部門でも第2位を獲得するという離れ業を演じた。

岡本誠司さんは、「第60回(2006)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・全国大会第1位、15歳で「2009ロベルト・カネッティ国際ヴァイオリンコンクール」第2位、「第3回(2011)宗次エンジェルヴァイオリンコンクール」第4位。ピッチ・奏法の相違、チェンバロ伴奏、バロックオケとの共演等、他の国際コンとは異質の条件で競われる「第19回(2014)J.S.バッハ国際コンクール」ヴァイオリン・バロックヴァイオリン部門で東洋人初の第1位となり聴衆賞も受賞した。

コンクール公式サイト

アーカイヴ映像

【東京芸大】「ジュニア・アカデミー」創設、学生演奏を世界配信

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2016年6月22日、東京芸大が音楽分野における世界トップアーティストの戦略的育成を目的として、2つの画期的な施策を推進していくことを発表した。

中学生対象に上野キャンパスで個人レッスン等を実施

まず、2014年度から構築に着手した早期教育システムの一層の充実のため、来年(2017年度)より、全国の中学生を対象に「東京芸大ジュニア・アカデミー」を上野キャンパス内に創設する。

中学1年生~3年生各10名程度に、ピアノ・ヴァイオリン・チェロ・管楽器等の専攻分野において、芸大教員及び海外一流演奏家による個人レッスンを行うと共に、読譜やリズム感等の音楽基礎理論を学ぶ「ソルフェージュ」 や、ステージ実践による公開型成果発表を必修とするなど、将来的な成長・飛躍を見据えた実践的かつ総合的な指導を実施する。(3年間を標準修業期間として、指導は平日の夕刻・夜間や土日祝日、夏休み等の長期休業期間等に実施。選考は1次書類・音源、2次実技・音楽基礎能力による総合判定で検討中)

2014年から始まった「早期教育プログラム」の継続的かつ体系的な発展形態としてこの「東京芸大ジュニア・アカデミー」を位置付け、スーパーグローバルハイスクールの指定を受けた東京芸大附属高校における海外一流演奏家による特別レッスンや海外派遣プログラム、さらには「スペシャルソリストプログラム」による、高校2年生からの「飛び入学」により、東京芸大を3年間で早期卒業、海外音大留学へと送り出す、世界トップアーティストを育成する「小中高大一貫型」の人材育成システムに発展させていく狙いがある。

「東京芸大ジュニア・アカデミー」の創設に伴い、東京芸大の「音楽別科」 の入学定員(30名)は10名削減し、学内リソースの再配置・見直しを行う。

同アカデミーの募集要項の発表は本年9月頃を予定している。

芸大生の演奏音源を「芸大レーベル」として世界配信

2つ目の施策は、「東京芸大グローバルプロモーションシステム」と銘打ち、世界の音楽市場に向けた産学共同の戦略的プロモーションにより、芸大生のキャリアサポートを行うシステムを構築するもの。

今年度より、芸大生のための「芸大レーベル」を新たに立ち上げ、クラシック音楽はもとより、邦楽も含めた、学生選抜メンバーによる演奏音源を世界の主要チャンネルにデジタル・ストリーミング配信して、国際的に流通・普及させることにより、若手音楽家の世界の音楽市場への参入・開拓を促進する。

さらに、国内の音楽大学では初の試みとして、世界の音楽市場に多様なネットワークを有するワーナーミュージックジャパンをはじめ、Apple Music やLINE Music等音楽産業とのコラボレーションによる、人材育成プログラムとキャリア支援・国際プロデュースを連動させた「産学連携グローバル人材育成モデル」を構築する。

同システムは将来的に在学生のみならず、卒業生、芸高生、ジュニア・アカデミー受講生等を含めた若手音楽家をサポート対象として広く展開していくとしている。

『東京藝大ジュニア・アカデミー』の新設について(PDFファイル)(東京芸大公式サイト)

photo by Tyoron2

【マイケル・ヒル国際】少数精鋭化を加速、演奏前にプレゼン課す

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2017年6月2日~10日、ニュージーランドのクイーンズタウンとオークランドで開催される「2017 マイケル・ヒル国際ヴァイオリンコンクール」の募集要項が発表された。(参照

2年毎に開催される同コンクールは、従来、事前審査で選ばれる本審査出場者を僅か18名に限定する少数精鋭の難関コンクールとして知られてきたが、出場者をさらに2名減らして16名とし、ニュージーラウンドで行う4つの本審査ラウンド(クォーターファイナルⅠ、同Ⅱ、セミファイナル、ファイナル)のうち、クォーターファイナルの2つのラウンドのプログラムの充実とリハーサル時間の確保を図る。

「事前審査でオーディションは終わり、ニュージーランドに着いたら演奏家として審査される」(コンクール組織委員長)というコンセプトの下、コンテスタントにはリサイタルプログラムの演奏前に曲紹介のプレゼンテーションも課すこととした。

賞金は第1位が4万NZドル(約290万円)、第2位1万NZドル、第3位5千NZドル、第4位3千NZドル、第5位2千NZドル、第6位1千NZドル。第1位にはCDレコーディング、2018年ウィナーズツアー(ニュージーランド)等の副賞が授与される。
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事前審査はバッハ、パガニーニ、モーツァルト、ソナタ

事前審査は、提出されたDVD・書類を元に、3段階に分けて審査する。従来は応募者の経歴等を伏せて、DVD録画のみで選んできたが、今後はアーティストとしての全体像を把握する趣旨で、経歴等も最終判定資料として用いる。

事前審査の課題曲は以下の通り

  • バッハ:無伴奏ソナタ1~3番より任意の1曲の1・2楽章、またはパルティータ1番の1・2楽章(ドゥーブル含む)、または2番シャコンヌ、または3番プレリュード~メヌエットⅡ
  • パガニーニ:カプリースより任意の1曲
  • モーツァルト:協奏曲3~5番より任意の1曲の1楽章 ※ピアノ伴奏
  • 指定のソナタより任意の1曲の1楽章(ブラームス1番、2番、3番、ドビュッシー、フォーレ、フランク、グリーグ3番、ヤナーチェク、プロコフィエフ1番、2番、ラヴェル)

応募フォームは公式サイトに2016年9月1日にアップされる。(締切は2016年11月16日)

公式サイト

【同コンクール関連記事】
坪井夏美さんが第4位 NZマイケル・ヒル国際コンクール(「ヴァイオリニア」)

【ウィーン・フィル】女性ヴァイオリン奏者7名のプロフィール

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どのオーケストラでも女性団員の数が増加する中、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンに在籍する女性奏者が7名(※)という事実が、世間の耳目を集めるニュースになり得るのは、今やウィーン・フィルくらいしか見当たらないだろう。(※)2015年12月末時点のウイーン・フィルとウイーン国立歌劇場管弦楽団在籍

伝統と格式の保持、奏法と音質の統一を重んじ、長く団員構成の多様性に背を向けてきたウィーン・フィル。

しかし近年は、さすがに時代の潮流に抗することは難しくなり、女性奏者に門戸を開く方針に転換しつつある。

2015年のオーディション告知文には、「女性の割合を増やすことを目標にしている」という 一文が添えられた が、実際にヴァイオリン・パートで見ても、ここ数年で女性奏者の入団は着実に増えている。

「大阪国際音楽コンクール」グランプリ受賞者も

現在のウィーン・フィルの規約では、ウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーのみがウィーン・フィルのメンバーになることができる。

歌劇場管弦楽団のオーディションに合格し採用され、少なくと3年間は歌劇場管弦楽団の団員として日々の演奏でその力を実証し、その後、自主運営によるウィーン・フィル協会に入会することによって、晴れてウィーン・フィルの正式団員となることができるのだ。

直近の2013~2015年には、次の3名の女性ヴァイオリン奏者が歌劇場管弦楽団の団員として採用された。※以下、敬称略

・アリーナ・ピンカス(Alina Pinchas ウズベキスタン) 第1ヴァイオリン 2013年に採用
1988年生まれ。ウィーン国立音大、2005年よりグラーツ音大でボリス・クシュニールに師事。歌劇場管弦楽団の第1ヴァイオリンに在籍しつつ、2015年に行われたコンマスのオーディションを受験、ファイナルまで残ったという情報がある。

・アデラ・フラジネアヌ(Adela Frasineanu ルーマニア) 第2ヴァイオリン 2014年に採用
フランツリスト音楽院、ハンスアイスラー音大、ロストック音大、2008年からザルツブルク・モーツァルテウム音大でイゴール・オジムに師事。「2009ブラームス国際」第1位。

・エカテリーナ・フロローヴァ(Ekaterina Frolova ロシア) 第1ヴァイオリン 2015年に採用
ウィーン国立音大でミヒャエル・フリッシェンシュラーガー、ウィーン私立芸術音大(旧コンセルヴァトリウム私立音大)でパヴェル・ヴェルニコフに師事。「2010クライスラー国際」第2位、「2011ヴァルセシア・ムジカ国際」ヴァイオリン&オーケストラ部門第1位、「2012大阪国際」グランプリ。

photo by Spoooky

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父-娘の二代で団員

さらに、その前の2012年に採用され、歌劇場管弦楽団での任を経た後、2015年にウィーン・フィルの団員となった女性ヴァイオリン奏者は次の1名。

・パトリシア・コル(Patricia Koll オーストリア) 第2ヴァイオリン首席 2012年採用、2015年に正式団員
1988年生まれ。父のハインリヒ・コル(Heinrich Koll)はウイーン・フィルのヴィオラ首席。ウィーン私立芸術音大でユージン・ポラーチェク、 フローリアン・ツヴィアウアーに師事。父と姉(アレクサンドラ・コル=ガイスマイアー ウイーン交響楽団第2ヴァイオリン)と共にコル・トリオを結成。

ウィーン・フィルは伝統的に団員の子息を採用する例が見られ、例えば2012年まで45年間にわたってウィーン・フィル / 歌劇場管に所属し、うち39年間は首席チェロ奏者を務めたフランツ・バルトロメイは、祖父(首席クラリネット奏者)、父(ヴァイオリン奏者・副楽団長)と三代続くウィーン・フィルの奏者であった。

以上の4名に加えて、すでにウィーン・フィルの正式団員として活躍している女性ヴァイオリン奏者は次の3名。

・アルベナ・ダナイローヴァ(Albena Danailova ブルガリア) コンサートマスター 2008年採用、2011年正式団員
ロストック音大、ハンブルク音大、2001年バイエルン州立歌劇場管 第2ヴァイオリン、2003年同 第1ヴァイオリン・セクションリーダー、2006年同 第1コンマス。「1990クロスター・シェーンタール国際」第1エイジグループ(14歳以下)第3位、「1995クロスター・シェーンタール国際」第3エイジグループ(18歳〜20歳)第2位、「1996ティボール・ヴァルガ国際」特別賞。

・イザベル・バロット(Isabelle Ballot フランス) 第1ヴァイオリン 2005年採用、2008年正式団員
1977年生まれ パリ国立高等音楽院等。

・オレーシャ・クリリャク(Olesya Kurylyak ウクライナ)第1ヴァイオリン 2008年採用、2011年正式団員
1981年生まれ ウィーン国立音大でエドワルド・ツェンコフスキーに師事。「2001クロスター・シェーンタール国際」ディプロマ、「2003ティボール・ヴァルガ国際」第1位。

女性団員の採用は今後もさらに増えると思われるが、ヴァイオリン・パートにおける次の焦点は、国際コンの入賞実績においては欧米を圧倒しているアジア勢に対して、門戸が開かれるかどうかだろう。

photo by de:user:Hieke

1711年製ストラディヴァリ、再びツィンマーマンのもとへ

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貸与していた銀行の破綻処理のため、競売にかけられる可能性が報じられていたツィンマーマン愛用のストラディヴァリ。

手元を離れた愛器が、1年半ぶりにツィンマーマンのもとに返ってくる。

州政府が買い取り、ツィンマーマンに貸与へ

1711年製ストラディヴァリ “レディ・インチクイン(Lady Inchiquin)”。

フランク・ペーター・ツィンマーマンがドイツの州立銀行から貸与され、13年間愛用したこの楽器が、実質破綻した州立銀行の承継会社の意向で、他の2つの楽器(※)と400点の美術品コレクションと共に競売にかけられる可能性があるというニュースが伝わったのは2015年2月のことだった。(※)1684年製ストラディヴァリ “エクスクロール(exCroall)”と1860年製アントニオ・ロッカのチェロ

ツィンマーマンは、承継会社に対して愛器の買い取りを打診したが、価格が折り合わず、結局、楽器を返却する事態に追い込まれた。

2016年7月4日、ドイツのメディアは、ノルトライン=ウェストファーレン州が新たな買い手として浮上し、ストラディヴァリと300点の美術品コレクションの買い取り契約が締結されたと報じた。(参照

買い取り価格は総額で約3000万ユーロ(33億3000万円)。

州政府の文化大臣は、ストラディヴァリはツィンマーマンに貸与され、美術品コレクションは以前と同じく一般公開される予定としている。

ツィンマーマンは現在、2016年1月から貸与されている、1727年製ストラディヴァリ “ジェネラル・デュポン グリュミオー” を使用している。

“The Strad” のインタヴューでは、グリュミオーの声を持つそのストラディヴァリに心を動かされつつも、「私は今も尚、“レディ・インチクイン” の音を取り戻したいと思っています。長年、レナータ・テバルディを愛してきた人が、マリア・カラスに心変わりすることはないでしょう」と、13年間愛奏し続けた1711年製ストラディヴァリへの断ち難い想いを語っていた。

辛い別れの後、1年半ぶりに戻ってくる愛器。

再会を果たしたツィンマーマンの音楽は、さらに豊かに進化していくに違いない。

【ツィンマーマンの1711年製ストラディヴァリ 関連記事】

楽器が変わったことを感じさせず ツィンマーマンNY公演

【ツィンマーマン】 6億円で愛器ストラドの買取を打診か?

【ツィンマーマン】ストラディヴァリ貸与終了 買取提案は拒否

【ツィンマーマン】 愛用のストラディヴァリ、競売は回避か?

【ツィンマーマン】 1711年製ストラディヴァリとお別れ?

メトロポリタン歌劇場管弦楽団の新コンマスに国際コン覇者が就任

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photo by Simon Darby

2016年7月7日、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場管弦楽団は、新たなコンサートマスターにカナダ人ヴァイオリニスト ニッキ・チョイ氏(27歳)が就任すると発表した。(参照

ニッキ・チョイ氏は、カーティス音楽院を経て、ジュリアード音楽院でイダ・カヴァフィアン、ドナルド・ワイラースタインの両氏に師事。「2013マイケル・ヒル国際」第1位、「2012エリザベート王妃国際」ファイナリスト。(2015年に、クラシックからジャズ、ヒップホップまで多彩なジャンルの曲を演奏する弦楽トリオ “Time for three” に加入したが、今回のコンマス就任でメンバー交替となる模様)

ニッキ・チョイ氏の契約は8月からの1年間で、現コンサートマスターのデイヴィッド・チャン氏(「1990チャイコフスキー国際」第5位、「1994インディアナポリス国際」第3位 ジュリアード音楽院教授)とのコンサートマスター2名体制で、オペラシーズンには毎日開催される同歌劇場の公演の任を務めることになる。

チョイ氏は、倍率が200倍に達するという難関のオーディション(※)によって選ばれた。

メトロポリタン歌劇場管弦楽団では、2015-2016年シーズン終了後に、40年間音楽監督を務めた巨匠ジェームズ・レヴァイン氏が退任する。

チョイ氏の契約が延長されれば、次期音楽監督に就任するヤニック・ネゼ=セガン氏(フィラデルフィア管弦楽団音楽監督)とのカナダ人コンビにより、メトロポリタン歌劇場の新たな時代が幕を開けることになる。

(※)メトロポリタン歌劇場管弦楽団の 公式サイト には、最近のオーディションの例が示されている。
208名の応募者のうち、書類審査を経て実演審査にそのまま進めたのは64名。42名に対しては音源の提出が申し渡されたが、そのうち実演審査に進めたのは3名。実演審査は3ラウンド制(予選・セミファイナル・ファイナル)で、67名⇒15名⇒2名と絞られ、1名のみが採用された。

動画は、「2013マイケル・ヒル国際」でのシベリウス:ヴァイオリン協奏曲の演奏。


【東京芸大】 平成29年度「飛び入学」募集要項を発表

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東京芸大音楽学部が導入2年目となる「飛び入学」の募集要項を発表した。

同大が人材育成プログラムの中核と位置付ける「スペシャル・ソリスト・プログラム」(SSP)は、高校2年生修了時点での「飛び入学」と学部の成績優秀者を3年で卒業させる「早期卒業」との併用により、国際舞台で活躍する音楽家を戦略的に育成することを企図するもので、同プログラムの特徴は以下の通りとなっている。

  • 個人レッスン時間は通常の学部カリキュラムの2倍
  • 海外一流演奏家による特別レッスン
  • 海外一流音大への留学、国際舞台における演奏の機会等の優先的提供
  • 選択科目は実技教員と検討の上、語学科目に重点を置く等の自由な組み合わせを可能にする
  • 成績優秀者は学部を3年間で早期卒業することが可能となり、従来は年齢制限のため東京芸大を休学ないし中退しなければ入学できなかった海外の音楽院への留学が可能となる
  • 「飛び入学」合格者は入学金と1年次の授業料を免除。その他、授業料免除や特別奨学金による経済的支援を行う

国際コン入賞歴等を高く評価

今回発表された「飛び入学」の募集内容は、導入初年度の内容が踏襲されており、対象はヴァイオリン・チェロ・ピアノの3専攻で、募集人員は若干名。

出願資格は、専攻楽器に関して優れた資質を有し、その探求を志す者で、「国際的に著名なコンクール等での入賞経験、又はそれと同等の能力を持つ者」としている。

第一次選考は書類審査で、提出書類(自己推薦書、推薦書、調査書等)を総合して判定する。

自己推薦書では、国際コンクールにおける入賞歴等、これまでの音楽活動における顕著な業績などを高く評価し、推薦書及び調査書等では、早期に大学教育を受けるために必要な基礎学力などを評価する。

第二次選考は専攻実技試験、基礎能力検査(楽典、聴音等ソルフェージュ全般に関する基礎能力試験)、面接で、各試験等の成績を総合して判定し、合否を決定する。

第二次選考には海外一流演奏家が参画する場合もあり、音楽の基礎能力及び専攻実技に関する表現力などを評価する。

ヴァイオリンの課題曲はバッハ無伴奏と自由曲

ヴァイオリンの専攻実技の課題曲は、1)バッハ:無伴奏ソナタもしくはパルティータの中から任意の1曲(全楽章)、2)自由曲で、全体で60分以内とし、伴奏者は志願者が用意すること、としている。

出願期間は平成28(2016)年11月1日(火)~11月7日(月)。※郵送・期間内消印有効

第一次選考の合否結果は、11月14日(月)に本人宛に郵送される。

第二次選考は11月19日(土)。

第二次選考の合否結果は、11月30日(水)に本人宛及び推薦書を作成した高等学校長宛に郵送される。

入学手続きは平成29(2017)年3月14日(火)・15日(水)。

入学者は、入学料(282,000円相当)と1年次の授業料(535,800円相当)が免除される。

「学生募集要項[飛び入学]東京藝術大学」(PDFファイル)(東京芸大公式サイト)

指弓ができる子、できない子

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子供の手首が固いのは、ある意味当然

子供の身体はまだ発育途上で骨も固まっておらず、筋肉も充分にはついていません。

そんな腕で弓を操ろうとすると、肩甲骨から上腕部にかけての筋肉の助けがないので、すべての負担が最終的には手首にかかってきます。

手首から先を固定しないと、弓がコントロールできない状態となります。

勿論、小さい子でも、例えばモーツァルトのロンド(クライスラー編:ロンド ト長調)をスピッカートで弾いてしまう子もいます。

先天的に手の甲の筋肉がついていて各指が独立して動かせる子、あるいは筋肉がついていなくとも、指と弦の接点のバランスを的確に捉える感覚が鋭敏な子などです。

そうした子は手首から先が柔らかですから、指弓も無意識的にできています。しかしそれを、指弓ができているからスピッカートができる、ワンボウができると解釈するのは誤りです。

指の動きだけを取り出して教えることの弊害

いわゆる指弓の指導は、曲解されている場合が多いと思われます。

各指の独立・指の屈伸ができないのは困りますが、そこだけを取り出して練習しているのでは、いつまでたっても実際の演奏で使えるようにはなりません。

指は弦と弓の最適な接点を常時保つための微調整役として機能するから様々に動くわけで、弓の軌道が正しいかどうか、移弦の際にまず二の腕から移動ができているかなど、大本である腕が正しい運動を行っていなければなりません。

そこを指の動きだけを強調して教えると、子供は自分の出している音を聞かずに、ただ機械的に指の屈伸を行うようになってしまいます。

指は動いているが実際に出ている音はかすれている、弓を返すたびに変なアクセントがつく(=反動を付けないと弓が返せない)などの例は数え切れません。特に後者の例はプロでも多々見かけます。

これをごまかすために必要以上に身体を動かす、表情も交えた熱演をするなどのパフォーマンスに走ってしまうのです。

指弓を教える際には、腕全体をよく観察して的確な指示を出すことが望まれます。

なお、連符スピッカートではあらかじめ弓のどこからどこまでを使うと計画を立ててさらう必要があります。これはワンボウの練習でも同じことです。そうしないと、弓をどう使えばいいのか分からないからパニックに陥り、手首をますます固くしてしまう結果に陥ることになりかねません。

弓を握り締めてしまうのも、手首が固いのも、発育途上にある子供にとっては致し方のないことです。正しいやり方で鍛えつつ、身体の成長を待てば、後は時間が解決する側面もあることを念頭に置いておく必要もあるでしょう。

neko語録-logo_renewal_「neko 語録」とは?

photo credit: The Old Violin via photopin (license)

木嶋真優さんが第1位 アイザック・スターン国際コンクール

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1996年・97年、宮崎国際室内楽音楽祭で、巨匠アイザック・スターンのレッスンを受けた。

音色の質を褒められたが、一方で、「情熱が空回りしてるよ、お客様が眼を閉じて聴いても、君の狙いがキチンと分かる演奏でなくては」と諭された。(参照

あれから20年、師が課した課題は当時の要求水準を遥かに超えるレヴェルで達成されることになる。

師の名を冠し創設されたコンクールの晴れの舞台で、彼女の演奏は終始、眼を閉じてもそれとわかる明確な演奏意図によって貫かれ、聴衆の心を捉えて離さなかった。

優勝賞金10万ドルを獲得

8月14日〜9月2日、中国・上海で開催された「第1回上海アイザック・スターン国際ヴァイオリンコンクール」で日本の木嶋真優さんが第1位に輝き、優勝賞金10万ドルを獲得した。

同コンクールは、1979年に中国を訪問し、文革による混乱を経てクラシック音楽を受容しつつあった中国と西欧との架け橋となったアイザック・スターンの功績を記念して、中国の上海交響楽団が創設した。

優勝賞金を10万ドル(約1000万円)とヴァイオリンコンクールとしては過去前列がない金額とし、チェロの巨匠ヨーヨー・マが選ぶ特別賞や、副賞として多くのコンサート契約を授与するなど、入賞者のその後のキャリアアップを強力に後押しする特色を打ち出した。

DVD(※)と書類による事前審査を通過したコンテスタントは24名。近年行われた国際コンクールの入賞者が多く含まれ、本審査は第1ラウンド(クォーターファイナル)からハイレベルな競演が展開された。(※)指定された主要な8つの国際コンの入賞者はDVDの提出が免除された。

クォーターファイナルを通過したのは18名。

次のセミファイナルでは、室内楽(ピアノ三重奏曲)の演奏やモーツァルト:協奏曲第3番の全楽章で自作カデンツァが課されるなど、ソリストに留まらない演奏家としての多面的な資質が問われた。

ファイナリストにハノーファー、仙台の優勝者

ヴィルトゥオーゾピースと協奏曲を上海交響楽団と共演するファイナルには、近年の国際コン(「2015ハノーファー国際」、「2014ジョルジュ・エネスコ国際」、「2013仙台国際」)の覇者らを含む強豪6名が進出した。

ショーソンの詩曲とショスタコーヴィチの協奏曲を選んだ木嶋真優さんは、国内外での数多くのステージ経験から培われた豊かな表現力と確かな構成力を発揮、楽曲の個々の特性を響きの機微に分け入って鮮やかに描き出す演奏で、同コンクール第1回の栄えある優勝者となった。
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木嶋真優さんは、「第52回(1998)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・大阪大会第1位、「第8回(2000)ヴィエニャフスキ&リピンスキ国際ヴァイオリンコンクール」ジュニア部門最高位(第2位)、「2004ノヴォシビルスク国際ヴァイオリンコンクール」シニア部門グランプリ、「2009エリザベート王妃国際音楽コンクール」ファイナリスト、「2011ケルン国際音楽コンクール」第1位。すでに複数のCDをリリース、ヨーロッパと日本で多くのオケと共演、リサイタルを開くなど、多彩な演奏活動を展開している。

受賞者

First Prize: Mayu Kishima, (Japan) – USD $100,000 and performance contracts with top symphony orchestras from around the world

Second Prize: Sergei Dogadin, (Russia) – $50,000

Third Prize: Sirena Huang, (United States) – $25,000

Fourth Prize: Stefan Tarara, (Germany) – $5,000

Fifth Prize: Richard Lin, (United States) – $5,000

Sixth Prize: Ming Liu, (China) – $5,000

コンクール公式サイト

【芸高】 平成29年度 東京藝大附属高入試 課題曲発表

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モーツァルトはカデンツァなし

2016年9月15日13時、平成29(2017)年度「東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校」(以下、芸高)入試の実技課題曲が発表された。

発表によれば、ヴァイオリン専攻の実技課題曲は、第1回が音階+ ローデ11番、第2回が モーツァルト:協奏曲 第4番 第1楽章

第1回は、2015・2016年度に続いて、ローデ:24のカプリースからとなり、2014年度に “サプライズ” のバッハ(無伴奏ソナタ 第3番 第3楽章・第4楽章)が出た以降は、過去の芸高入試の定番路線への回帰が一段と鮮明になっている。

第2回は、モーツァルト:協奏曲 第4番 第1楽章と、こちらも過去の芸高入試頻出のモーツァルトが選ばれた。

2014年度がヴィエニャフスキ:協奏曲 第2番 第1楽章、2015年度がラロ:スペイン交響曲 第5楽章、2016年度がサン=サーンス:協奏曲 第3番 第1楽章と、ロマン派の協奏曲曲が3年続き、過去の傾向から次回はモーツァルトか古典派のヴィオッティあたりかと予想した向きもあったかもしれない。

過去12年を見ると、モーツァルト4番1楽章は、2009年→2013年→2017年と、4年毎に出るパターンが続いたことになるが、2009年と2013年はカデンツァ付き(ヨアヒム)での演奏だった、

一方、今回はカデンツァなしの指定である。

過去の試験では、時間の関係上、途中部分をカットしてカデンツァを演奏させる指示が試験中になされていたようだが、今回は途中カットなしで制限時間まで通して弾かせる形になるものと予想される。

「2016年9月15日(木) 平成29年度入学試験音楽実技課題曲発表」(「芸高」公式サイト)

専攻実技 ヴァイオリン

【第1回】

① カール・フレッシュ:スケール・システム (Carl Flesch:Scale System) より
ハ短調(c-moll)  譜例①(ヴァイオリン)を参照のこと
(A)音階,分散和音,分散 3 度,半音階
(B)3 度の重音
(C)6 度の重音
(D)8 度の重音
(E)フィンガード・オクターヴ
(F)10 度の重音
(注)指定されたテンポやスラーを厳守すること。フィンガリングは自由。

② ローデ:24のキャプリスより 第11番
(Rode: 24 Caprices No. 11)
(注) 楽譜の版は特に指定しない。

【第2回】

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ長調 K. 218
(W.A.Mozart: Violin Concerto No. 4 D-dur K. 218)より
第 1 楽章 カデンツァなし(ピアノ伴奏付き)
(注) 楽譜の版は特に指定しない。
伴奏は本校試験係員が行う。

「早期教育」推進で、芸高入試はどう変わる?

東京芸大音楽学部は2014年から、小学生・中学生向けに全国各地で公開レッスンを行う「早期教育プロジェクト」をスタートさせ、来年度はその発展形として上野キャンパス内に中学生対象の「東京芸大ジュニア・アカデミー」を創設し、実技レッスンとソルフェージュなどの音楽基礎教育を行う予定だ。

こうした「小中高大一貫型」の教育システムを発展させていく中で、芸高はどう位置付けられ、その入試内容や実技課題曲、難易度、競争率は今後どう変わっていくのか。

昨年はソルフェージュ課題に新曲視唱が追加されるという変化があったが、今後も年々の入試動向を注視していく必要がありそうだ。

尚、今回発表された実技試験課題曲以外の平成29年度入試に関する事項については,『平成29年度生徒募集要項』にて発表される。(『平成29年度生徒募集要項』は,平成28年10月31日(金)以降に配布予定。郵送による募集要項の請求依頼は,平成28年11月21日(月)までに学校に要到着)

願書の受付期間は、2016年12月1日(木)~12月5日(月) ※すべて郵送。調査書の受付期間は、2017年1月4日(水)~8日(日) ※すべて郵送。

入試期間は2017年1月20日(金)~24日(火) ※入試掲示1月19日(木)

芸高入試 過去12年の第1回と第2回の課題曲の変遷

  • (2005年実施)
    ローデ:13番
    サンサーンス:協奏曲 3番 3楽章
  • (2006年実施)
    ローデ:4番
    ヴュータン:バラードとポロネーズ
  • (2007年実施)
    ローデ:11番
    ブルッフ:協奏曲 1番 3楽章
  • (2008年実施)
    ローデ:19番
    ヴィオッティ:協奏曲 22番 1楽章(カデンツァはヨアヒム)
  • (2009年実施)
    ローデ:20番
    モーツァルト:協奏曲 4番 1楽章(カデンツァはヨアヒム)
    ※この年から1次の音階(カール・フレッシュ)でフィンガード・オクターブと10度がなくなる。
  • (2010年実施)
    ローデ:23番
    モーツァルト:協奏曲 1番 1楽章(カデンツァなし)
  • (2011年実施)
    ローデ:13番
    モーツァルト:協奏曲 5番 1楽章(カデンツァはヨアヒム)
  • (2012年実施)
    ローデ;14番
    サンサーンス:協奏曲 3番 3楽章
    ※1次の音階(カール・フレッシュ)で4年ぶりにフィンガード・オクターブが復活。
  • (2013年実施)
    ローデ:19番
    モーツァルト:協奏曲 4番 1楽章(カデンツァはヨアヒム)
    ※1次の音階(カール・フレッシュ)で5年ぶりに10度が復活。
  • (2014年実施)
    バッハ:無伴奏ソナタ 3番 3・4楽章
    ヴィエニャフスキ:協奏曲 2番 1楽章
  • (2015年実施)
    ローデ:20番
    ラロ:スペイン交響曲 5楽章
  • (2016年実施)
    ローデ:16番
    サン=サーンス:協奏曲 3番 1楽章

(関連記事 芸高入試)

【芸高】 平成27年度 東京藝大附属高入試を振り返る

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【芸大】 平成29年度 東京藝大入試 課題曲発表

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第1回にパガニーニ24番、第2回にシベリウス

10月6日、平成29(2017)年度の東京藝術大学(以下、芸大)音楽学部 入学者選抜試験の試験内容及び課題曲が、芸大の公式サイトに発表された。

「平成29年度 東京藝術大学音楽学部・別科入学者選抜試験 試験内容及び課題曲の掲載について」(芸大公式サイト)

発表によれば、器楽科ヴァイオリン専攻の課題曲は、第1回(1次)がカール・フレッシュ:スケール・システムとパガニーニ:24のカプリース 第24番、第2回(2次)はバッハ:無伴奏パルティータ 第2番 アルマンドとシベリウス:協奏曲 第1楽章。

第1回は、2015・2016年度に続き、音階+パガニーニの組み合わせとなり、2014年度には音階とイザイ:無伴奏ソナタが出されるという  “サプライズ” があったものの、それ以降は芸高の入試課題曲と同様、定番路線への回帰が鮮明となっている。

【芸高】 平成29年度 東京藝大附属高入試 課題曲発表

一方、第2回は、手元にデータのある過去9年間では一度も出ていないシベリウス:協奏曲 第1楽章が選ばれた。

器楽科 弦楽器 ヴァイオリン専攻

【第1回】

(A)音階
カール・フレッシュ:スケール・システム (Carl Flesch:Scale System) より 変ロ長調(B♭ Major)で、次のイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘの各種を下記(譜例)を参照し、演奏すること。

(イ)音階,分散和音,分散 3 度,半音階
(ロ)3 度の重音
(ハ)6 度の重音
(ニ)8 度の重音
(ホ)フィンガード・オクターヴ
(ヘ)10 度の重音

※すべてレガートとし,リズムやスラーはハ長調(C Major)に準ずる。 なお重音のスラーは(ヘ)を含め,全て2拍ずつのスラーとする。 フィンガリングは自由とする。

(B) Paganini:24 Caprices Op.1 より
第24番 イ短調(A Minor)
※繰り返しは有りとする。

(注)すべて暗譜とし、使用する楽譜の版は特に指定しない。
時間の都合により一部を省略させることがある。
演奏は(A)(B)の順とする。

【第2回】

(A)J. S. Bach:無伴奏パルティータ第2番 ニ短調(D Minor)BWV1004 より Allemande
※繰り返しは無しとする。

(B) Sibelius:Violin Concerto ニ短調(D Minor)Op.47 第1楽章

(注) すべて暗譜とし、使用する楽譜の版は特に指定しない。
(B)はピアノ伴奏付きで演奏する。
(伴奏者は本学で用意する。伴奏者の同伴は認めない。)
時間の都合により一部を省略させることがある。
演奏は(A)(B)の順とする。

「飛び入学」初年度の結果は?

2017年度の器楽科全体の募集人員は、例年通り98名。この98名のうち若干名が前年11月に試験を行う音楽学部SSP(Special Soloist Program)「飛び入学」による募集となるが、募集初年度の2016年度の「飛び入学」は、4名が受験し、合格者はゼロだった。

器楽科の2016年度入試は、志願者412名のうち、102名が最終合格、競争率は4.04倍。(2015年度は志願429名、最終合格99名、競争率4.33倍)

またヴァイオリン専攻は、志願44名、1次合格30名、2次合格26名、最終合格23名。(2015年度は志願46名、1次合格27名、2次合格22名、最終合格18名)

少子化と依然として厳しい経済環境の中、国際化や早期教育など、芸大が積極的に進める取り組みが志願者数の減少傾向に歯止めをかけることができるのか。今回の志願動向が注目される。

尚、7月に発表された入学者選抜要項によれば、2017年度入試の弦楽器 専攻実技第1回は、2017年2月25日~27日、第2回は3月4日・5日。それぞれで合否が発表され、音楽に関する基礎能力検査(聴音書き取りと楽典の筆記試験、新曲視唱とリズム課題の実技試験)と副科ピアノの実技試験は3月7日に実施される。

2017年度入試の専攻楽器別のより詳細な日時等は、12月上旬に公表される「学生募集要項」(今回からウェブ掲載のみ)に記載される「入学試験実施日程表」で明らかになるものと思われる。

「平成29年度入学者選抜要項」(同上)

芸大入試 過去9年の第1回と第2回の課題曲の変遷

  • 平成20年(2008年)実施
    ・第1回 音階+パガニーニ:カプリース24番
    ・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ1番ブーレ+メンデルスゾーン:協奏曲ホ短調1楽章
  • 平成21年(2009年)実施
    ・第1回 音階+バッハ:無伴奏ソナタ3番ラルゴ・アレグロアッサイ
    ・第2回 メンデルスゾーン:協奏曲ホ短調1楽章
  • 平成22年(2010年)実施
    ・第1回 音階+バッハ:無伴奏パルティータ3番プレリュード+パガニーニ:カプリース20番
    ・第2回 チャイコフスキー:協奏曲1楽章(カデンツァの終わりまで)
  • 平成23年(2011年)実施
    ・第1回 音階+バッハ:無伴奏ソナタ1番フーガ
    ・第2回 パガニーニ:協奏曲1番1楽章(カデンツァなし)
  • 平成24年(2012年)実施
    ・第1回 音階+パガニーニ:カプリース9番
    ・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ3番ルール+プロコフィエフ:協奏曲1番1楽章
  • 平成25年(2013年)実施
    ・第1回 音階+パガニーニ:18番
    ・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ3番ガヴォット+メンデルスゾーン:協奏曲ホ短調1楽章
  • 平成26年(2014年)実施
    ・第1回 音階+イザイ:無伴奏ソナタ4番1楽章
    ・第2回 バッハ:無伴奏ソナタ1番シチリアーノ+ヴュータン:協奏曲5番1楽章(カデンツァの前まで)
  • 平成27年(2015年)実施
    ・第1回 音階+パガニーニ:23番
    ・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ1番ブーレ+メンデルズゾーン:協奏曲ホ短調1楽章
  • 平成28年(2016年)実施
    ・第1回 音階+パガニーニ:4番
    ・第2回 バッハ:無伴奏パルティータ1番サラバンド+チャイコフスキー:協奏曲1楽章

入試課題曲のエチュード

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エチュードは学校側からのメッセージ

課題曲が公表されたときから、教育はすでに始まっています。

この時期発表されるエチュードは、3〜4ヶ月でどれだけのことができるようになったかを見るものであり、また、最低これくらいはできるようになってからお入りください、という学校側からのメッセージです。

その「これくらい」がどこまでかは、単に何とか弾けるレベルから和声、リズム、フレージングと上を見れば限りがないのですが、たかが○○○、すでに一度弾いたことがあるし、となめてかかっていると、直前になって大慌てすることになりかねません。

ヴュータンやヴィエニャフスキをそれらしく弾きこなす子に、延々アルペジオの続くエチュードをあてがってみると、別人のような惨状になってしまうというのは、教師をしていれば誰にでも経験があるものです。

親指の位置、ポジションチェンジの基本などは小学生のうちに教えているのですが、3度、6度のオクターブの重音、フラジオレット等々を詰め込むうちに、その基本が少しづつ甘くなり、その場しのぎの方法に取って代わっていることがあります。

この点では、幼稚園の頃から預かった子も、小6になって預かった子も大差はありません。

時限を設け、基本に立ち返って勉強し直す

手首が人一倍柔らかくとびぬけて器用だったり、巌のように頑固に基本に忠実だったりする極々少数の生徒だけが、エチュードでも曲とのギャップを感じさせない演奏をするものです。

これまでも繰り返し基本練習の重要性を書いてきましたが、例えば去年のコンクールに予選で落ちてから今年のコンクールまで、スケールを毎日欠かさず練習した生徒がどれ程いるでしょうか?

どんな教師でも面と向かって本人の欠点を指摘し、対策を提示しているのですが、肝心の当人が途中で抛り出してしまっていることがあります。

それは年齢に関係のない人間の性で、そこを乗り越えた結果のひとつが、例えばイチローです。大抵の人間はホームランを狙って自らフォームを崩して行くもので、それが普通なのです。

だからこその入試です。

すべてに恵まれて中3夏期講習を前にしても、「人間関係を磨くため」の行事参加を親がプッシュする時代であるからこそ、時限性を設け、その中でもう一度基本に立ち返らなければ弾き通せない課題曲を与えて勉強し直して貰う。そうでもしなければ誰も左手の地道な練習を3〜4ヶ月も続けようとは思わないでしょう。

教育はすでに始まっている、と書いたのはそういう意味なのです。

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photo credit: Steve Snodgrass via photopin cc

「東京藝大ジュニア・アカデミー」-募集要項を発表

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入学料20万円、受講料80万円

東京芸大音楽学部が、来春、中学生を対象に開講する「東京芸大ジュニア・アカデミー」の募集要項を発表した。

出願資格は、平成29年4月1日で中学1年生・2年生になる人、専攻楽器は、ピアノ・ヴァイオリン・チェロ・管楽器で、募集人員は10名程度。

上野キャンパスで月2回芸大教員による専攻実技レッスンとソルフェージュ(楽典を含む)の授業、外国人教員による特別レッスン、さらにはアンサンブルの指導も行う。

年度末には実技試験を実施、奏楽堂等で定期的な成果発表会も行う。一定の成績を修めた受講生は、芸大フィルハーモニアメンバーなどと室内楽やコンチェルトで共演する。

入学料は200,000円、受講料は800,000円(年額)。

選考は1次DVD、2次専攻実技

選考は1次が書類及びDVD審査(合否発表:平成29年1月12日※郵送)、2次が実技試験(平成29年年3月12日)。

ヴァイオリンの課題曲は、1次がモーツァルト:協奏曲 第3番〜第5番より任意の1曲の第1楽章(カデンツァは自由)、2次がバッハ:無伴奏パルティータ 第1番〜第3番より任意の1曲の1つの楽章とピアノ伴奏付きの10〜15分程度の自由曲(コンチェルトの1つの楽章も可)。

願書受付期間は、平成28年11月28日〜12月9日 ※消印有効

国立大学運営とはいえ、あくまでも学校ではなく「音教」の位置付けゆえに、芸高は言うに及ばず、芸大の授業料をも超えるレベルに受講料が設定されたのは致し方ないかもしれないが、音楽家になる夢を諦めさせるものへの視点があるのなら、もう少し何とかならなかったものかとも思う。

とはいえ、従来、芸高を目指してきた層にとっては、オフィシャルに芸大教授陣の実技レッスンが受けられ、ソルフェージュ指導や招聘外国人教授の特別レッスン、キャンバスでの試験や発表会も付いてのこの価格となれば、十分検討に価するものとなろう。(但し実技レッスンの教官の指定ができるかどうかは最も気になる点ではある)

中学1・2年からレッスンや試験で上野に通うことで得られるメリット(上野が「ホーム」となる / 芸大教官に実力が認知される等)は大きいとも言える。

無論、芸高入試への優遇措置は一切ないが、アカデミー生がいずれ芸高・芸大でトップを形成する層によって占められることになれば、早期に優秀な人材を囲い込みたい芸大側の狙いは当たったことになる。

アカデミー生10名枠が、今後の芸高入試において特別枠的な意味合いを持つことになるかどうかも含めて、1期生合格10名にどんな実力者が含まれるかが注目される。

「東京藝大ジュニア・アカデミー発足に当たって」(東京芸大公式サイト)


岡本誠司さん第2位、周防亮介さん第7位 ヴィエニャフスキ国際

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1935年の第1回大会の優勝はジネット・ヌヴー、第2位はダヴィッド・オイストラフ。

有数の歴史と権威を誇る同コンクールでは、これまでに日本人コンテスタントが第6回大会から9大会連続で入賞するという輝かしい足跡を残してきた。

今、栄えあるそのバトンは、従来の日本人奏者の定型に収まらない、際立つ個性と存在感を放つ20代前半の俊英に託された。

日本人が10大会連続入賞

10月20日〜22日、ポーランド・ポズナンで「第15回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール」のファイナルが行われ、日本の岡本誠司さんが第2位、周防亮介さんが第7位に入賞した。

同コンクールは今回、東京など世界4都市で予備選を実施。審査委員長のマキシム・ヴェンゲーロフ氏が演奏後に出場者個々と面談を行うという画期的な試みも奏功し、予備選には世界40ヶ国から同コンクール史上最多の250名を超える応募があった。

難関の予備選を通過したのは52名、そのうち39名と推薦枠1名を加えた40名がポーランド・ポズナンで行われる4ラウンド制の本審査に出場した。

約1時間に及ぶ重厚なプログラムで、ヴィルトゥオーゾ性と演奏体力が問われた第1ステージ、リサイタルアーティストとしての成熟度に焦点が当てられた第2ステージ。そしていずれのコンクールでも評価が最も厳しくなると言われるバッハとモーツァルト(室内楽オケとの共演)のセミファイナル(第3ステージ)。

過去の主要国際コンの上位入賞者らを含む出場40名(日本8名)は、第1ステージで26名(日本6名)、第2ステージで13名(日本2名)、セミファイナルで7名(日本2名)へと絞り込まれた。

ダイナミズムと繊細さを両立

日本の岡本誠司さんは、今年6月に行われた「仙台国際」で第6位に入賞。その経験を糧にして臨んだ今回のステージでは、ダイナミズムと繊細さを両立させる自在な表現のコントロールが冴え渡った。

出演順が最後という運も見事にパワーへと転化し、ヴィエニャフスキ2番とブラームスを選んだファイナルは、オケとの丁々発止のインタープレイで躍動し、第2位を獲得した。アーティスティックな感性に、大物然とした品格を合わせ持つ、新たなタイプの日本人演奏家の誕生を予感させた。

一方、周防亮介さんは第1ステージから入念なアナリーゼに裏打ちされた緻密な構成力が光り、ファイナルのヴィエニャフスキ2番とブラームスでは客席を一気に楽曲世界へと誘う響きで、第7位を獲得、自身初のシニア国際コン入賞となった。

第1位は、第1ステージから圧倒的な迫力とヴィルトゥオーゾ性を発現、力強くかつノーブルな音色で聴衆を魅了し、ファイナルのショスタコーヴィッチ第1番で客席をブラボーの嵐に巻き込んだ Veriko Tchumburidze さん(20歳 ジョージア / トルコ)。現在、ミュンヘン音楽大学でアナ・チュマチェンコ氏に師事している。

岡本誠司さんと同位の第2位には、今年6月の「モントリオール国際」で第2位を獲得した韓国の Bomsori KIM さんが入った。

受賞者

1st Prize, 30.000 Euro VerikoTCHUMBURIDZE, Georgia/Turkey 

2nd Prize ex aequo, 20.000 Euro Bomsori KIM, South Korea

2nd Prize ex aequo, 20.000 Euro Seiji OKAMOTO, Japan 

4th Prize, 10.000 Euro Luke HSU, USA

5th Prize, 10.000 Euro Richard LIN, Taiwan/USA

6th Prize, 5.000 Euro Maria WŁOSZCZOWSKA, Poland

7th Prize, 5.000 Euro Ryosuke SUHO, Japan
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岡本誠司さんは、「第60回(2006)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・全国大会第1位、15歳で「2009ロベルト・カネッティ国際ヴァイオリンコンクール」第2位、「第3回(2011)宗次エンジェルヴァイオリンコンクール」第4位。ピッチ・奏法の相違、チェンバロ伴奏、バロックオケとの共演等、他の国際コンとは異質の条件で競われる「第19回(2014)J.S.バッハ国際コンクール」ヴァイオリン・バロックヴァイオリン部門で東洋人初の第1位・聴衆賞。「第6回(2016)仙台国際音楽コンクール」ヴァイオリン部門第6位。

周防亮介さんは、「第61回(2007)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・大阪大会第2位、「第62回(2008)全日本学生音楽コンクール」中学校の部・全国大会第3位、「第13回(2009)クロスター・シェーンタール国際ヴァイオリンコンクール」第1エイジグループ(14歳以下)第1位・ヴィルトゥオーゾ賞・EMCY賞、「第4回(2010)オイストラフ国際ヴァイオリンコンクール」カテゴリーB(14歳~17歳) 最高位(第3位 )・特別賞、「第81回(2012年)日本音楽コンクール」第2位・聴衆賞。

和久井映見さんが第2位 ウクライナ「オレグ・クリサ国際」

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国際コン常連の実力者が上位入賞

10月22日〜29日、ウクライナ・リヴィウで「第2回オレグ・クリサ国際ヴァイオリンコンクール」が開催され、日本の和久井映見さん(ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学)が第2位に入賞した。

ウクライナ出身のオレグ・クリサ氏の名を冠した同コンクールは、同氏が審査委員長を務め、2013年に第1回が開催された。

第2回の今大会は、事前審査を通過した27名(日本4名)が第1ラウンドに出場し、第2ラウンド(セミファイナル)に15名(日本4名)、第3ラウンド(ファイナル)に6名(日本2名)が進出した。

和久井映見さんは、第1ラウンドから的確な様式理解と丁寧な演奏設計による稠密で優美な響きを聴かせ、セミファイナルとファイナルのプロコフィエフ(ソナタ2番と協奏曲2番)では独特の叙情と律動感を印象的に表現し、第2位を獲得した。

第1位は、エリー・スー(Elly Suh)さん(アメリカ / 韓国 「第5回(2013)オイストラフ国際」シニア部門第3位、「第54回(2015)パガニーニ国際」第5位、「2015マイケル・ヒル国際」第5位)。

第3位は、メルエルト・カルメノヴァ(Meruert Karmenova)さん(カザフスタン 「第5回(2013)オイストラフ国際」シニア部門第2位、「第33回(2014)ロドルフォ・リピツァー国際」第4位、「第6回(2016)仙台国際」第5位)。

同コンクールの入賞賞金は、第1位が2万ユーロ、第2位1万ユーロ、第3位8千ユーロ。
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ロシア勢の参加はなし

和久井映見さんは、「第61回(2007)全日本学生音楽コンクール」中学校の部・東京大会奨励賞、「第10回(2010)シベリウス国際」以降、数々の国際コンクールでセミファイナル以上に進出、「2013ティボール・ヴァルガ・シオン国際」で第3位に入賞した。

コンクールが行われたウクライナ・リヴィウはウクライナの西部、ポーランドとの国境にほど近く、旧市街が世界遺産に登録されている歴史ある美しい都市だ。

平和でとても治安が良い地域にあるが、今回のコンクール参加者リストには、第1回にはあったロシア勢の名前はなく、国際情勢の現実を如実に物語っていた。

和久井さんの他に、日本からは加藤周作さんがファイナルに進出、大塚ゆきのさんと大塚みらいさんがセミファイナルに進出した。

見知らぬ海外の地での国際コン出場は、様々なプレッシャーにさらされる。それに加え今回は、事前審査通過後からずっと、ご本人そしてご家族は現地情報の収集等、渡航準備に特別の努力を余儀なくされ、様々な決断をされてきたことだろう。

そのような中で、出場4名全員がシニア国際コンでセミファイナル進出以上という上々の成果を収めた。

公式サイト

エチュード、スケール、セヴシック、良い先生

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「弓、真っ直ぐ!」の連呼で終わる不幸

弓を握り締めてしまうのも、手首が固いのも、大多数が一度は通ってきた道であり、正しいやり方で鍛えつつ身体の成長を待てば、時間が解決してくれるものです。

例えば、弓が弧を描いてしまう、俗に言う「やだやだボウイング」ですが、これも腕の動きをよく観察すれば、その年齢段階ではごく普通に起こることです。

放っておけば自然にそうなってしまう動きを、不自然な動きに矯正していく。それがヴァイオリンのレッスンと言えるでしょう。

ここを勘違いすると、経験の浅い先生にありがちな「弓を真っ直ぐって言ったでしょ」を連呼するだけで終わってしまうことになりかねません。

歯科矯正に器具が要るように、ボウイングの指導にもカイザーやクロイツェルの中の対応するエチュードを使った矯正方法があります。

左手はやはり、スケールとセヴシックです。

楽器の大きさにもよりますが、初学の段階では、まだ楽器の重さにも慣れていない上に、左手も充分開いていない状態で、ネックを握り締めてしまうケースも見受けられますが、ポジションチェンジが入ってくればネックを握り締めている暇もなくなるでしょうから、そこはそれほど心配する必要はないでしょう。

高名な先生につけばすべて解決?

但し、本格的にヴァイオリニストを目指すのであれば、日々の練習に左手の強化だけに集中して取り組めるエチュードがきちん組み込まれている必要があります。子供のうちは、本人が勝手に単調な練習をカットしたりしがちです。

子供のレッスンは、思考も身体の構造も思春期以降とは全く違います。まさに「大人も皆、昔は子供だった。しかし、そのことを覚えている大人は誰もいない」です。それを補うのはやはり、経験によって培われた観察力・分析力と言えるでしょう。

高名な先生に相談すれば解決できるかというと、実情は違います。

そのような先生のところに来るのは、下見の若い先生の下ですでに選別済みの弾ける子ばかりですから、例えばスピッカートができない子はまずいませんし、弾けない子を弾けるようにするのは指導の範疇にないことがほとんどです。

そのことを念頭に置いて、相談できる先生を探すことが必要でしょう。

neko語録-logo_renewal_「neko 語録」とは?

photo credit: pellaea via photopin cc

東京藝大がトップランクの評価-H27国立大学の業務実績

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2016年11月15日、文部科学省が全国90の国立大学法人等の平成27年度における業務実績の評価結果を公表した。

最高評価は4大学のみ

各国立大学等が自ら定めた中期計画の平成27年度における実施状況を、主な4つの項目(「業務運営」「財務内容」「自己点検・情報公開等」「法令遵守・施設整備等」)について5段階で評価した。

4つの項目のうち、最高点の5を獲得した項目があった国立大学は、全86大学中、東京藝術大学、東京工業大学、名古屋大学、神戸大学の4大学のみだった。

東京藝術大学は、「財務内容」の項目で、クラウドファンディングを活用してバーミヤンの壁画を完全復元したプロジェクトが「特筆される取組」として最高点の5を獲得、その他の3つの項目でも4(「順調に進んでいる」)の評価を得た。

卓越教員採用、マスメディア発信、学生海外派遣に「注目」

その他、同大の注目される取組として、以下の10の事項が挙げられている。

グローバル化を牽引するための分野横断・融合型教員組織「芸術研究院」の新設

新進気鋭の若手芸術家(10名)、卓越教員(30名)等の人材獲得

積極的な寄附金獲得策の展開(約6100万円を獲得)

芸術系大学ブランディングシステム開発の推進(学長直下の「戦略企画インテリジェンスユニット」に専任の教員2名を新たに配置)

マスメディアや企業と連携した戦略的な情報発信

学生海外派遣事業アーツスタディ・アブロードプログラムの実施(美術・音楽・映像の3分野・計11の活動に86名の学生が参加)

「全国芸術系大学コンソーシアム(仮称)」構想の推進

国際交流協定の更なる拡充(23ヶ国・地域、63大学・機関)、中東地域の大学・アカデミーとの国際共同プロジェクトの推進

芸術文化の力を活用した災害復興支援(音楽アウトリーチ及び早期教育プロジェクト実施)、障害者支援の推進(金沢美術工芸大学との連携による人材育成)

「医学・医療と芸術の融合」による教育研究活動の推進(順天堂大学と連携・協力協定)

「国立大学法人等の平成27年度に係る業務実績の評価結果(文部科学省公式サイト)

【東京藝大】平成29年度 音楽学部入試 募集要項を発表

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12月7日、東京藝大が平成29(2017)年度音楽学部入試の学生募集要項を公式サイトに掲載した。(今回からウェブ掲載のみとなり、紙での配布は行わない)

英検準1級・TOEIC 785点保持者は英語が「満点」

今回の注目点は2つ。

「インターネット出願」の導入とセンター試験「英語」における英検やTOEICの活用だ。

「インターネット出願」は、出願登録と入学検定料の支払いをサイト上で行い、受験票も各自がサイトからプリンターでカラー印刷する形となるが、入学願書・調査書等の出願書類は、従来通り、書留・速達便で郵送しなければならない。

また、英語の資格・検定試験で下記の基準スコア・等級を獲得している受験生は、センター試験「英語」が満点と見なされる。

* 実用英語技能検定(英検) 準1級以上
* IELTS バンド5.5以上
* TOEFL iBT 72点以上
* TOEIC 785点以上

ただし、「満点」とされても、センター試験における「外国語」は受験しなければならない。

器楽科の募集人員は例年通り98名で、現高校2年生を対象とする「スペシャル・ソリスト・プログラム」(SSP)の「飛び入学」枠(ヴァイオリン・チェロ・ピアノの3専攻より若干名を選抜)を含む数となっている。(平成29年度の「飛び入学」の試験と合否通知は先月11月に終了しているが、出願数・合格者数等の詳細は今のところ公表されていない。尚、導入初年度の平成28年度は、4名が受験し、合格者はゼロだった)

「入学試験実施日程表」によると、器楽科ピアノ・弦楽器・管打楽器の専攻実技第1回は、2016年2月25日(土)・26日(日)・27日(月)の各10:00~。第1次合格者発表は、ピアノが2月28日(火)16:00~、弦楽器・管打楽器が3月2日(木)16:00~となっている。

第2回試験はピアノと管打楽器が3月3日(金)・4日(土)・5日(日)各日10:00~、弦楽器が3月4日(土)・5日(日)各日10:00~、第2次合格者発表は3専攻とも3月6日(月)16:00~。

翌3月7日(月)10:00〜、聴音・楽典・新曲視唱・リズム課題・副科ピアノの試験が実施される。

最終合格者発表は、3月12日(土)13:00~となっている。(専攻楽器毎のより詳細な日時、注意事項等は、試験期間中に掲示される。)

「平成29年度 東京藝術大学 学生募集要項(音楽学部・別科)」(PDFファイル)(「東京藝術大学入試情報サイト」)

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