日本人が2大会連続で第2位を獲得
2017年4月26日~5月5日、ドイツ・リヒテンベルクで開催された「第6回アンリ・マルトー国際ヴァイオリンコンクール」で、日本の中村友希乃さん(東京藝大4年)が第2位に入賞した。
同コンクールでは前回(2014年)も日本の赤間美沙子さんが第2位に入賞しており、日本人が連続上位入賞を果たす快挙となった。
本審査の前に録画等による事前審査を行うコンクールが多い中、同コンクールは4月26日~29日に事前審査なしの第1ラウンドを実施した。
4日間に及ぶ第1ラウンドには、応募134名(日本29名)のうち103名(日本24名)が出場、セミファイナル) へ16名(日本5名)、ファイナルへ6名(日本1名)が駒を進めた。
中村友希乃さんは、第1ラウンドから優美さの中に強靭さを湛えた稠密な響きで、楽曲毎のフォルムを印象的に描き分ける演奏が光り、第2位と Youth Jury award(ホーファー交響楽団付属のスクールに在籍する学生奏者11名が審査)を受賞した。
第1位は、ドイツのロレンツ・チェン(Lorenz Chen)さん。(「2016ロドルフォ・リビツァー国際」第2位。アナ・チュマチェンコ氏に師事)
受賞者
1st Prize 10.000 EUR
Lorenz Chen(Germany)
2nd Prize 7.500 EUR
Yukino Nakamura(Japan)
3rd Prize 5.000 EUR
Stepan Starikov(Russia)
中村友希乃さんは、「第64回(2010)全日本学生音楽コンクール」中学校の部・全国大会第3位、「第66回(2012)全日本学生音楽コンクール」高校の部・大阪大会第3位、国際コンクールではヨーロッパのメジャー国際コンへの登竜門として位置付けられる「第14回(2011)クロスター・シェーンタール国際ヴァイオリンコンクール」の第2エイジグループ(15歳〜17歳)で第1位とバッハ賞を獲得している。
すべて実演、審査員の生徒の出場を制限
同コンクールの審査団は、10名の審査員のうち、審査委員長のギルバート・ヴァルガ(ハンガリーのヴァイオリニスト ティボール・ヴァルガの子息で指揮者)とアルベナ・ダナイローヴァ(ウイーン・フィル コンマス)両氏を除く8名が、いずれも音楽院等で教鞭を執る指導者で構成されている。
近年、審査員の生徒の出場により審査の公正性が確保できないとの懸念の声が高まる中、他の国際コンクールでは指導者に替えて一線級の演奏家や音楽業界関係者らを審査団に加える動きが見られるが、同コンクールは有力な指導者を主体とする従来路線の審査体制を取っている。
しかしながら一方で同コンクールは、次の条件に該当するコンテスタントの出場を認めないルールを設けた。
・2016年10月〜2017年4月までの間に審査員から指導を受けた場合
・コンクール前に半年以上の期間にわたり審査員から指導を受けた場合
・2017年1月〜4月に審査員主催のマスタークラスに参加した場合
このルールと合わせ、非公開の事前審査を排して、100名を超える応募者すべてを第1ラウンドに招き、全世界に動画を公開する環境下で実演審査を行った。
専門家が自らとは繋がりのないコンテスタントを客観的に審査し、その多数意見によってラウンド進出や入賞を決める。全演奏がライヴ配信される。(「あの指導者の生徒には点を与えたくない」との動機が生じる余地が皆無とは言えないが)
主催者側にとってはかなりのコストと労力を要することになるが、こうして同コンクールは公正性と透明性を極力確保する審査のひとつのあり方を従来路線の延長上において示した。
そのような国際コンクールで、日本勢が連続上位入賞の実績を残したことは極めて意義深いと言えるだろう。