2016年5月、ロシアの2つの都市で相次いで開催された国際ヴァイオリンコンクールで、日本人が上位入賞を果たした。
ひとつは、ロシア連邦中南部に位置するシベリア最大の都市ノヴォシビルスクで、5月3日~10日に行われた「第8回ノヴォシビルスク国際ヴァイオリンコンクール」。
もうひとつは、ロシア連邦中央部に位置するバシコルトスタン共和国の首都ウファで、5月10日~15日に行われた「第1回ウラジーミル・スピヴァコフ国際ヴァイオリンコンクール」。
1995年以来3年毎に開催されてきた「ノヴォシビルスク国際」で審査委員長を務めるのはザハール・ブロン氏。新たに自らの名を冠した「ウラジーミル・スピヴァコフ国際」を創設し、審査委員長を務めるのは、ウラジーミル・スピヴァコフ氏。
いずれも現在のヴァイオリン界に強い影響力を持つロシアを代表するヴァイオリニスト・指導者である。
photo by Obakeneko
日本勢が2大会連続入賞
「ノヴォシビルスク国際」はジュニア部門(10歳~16歳)とシニア部門(17歳~22歳)の2部門で3ラウンド制で審査が行われ、5月10日のシニア部門ファイナルでブラームスの協奏曲を演奏した日本の小川恭子さん(22歳 / 桐朋学園大研究生)は、「技術と芸術性が高く評価され」(「毎日新聞」)、第1位に入賞した。
同コンクールのシニア部門では前回(2013年)、服部百音さんが飛び級でグランプリ、田中杏菜さんが第2位に入賞しており、日本勢の2大会連続入賞となった。
小川恭子さんは、「第59回(2005)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・全国大会第1位、「第84回(2015)日本音楽コンクール」第1位と、国内で学コンと日コンの頂点を極め、国際コンは中学2年生で「第5回(2007)シュポア国際コンクール・ユース」カテゴリー1(14歳以下)で第2位に入賞、「第13回(2015)ヴィエニャフスキ&リピンスキ国際ヴァイオリンコンクール」シニア部門でも第3位に入賞している。
Prize Winners
1st prize Kyoko OGAWA
1st prize Elvin GANIEV
1st prize Ellinor MELON
2nd prize Dennis GASANOV
2nd prize Eun Che KIM
2nd prize Veronika SVESHNIKOVA
3rd prize Evgeny ASEEV
3rd prize Vladislav SHARIPOV
メジャー国際コンへ弾み
一方、「ウラジーミル・スピヴァコフ国際」は出場12名中、第2ラウンド(セミファイナル)に8名、ファイナルに4名が進出した。
日本の鈴木舞さん(26歳 / ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学)は、ラウンド毎の異なる書法の楽曲への明晰なアプローチの中に、一貫して表情豊かな美しい響きを聴かせ、5月14日に行われたファイナルではミハイル・ゲルツ氏指揮:バシコルトスタン国立響とメンデルスゾーンの協奏曲を共演、第2位に入賞した。
第1位は、スウェーデンの15歳、ダニエル・ロザコヴィッチ(Daniel Lozakovitj)さん。
鈴木舞さんは、「第55回(2001)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・東京大会奨励賞、「第57回(2003)全日本学生音楽コンクール」中学校の部・東京大会第2位、「第75回(2006)日本音楽コンクール」第2位。国際コンは高校3年生で世界三大メジャーのひとつ「第13回(2007)チャイコフスキー国際コンクール」で最年少セミファイナリストとなった後、「第10回(2013)ヴァーツラフ・フムル国際ヴァイオリンコンクール」で第1位、「2014オルフェウス室内楽コンクール」で第1位。今回の同コンクール入賞の1週間後に行われる 「モントリオール国際」 への出場が決まっており、勢いに乗ったラウンドの戦いに期待がかかる。
Prize Winners
1st Prize Daniel Lozakovitj(Sweden)
2nd Prize Mai Suzuki(Japan)
2nd Prize Agnes Langer(Hungary)
3rd Prize Leonid Zhelezny(Russia)
同コンクールでは、第1位に、イタリア・モダンの名器、1890年製の カルロ・ジュゼッペ・オッドーネ(Carlo Giuseppe Oddone ※)が、第2位にはフランスのコンテンポラリー(Alain Carbonare)と5千ドル、第3位にはクレモナのコンテンポラリー(Maria Strelnikova)と3千ドルがそれぞれ贈呈された。(※)11万5千ドル相当